第3回「地域をみなおす、うごかす。」地域課題解決プラン公開審査会(後編)地域コミュニケーション

第3回「地域をみなおす、うごかす。」地域課題解決プラン公開審査会(後編)

第3回「地域をみなおす、うごかす。」地域課題解決プラン公開審査会(後編)

審査員メッセージ「本気で審査、させていただきました。」

審査にあたっては地域性、継続性などを重視

coc2018_012.png

毛賀澤 明宏 氏
公開審査会審査員・モデレーター・(株)産直新聞社代表取締役・「信大NOW」編集スタッフ

 今回の審査会には17団体から応募があり、第一次審査でそのうちから7団体のプランを選ばせてもらいました。そして本日の最終審査で、最優秀賞と優秀賞2つの計3団体を決めさせてもらいました。審査にあたっては、「地域性」、「継続性」、「実現可能性」、「先進性」の4つの審査基準を掲げさせていただきました。
 例えば「地域性」とはどういうことか?ということを審査員の中で議論しましたが、単に地域の資源を活用しているとか、地域に賑わいを作り出しているとかの表面的なことだけでなく、当該地域が直面している喫緊の課題を掴んで、そこに迫まっているか、また、そのために、その地域の人々との継続的な連携が作り出せているか、などに注目させてもらいました。その関係で、「先進性」というキーワードをめぐっても、単に目新しい、斬新なアイデアであるとか、耳目を集めやすいものだとかいうことではなく、地域おこしの新しい局面を切り拓くことができる専門性や技術性を有しているかどうかを含めて考えよう、ということを話し合いました。審査員自身が、自分たちの評価の基準を問い返しながら、今回の審査に臨むことを目指したと思います。

プレゼンを終えた感想… 審査員のフリートークより

(一部を紹介:敬称略)

coc2018_014.png

天野: 「地域性」については、各地域がいろんな問題を抱えているため、その問題がきちんと整理されているかということが重要だ。それと、人とのつながり、バックアップしてくれる人とのつながりが大切。問題がきちんと整理できていれば地域以外の人とのネットワークも広がる。

船木: 地域を見るという観点で考えると、個人の思いだけだと「勝手にやっている」という話になる。けれどもそれに「地域にとって大事なことだ」というサインがあって、投げた輪が広がっていけば、「勝手にやっている」ということではなくなる。そこにきて初めて「地域性」、個人の思いが地域全体の願いになっているかがポイント。

出口: 私は突然、信州伊那長谷地区に現れたわけで、最初は地域の皆さんの信頼も得られず、遠巻きに見られた。でも、なるべくコミュニケーションをとるように努め、わからないことも質問していく中で、我々の取り組みが「長谷地域を変える可能性がある」という、我々が描いた「夢」が少しずつ伝わっていくと、徐々に信頼いただけるようになり「うちの田んぼも作ってくれ」と言っていただけるようになった。

毛賀澤: 次は「継続性」について。今回は「セカンドアップ」のプランが審査の対象になったが、例えば、最初はインバウンドの受け入れ態勢を作るという取り組みだったものが、「セカンドアップ」と考えると収益性のある別のことをしないと次に進めない―というような脈絡の計画がいくつかあった。本筋の取り組みでは、そもそも収益性をどのように考えてきたのか?「継続性」では、こういったことが問題になる。

船木: 私の専門はマーケティング。今回、事業を提案された方のお話ではキャッシュフローが見えなかった。全体的にそれが弱い。「儲けるため」ではなくとも、それを続けるため、雇用を生み出すには最低限のお金は必要。キャッシュフローの構造が見えてこないと事業アイデアとしては疑問がある。そもそも「活性化」と言うが、何を活性化すれば良いのか?「地域活性化」というのは「経済活性化」なのか?あるいは「経済以外の地域活性化」とは何なのか?―この点をそろそろ社会全体が考えなければいけない。それを「長野県から考えてみましょう」というのも1つの提案だ。

出口: 伊那で米を作ろうと社員に移住を呼びかけたところ、実は誰も手を挙げず、結果的に私が移住することになった。確かにビジネスを考えたとき、キャッシュがないと即ゲームオーバーだから、収益性は大事。ただ、私が長野県へ来て最初に感じたのは「なんて贅沢な場所なのだろう」ということ。仕事メインで来たけれど、プライベートもすごく充実していて、私自身が一番楽しんでいる。今の船木さんのお話はすごく身を持って感じている。

天野: 「先進性」という言葉はすごく難しい。世界特許をとれるというようなことだけが「新しさ」ではない。この地域で初めてのことも「新しい」といえるかもしれない。古くからのこと、ずっとやってきたことを、現代に継承するという発想も、実は「新しい」ことかもしれない。

毛賀澤: 飯綱町からは比較的年配の皆さんがこの審査会に応募してくれ、最終選考まで残った。プロモーションビデオが賞品で、若い人たちが対象の審査会のように見えるところに、ベテランが手を挙げてくれている。これも「先進性」といえるのではないか。歳をとっても若い気持ちで新しいことに挑戦する人がいる限り、その地域は新しいものを生み出す力を持っている。そういう力が「先進性」ではないか?

