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  1. 工学部物質化学科の菅博幸教授、戸田泰徳助教らの論文がAngewante Chemie誌に掲載
研究
2017年9月20日(水)

工学部物質化学科の菅博幸教授、戸田泰徳助教らの論文がAngewante Chemie誌に掲載

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工学部物質化学科(信州大学学術研究院工学系)の菅博幸教授、戸田泰徳助教らの研究グループは、兵庫医科大学の福島和明教授、江嵜啓祥講師との共同研究で、独自の新しいコンセプトに基づいて、天然物であるキニーネ由来の有機触媒を用いるニトリルオキシドとo-ヒドロキシスチレン類との不斉1,3-双極性付加環化反応に世界で初めて成功しました。本成果は将来的に薬理活性物質など有用化合物の合成に応用されると期待できます。

ニトリルオキシドは、C, N, O原子を含む直線状の化学種で、アルケン類との1,3-双極性付加環化反応により、5員環化合物のイソオキサゾリンを合成するために広く用いられています。イソオキサゾリン誘導体は、その後の変換反応により、様々な薬理活性物質を合成する用途で利用されており、薬理活性に大きく影響を与える光学活性体((R)と(S)に対応する2つが存在)の一方を選択的に合成する技術の開発は、重要な研究課題です。しかし、直線状の分子であるために、一方の光学活性体(本論文では(S)体)を合成することは難しく、有機分子を触媒として、不斉誘起(一方の光学活性体を選択的に合成)に成功した例はありませんでした。今回、キニーネ由来の有機分子触媒を用いることにより、ニトリルオキシドとヒドロキシスチレン類との1,3-双極性付加環化反応における不斉誘起に初めて成功しました。また、兵庫医科大学との共同研究では、密度汎関数計算(DFT)を行い、反応の遷移状態において、キニーネ由来の有機触媒がとのように関与して不斉誘起が達成されたかを明らかにし、協奏的活性化のコンセプトの妥当性を証明しました。

本研究は本学大学院理工学系研究科の橋本陽平氏(H28年度修士課程修了)、戸田泰徳助教らにより実施され、Wileyの「Angewandte Chemie」誌に掲載されました。同誌は一般化学の論文誌の中で特に高いインパクトファクター:11.994(2016年)でリーディングポジションを維持している雑誌です。また、世界的なプライム化学ジャーナルの一つで、他の匹敵するジャーナルよりも高いインパクトファクターをもっています。なお、本研究は科学研究費補助金のサポートを受けています。

論文情報
Amine-Urea-Mediated Asymmetric Cycloadditions between Nitrile Oxides and o-Hydroxystyrenes by Dual Activation
H. Suga, Y. Hashimoto, Y. Toda, K. Fukushima, H. Esaki, A. Kikuchi, Angew. Chem. Int. Ed. 2017, 56, 11936–11939.
DOI: 10.1002/anie.201705662
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.201705662/full

研究者情報(SOAR研究者総覧)
菅博幸:http://soar-rd.shinshu-u.ac.jp/profile/ja.HmShyVfp.html
戸田泰徳:http://soar-rd.shinshu-u.ac.jp/profile/ja.HhkabUkh.html