働きながらチャレンジしよう地域コミュニケーション

共通教育「キャリアビジョンと男女共同参画:誰もが活躍できる社会を考える」講義を一般公開

 2018年5月30日、共通教育科目「キャリアビジョンと男女共同参画:誰もが輝く社会を考える」の講義が男女共同参画推進センター主催により一般公開で行われ、学生のほか大勢の市民の方にも聴講いただきました。本講義は、男女共同参画およびジェンダーについて理解を深めてキャリア形成に結びつけることを主な目的として、毎回、法律や歴史などの異なる切り口で授業が行われています。
 「働きながらチャレンジしよう」をテーマとした今回は、信州大学教育学部卒業生で、平昌五輪女子スピードスケートで金・銀メダルに輝いた小平奈緒さん(所属:相澤病院)と、人文学部で教鞭をとる振付家・ダンサーの北村明子准教授がゲストスピーカーとして参加。浜野京理事の司会進行のもと、パネルディスカッション形式で、それぞれのチャレンジを通した体験が語られました。その一部をご紹介します。
(以下敬称略)

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第112号(2018.7.31発行)より

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内閣府政策参与
信州大学理事(特命戦略担当)
浜野 京
1979年慶應義塾大学文学部卒業。日本貿易振興機構(ジェトロ)で中小企業の海外販路開拓や地域の産業観光事業を担う。ジェトロ初の女性理事に就任(~2015)し、ミラノ万博を担当、クールジャパン分野の数々の公職を歴任。2015年10月内閣官房(クー
ルジャパン戦略担当)政策参与、2016年4月より内閣府政策参与(現職)、信州大学理事(現職)。

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アスリート (スピードスケート)
小平 奈緒さん
(所属:相澤病院 信州大学教育学部卒業生)
2009年信州大学教育学部生涯スポーツ課程卒業。社会医療法人財団慈泉会相澤病院スポーツ障害予防治療センター所属。2017/18ワールドカップソルトレークシティー大会1000m世界記録樹立。第23回オリンピック冬季競技大会2018/平昌)では、女子500m金メダル、女子1000m銀メダル、女子1500m 6位。

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信州大学学術研究院(人文科学系)准教授
北村 明子
1998年早稲田大学大学院文学研究科修士課程舞踊専攻修了。1995年文化庁在外派遣研修員としてドイツに留学。モントリオールHOUR紙2005年ベストダンス作品賞受賞、第7回日本ダンスフォーラム賞受賞(2013)。2001年信州大学人文学部講師を経て現職。振付家・ダンサーとして活動しながら、人文学部にて教鞭をとる。

世界で活躍するアスリート、アーティストのチャレンジに学ぶ。

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聴講する学生

浜野:今、就職は売り手市場といわれています。お二人が就職される時はどうでしたか。
小平:大学を卒業した時は、まだ就職先が決まっていませんでした。4月半ばに相澤病院に所属できたのですが、それまでは孤独でつらかったですね。でも、信州大学の結城先生の指導を受けたいという思いが大前提だったので、そこは曲げませんでした。
北村:学生時代はドイツ留学をはじめ、いろいろな国を旅して舞台芸術の可能性を探りました。空間演出の会社などへの就職も視野に入れましたが、悩みながらも自分で考えていけば道が拓けるかもしれないと考えて、創作の道を選びました。
浜野:留学も大きなチャレンジですよね。
北村:1995年から96年にかけて、文化庁の芸術家在外研修員としてベルリンに行きました。留学先にベルリンを選んだのは、東西ドイツが統一され、経済的な厳しさがある中で、どのように新しい身体表現がスタートしていくかを見てみたかったからです。
浜野:小平さんはオランダに留学されていましたが。
小平:オランダでいいなと思ったのは、成果を人と比べるのではなく、できたことに対して讃えるところです。そこにはタイムが速い、遅いなどのレベルの差はありません、お互いに認めあう関係が確立されていて素晴らしいと感じました。
浜野:留学して何か変わりましたか。
小平:他人と比較することは、自分から目を背けることだと気づきました。自分ができたことに対して自信を積み上げていく、というところに意識をシフトできたのは大きかったです。
北村:海外に出て、荒野に立ったような状況になると重要な問題以外は淘汰されます。これだけは優先しようと自分で目的を設定する、ある種の自動装置ができますね。

安定した日常から、覚悟をもって飛び出す。

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会場風景、約230名の学生や市民が熱心に話に聞き入った

小平:安定した日常から飛び出すのは勇気がいりますが、覚悟をもって飛び出すことが大切です。当たり前にあるものがない状況の中で、自分の道を切り拓くためには工夫が必要になり、環境が違うだけでかなり鍛えられます。
浜野:留学に限らず、新しいチャレンジに二の足を踏んでしまう人も多いと思います。小平さんがオリンピックの主将を務められた時は即断できましたか。
小平:じつは2回ほど断りました(笑)。最終的に「今の奈緒にしかできない役目だと思う」と結城先生に背中を押され、私の将来に絶対に役立つものになるとイメージできた時に「やります」と覚悟を決めました。
浜野:オリンピックで活躍された後は、どんな反響がありましたか。
小平:幅広い年代の方からファンレターをいただきます。子供たちの手紙に「今度は私が小平選手の世界記録を抜きます」などの決意が書かれていると、自分なりに大きなことを成し遂げられたんだなと実感します。
浜野:舞台の場合はどんな反応が返ってくると嬉しいのでしょうか。
北村:やはりパフォーマンスを見てくれた人から、「さっきの公演はよかったよ」と直接声をかけられるのが嬉しいですね。

新しいチャレンジを続けることで世界が広がる。

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担当教員の中島美帆准教授、「二人の素晴らしいロールモデルにならって、学生たちも前向きにチャレンジしてほしい」と語る

浜野:いろいろなところでリーダーに必要な条件を尋ねると、コミュニケーション能力という答えが上位に出てきます。お二人がコミュニケーションで心がけられていることがあれば教えてください。
小平:相手も自分も前向きになれるコミュニケーションがいいですね。いい言葉を言おうとするのではなく、相手を傷つける言葉をなるべく使わないように気をつけています。
北村:創作チームでは、お互いの能力を相乗効果にして舞台に出せるように徹底的に言葉をやり取りします。自分の考えを分かりやすく伝えることはもちろんですが、もしそこでコテンパンに叩かれても気にせずに、いいものを創っていこうというチームワークも大事にしています。
浜野:最後に信大生の皆さんへ、これからのチャレンジに向けたアドバイスをお願いします。
北村:学問に関しても、就職や仕事に関しても、ある枠組みの中に収まらずにもう一つ、やったことのないことに足を踏み込んでみてください。それが、数年後の大きな喜びにつながるはずです。
小平:日常にチャンスはいっぱいあると思うので、ぜひアンテナを張ってほしいと思います。いろいろな人と出会ったり、考え方の違う友人をつくったりする中で、自分にできそうなことを見つけてチャレンジしていくと、世界が広がると思います。
浜野:本日は素敵なお話をありがとうございました。

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