船木: 昨日ちょうどニュースで全国長寿県ランキングの発表があった。長野県は最たる長寿県。人生100年時代、将来的には2人に1人が100歳以上生きるらしい。そうすると、新しい挑戦やキャリアチェンジを誰もがいつでもできるようでないと、長く生きることが苦しいことになってしまう。我々自身が新しいことに挑戦する姿勢が大切だ。

審査を終えて―全体講評「学びと自治で拓く新しい信州」を

coc2018_013.png

船木 成記 氏
公開審査会審査員・長野県参与

 審査員としてトップ3を選ぶことはとても難しかった。皆さんの地域への思いや熱量に関して、ほとんど差異はなかったと思います。ただ、映像化することに向いているか、次のステップにどう進むのかが分かりやすかったか、審査員に届きやすかったか―という辺りで順位がついたとご理解いただければ幸いです。主催構成団体のひとつ、長野県の代表としてお話させていただくと、過日長野県が発表した「次期総合5か年計画」のサブタイトルは「学びと自治で拓く新しい信州」です。言いたいことというのは、実は今日の公開審査会のように、みなさんの熱心なまなざしとそれを支える応援がとても大切で、そのプロセスそのものが学びであり自治の姿であると思います。
 今日この場で皆さんとつながれたこと、思いを共有できたことが素晴らしいことだったと思います。県としてもさらに皆様の活動を応援しつつ、長野県の発展を進めていきたい。信州大学は今後もこのような取り組みを続けていかれる、と聞いていますので、皆様の活動がさらに進むよう、県としてこれからも応援していきたいと思います。

学外広報アドバイザーFOCUS EYE Vol.5 信州を開墾し世界へ。出口友洋さんとの再会。 藤島 淳 氏

coc2018_09.png

信州大学広報スタッフ会議 外部アドバイザー
藤島 淳 氏
ブランドア㈱ 代表取締役(元電通)



1985年 ㈱電通入社 以来クリエーティブ局
2008~2013年 上海電通赴任
2014年 ブランドア㈱創設
2013年~ 上智大学講師「メディアと社会(広告論)」

 「年末に行う信州大学の地域貢献イベントに是非参加してください」…昨年秋、信州大学広報室からそんな連絡をいただき、2017年12月16日の「地域をみなおす、うごかす。地域課題解決プラン公開審査会」に参加してきました。一番の理由は、基調講演者として、また審査員として登壇した出口友洋さん。出口さんは一昨年の濱田学長との伝統対談にもご出演いただいたので覚えている方も多いと思いますが、日本のお米を海外で精米して販売する(株)Wakka Japanを設立し、香港、シンガポール、台湾、そしてハワイで店舗展開している信州大学教育学部の卒業生です。
 私は出口さんが香港で第一号店舗を開いた頃からその活動に注目していまして、当時伝統対談候補者として推薦させていただきました。その後、学長対談がきっかけとなり、信大関係者のネットワークを通じ長野県伊那市長谷に住まわれ、主にハワイで販売するための「カミアカリ」という特別なお米を育て始められたと伺いました。信大広報アドバイザーとしてうれしい限りです。
 当日は基調講演に合わせて、出口さんが長谷の田んぼで田植えから収穫まで行う様子を収めた動画(※)も公開されました。実はその動画の編集にも関わっていたのですが、出口さんが持つ「人の縁」の不思議さと、ますますその縁を太くしていく出口さんのチカラ強さを感じていました。
 海外の方に日本のお米の素晴らしさを知ってもらうために、注文を受けてから精米してお届けする。海外と言っても地域によって嗜好も異なり、農薬に対する敏感さも異なります。どんなお米ならば喜んでもらえるかを考え抜き、感じ抜き、提供する。そのためには、自らが田んぼを見つけ、そこに住み、最適と思える品種を最適と思える栽培方法で育てる。いずれは、インバウンドのお客さまにも田んぼ体験をしてもらう。その発想と行動力には、ほんとうに驚かされます。
 今回の収穫は、ハワイ店だけの販売だったようですが、クリスマス前後でほぼ完売とか。次年度の作付け面積はさらに拡大する予定です。信大OBとして、信州の大地を開墾し、海外へ紹介する。まさにグローバルとローカルを融合させる理想的なビジネスを実現させています。
 学長との対談の見出しは「グローバルで発揮される信大の独創力」でした。出口さんの後を追って、たくさんの信大生が、ベースには信州を持ちながら、世界に飛び出していって欲しいと心から思った再会でした。

2016年の学長対談収録時の様子。対談終了後、雑談で出た長野県内での田んぼ探しの話は、信大関係者のネットワークを通じて年内にほぼまとまった。出口さんの持つ「人の縁」の強さでもある。

coc2018_011.png

※映像タイトルは「中山間地発、高規格米でクールジャパン~新品種×新農法×人と地域のネットワーク~」
信州大学動画チャンネルからご覧いただけます。
http://www.shinshu-u.ac.jp/movie/2017/12/70513.html

ページトップに戻る

MENU