信州大学地域防災減災センター発足記念シンポジウム地域コミュニケーション

「 必ずやってくる大震災に備えて」開催

信州大学地域防災減災センター発足

 信州大学は、学内の防災・減災に関係した研究、教育、地域連携を全学的に集約し、地域の自治体、住民の防災・減災に資することを目的とした専門組織「地域防災減災センター」を設置した。近年、県内でもあらゆる種類の自然災害が発生しており、発生のメカニズムや災害心理の研究、災害発生時の医療支援、防災に携わる人材教育など、信州大学が有する多くの資源を効果的に活用した同センターの活動が今後一層注目される。

(文・岡田 安弘)

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」」第94号(2015.7.31発行)より

組織な全学体制で地域の防災力強化へ

 このたび信州大学に、地域防災減災センター(センター長 菊池聡人文学部教授)が設置された。これまでも信州大学は、長野県内唯一の国立の総合大学として、様々な形で地域の防災・減災に取り組んできた。しかしながら、それらの取り組みは、ともすれば研究者個人であったり、一部署の関与であったりと、地域の広範な期待に応えるには限界があった。センター発足にともない、今後信州大学では、地域から寄せられる多様な要望に応えながら、地域の防災力・減災力の強化を目指す。

 センターは、信州大学の地域の窓口となる産学官・社会連携推進機構に属し、地域戦略センターなど、地域と大学の接点となる他のセンターとも連携しながら地域の防災・減災に取り組む。センターは、教育、研究、地域、医療支援の4つの部門を擁し、防災教育部門では、主に防災教育のカリキュラムの開発や、地域を活用した教育の充実を図り、将来社会へ出て活躍する学生の防災・減災マインドの醸成に務める。地域連携部門では、地域との共同研究や信州大学が有する専門人材の派遣など、特に地元に密着しての活動を重視する。防災減災研究部門では、信州大学が有する多様な研究をさらに進展させる支援や得られた成果を教育や地域へ還元していく。医療支援部門では、既に附属病院に設置されている関連部門と連携して、災害時の医療支援や、日頃の防災に関する医療の講習、訓練等を行う。これら4つの部門に、学内から協力教員を募り、センターの体制を構築していく。

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2015年1月21日、信州大学地域防災減災センターの設置構想についての会見の様子
(右から) 信州大学 三浦義正理事・副学長、山沢清人学長、赤羽貞幸理事・副学長、笹本正治副学長・地域戦略センター長

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信州大学地域防災減災センター組織図

地震、地質、歴史の観点から地域防災を考える

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白馬村塩島の村道
大塚 勉教授(信州大学)
長野県神城断層地震(2014年11月22日、M6.7)緊急調査報告(第3報)から

 長野県経営者協会との共催で、6月28日には、市民防災シンポジウム「必ずやってくる大震災に備えて~松代群発地震から50年~」を信州大学国際科学イノベーションセンターで開催した。松代群発地震をはじめとする県内で発生した自然災害の教訓をもとに、参加者が地震学や地質学、歴史学などの見地から地域防災のあり方を探った。防災に関する総合的な研究内容を広く社会に伝え、市民の意識を喚起するという同センターの社会的役割を示す第一歩となった。

5人がそれぞれの立場から防災を語る

 基調講演した歴史地震学者の石橋克彦神戸大学名誉教授は、現代の地震はそれを引き金に様々な被害が重なり大災害になりやすいと指摘。今後の地震対策は「100年スパンの国土、社会のグランドデザインの重要な一環として考えるべきで、東京一極集中から分散型国土への移行が必要だ」と強調した。

 また、長野県内でも大きな被害が想定される南海トラフ巨大地震については、「同時か前後に糸魚川―静岡構造線断層帯で連動する恐れがある」と警鐘を鳴らした。研究が進む地震予測については「科学によって問題提起はできるが、科学とは違う判断基準の側面からの対策も必要」と述べ、『トランス・サイエンス』の重要性を語った。

 続いて開かれたパネルディスカッションには石橋名誉教授に加え、原田和彦・長野市立博物館学芸員、野池明登・県危機管理部長、赤羽貞幸・信州大学理事・副学長、笹本正治・同副学長の5人がそれぞれの専門分野から防災対策を語った。赤羽理事・副学長は地質学の観点から「長野県は地震はもちろん、豪雨や火山なども発生しやすい条件下にあることを県民の皆さんは認識しながら上手に生きていく必要がある」と呼び掛けた。原田氏は江戸時代の文献から震災時の被害情報の伝達法を解説。笹本副学長は、伝説や言い伝えから自然災害は予見できるとし、「災害現場には古くからの言い伝えや犠牲者を祀る地蔵が残っていることが多い。科学はもちろん大事だが、先人の知見を活用することも極めて重要だ」と発言した。野池氏は昨年11月22日に北安曇郡白馬村で発生した長野県神城断層地震で、多数の倒壊家屋が発生したにもかかわらず死者が1人も出なかった“白馬の奇跡”を語り、「災害時は自助、公助、共助の連携が大切だが、共助にどうつなげるかを各地域で進めていた結果だ」と事例を紹介した。

 会場入り口では、松代群発地震や長野県神城断層地震の新聞記事やパネル写真、防災グッズなどを展示するスペースが設けられ、来場者の注目を集めていた。


石橋克彦氏


基調講演講師 石橋克彦氏 神戸大学名誉教授


パネルディスカッション


パネルディスカッションの様子


パネル展


防災減災研究のパネル展


企業・団体の防災関連展示ブース


企業・団体の防災関連展示ブース

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