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研究ハイライト

  1. 古の山岳ロマン「北アルプス1万mの幻の火山」
2023年11月6日(月)

古の山岳ロマン「北アルプス1万mの幻の火山」

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©NHK

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信州大学特任教授 原山 智 (山岳科学研究領域)

2020年放映のNHKのジオジャパンⅡは、300万年前以降の日本列島における地殻変動に焦点を当てました。この間に中部山岳地帯の山の多くが誕生したのです。3ヶ月にわたるロケ現場として選ばれたのは、北アルプス槍穂高連峰と爺ヶ岳でした。なんで爺ヶ岳?と思われる方もいるでしょう。五竜岳から爺ヶ岳を経て蓮華岳に至る範囲では、220-160万年前に巨大カルデラ火山が噴火を続けていました。カルデラ湖が形成され、湖には厚さ150m以上の火山灰が堆積して水平な地層を形成していました。ところが爺ヶ岳に露出している地層は、現在ほとんど垂直なのです。調査を進めた結果、爺ヶ岳にとどまらず、厚さ4kmの火山岩層と直下にあったマグマ溜まり6kmの計10kmが横倒しになっていることが判明したのです。北アルプスの隆起が160万年前以降に激しさを増したことを意味しており、これは200万年前には既に山脈として完成していたとする従来説を覆す成果でした。

「もし侵食作用がなければ、北アルプスにもエベレストを超える1 万メートルの山があったのに… 」と呟いたのをNHKのディレクターは見逃しませんでした。「そ、それ、C G にしましょう」。こうして生まれたのが地下10kmまでのマグマ溜まりをも巻き込んで回転隆起していく幻の1万m火山、クルリンパです。番組は何回も再放送され、2021年の元日の夜、ゴールデンタイムにも放映されました。