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研究テーマ

いちおし! (バックナンバー)

約100名の繊維学系所属教員が展開する研究のホット・トピックを2016年 (平成28年) 7月から紹介し始め、以降 2ヶ月毎に更新してきました。ここでは、これまでに紹介したトピックスをご覧になれます。


"着る" 生活動作支援ロボット

世界でも稀なスピードで高齢化が進む日本では、ロボット技術による介護支援に期待が寄せられています。機械・ロボット学科の橋本 稔 教授 (平成30年3月、定年退職) は、要介護者の自立支援を目的とする身体装着型のロボティックウェアの開発に取り組んでいます。目指すは身体能力の低下した方でも違和感なく使用できるロボット。人の動きに動作の調子を合わせられる「同調制御法」、筋電などの身体情報を取得する必要がない「相互作用トルク検出法」といった技術が開発・導入されています。さらに「非外骨格構造」という独自の構造を有しているために軽量で、装着者の自然な動作を妨げません。


これまでの研究開発をきっかけに、信州大学先鋭領域融合研究群において医工繊維連携による「歩行アシストサイボーグプロジェクト」が2015年4月にスタートしました。このプロジェクトは、"ロボティックウェアの実用化" と "体内埋め込み型歩行アシストロボットのプロトタイプ開発" を目標としています。そのために、駆動部、機構、バッテリーをカーボンやファイバー技術により究極まで小型軽量化するとともに、骨髄内釘を応用して体内に埋め込むことが計画されています。

(掲載期間 平成28年 7・8月)

省エネで涼しい「発汗パーソナル冷却服」


サーマルマネキンを用いた検証実験

地球温暖化の影響とみられる気候変動が国内外で報告されている昨今、わが国では省エネと温室効果ガス削減の観点から多くのオフィスで冷房の設定温度を28℃にすることが推奨されています。しかし現状では6割以上の人がこの環境に不満を感じており、"省エネ" と "快適性" の両立が課題になっています。先進繊維・感性工学科の佐古井 智紀 准教授は、水の蒸発によって身体を冷却する「発汗パーソナル冷却服」を開発し、28℃設定でも快適なオフィス環境を実現することを目指しています。冷却服の表面には中空糸が貼付されており、中空糸側面から滲出した水が蒸発する際に熱を奪うことで身体が冷却される仕組みです。


現段階では水の蒸発を促進するために小型のデスクファンが必要ですが、実際に着用した感想をアンケート形式で回答してもらったところ、扇風機などの既存の冷却機器を使った場合よりも冷却効果が優れていると感じた人が多かったようです。冷却効果の向上や操作性の改善など、佐古井准教授の今後の実用化に向けた取り組みから目が離せません。

(掲載期間 平成28年 9・10月)

自分で考えて行動する「ドローン」

最近、空飛ぶロボットが "ドローン" の名でメディアに取り上げられ、様々なテレビ放送でドローンを使った空撮映像が流れるようになりました。世の中で使われているドローンの多くは地上にいるオペレーターが無線操縦していますが、ドローンが自ら考えて障害物やドローン同士の衝突を回避し、どこでも自由に飛行できれば、測量、点検、警備、宅配などの分野でのさらなる活用が期待できます。機械・ロボット学科の鈴木 智 准教授 (平成31年4月、千葉大学転出) は、ドローンをはじめとする各種ロボットの自律制御・知能化 (ロボット自身が周囲の状況を知り、与えられたミッション遂行のためにどうするのが最善かを考え、そのための動作を行うこと) の研究に取り組んでいます。


鈴木(智)研究室では、"知る" ためのセンシング技術、"考える" ためのプログラミング技術、"動作する" ための制御技術を検討し、屋内外のどんな場所でも自動飛行できるドローンを開発することに成功しています。空飛ぶロボット "ドローン" が今以上に私たちの身近な存在になるとき、そこには鈴木(智)研究室の研究成果がきっと活かされていることでしょう。

(掲載期間 平成28年11・12月)

生き物のようなプラスチック!? 次世代ナノゲル微粒子


電子顕微鏡で見た高分子微粒子 (一粒の大きさは400ナノメートル)

ペンキや液晶ディスプレイ、化粧品などの身近な製品に利用されているナノ粒子 (1ナノメートルは10億分の1メートル) をさらに進化させようとしている化学・材料学科の鈴木 大介 准教授は、人工物のプラスチック製ナノ粒子を繰り返し伸び縮みする素材に変える研究に取り組んでいます。例えば、一定の速さで繰り返し液体を送り出す自律駆動ポンプを開発し、心臓のように拍動させることに成功しました (右写真クリックで映像スタート:1 mm x 1 mmのナノ粒子集積体)。寒天やコンニャクのように水分で膨らんだ素材「ゲル」をナノ化させた "ナノゲル粒子" を武器にして、薬の副作用を極限まで減らした薬剤投与システムや、次世代の光通信技術の核となりうるフォトニック結晶といった新分野の研究開発にも挑戦しています。


鈴木(大)准教授のみならず、研究室の学生たちが国内・海外の学会で研究成果を発表すれば多くの注目を集め、繊維学部の中でも突出した優秀口演賞・優秀ポスター賞などの受賞実績を挙げてきました。鈴木(大)研究室には活き活きと研究に打ち込む学生たちの姿がいつもあり、まだ誰もたどり着いていない未来材料の開発に夢を馳せています。

(掲載期間 平成29年 1・2月)

思いのままにタンパク質を創る!


七色に光り輝く人工タンパク質の結晶

天然タンパク質の機能・構造に対する理解は、近年の分子生物学や構造生物学の発展によって大きく進みました。その中で、人工的にタンパク質やタンパク質複合体を1からデザインすることに挑戦しているのは、応用生物科学科の新井 亮一 准教授です。新井准教授は "ヌンチャク型" の構造を持つタンパク質 (WA20) や100℃でも熱変性しないタンパク質 (SUWA) を人工的に設計・創出しました。さらには人工タンパク質のブロックを組み合わせて作る "タンパク質ナノブロック" 超分子複合体の研究も進めています。X線を照射して立体構造を解析するため、試行錯誤を重ねてようやく人工タンパク質結晶を取得しました。国際宇宙ステーション「きぼう」の無重力環境下でも、高品質タンパク質結晶を作る実験が行われています。


"タンパク質を見る、調べる、創る、使う" 新井研究室は、天然タンパク質の詳細な構造や機能に対する理解を深めて、有用な改変・融合・人工タンパク質を設計・開発・応用する研究を行っています。人工タンパク質を自由自在にデザインし、創出できるようになれば、新たなバイオ医薬品や産業用酵素、ナノバイオマテリアルなどの開発につながることでしょう。

(掲載期間 平成29年 3・4月)

熱中症リスク管理を実現するウェア「スマートフィットR」


試作品を手に感覚計測工学の醍醐味を語る金井准教授

真夏日や熱帯夜となる日数が増加傾向にある近年では、熱中症は高齢者や労働者において深刻な問題となっています。一般的に、熱中症のリスクは暑さ指数 (WBGT) により予測・評価されていますが、先進繊維・感性工学科の金井 博幸 准教授はクラボウ、大阪大学、日本気象協会と共同で熱中症のリスクを管理する衣服「スマートフィットR」の開発に取り組んでいます。スマートフィットRは、衣服と一体化したウェアラブル・センサーにより皮膚温度や心拍数などの生体情報を計測し、取得した生体情報から熱中症のリスクを予測・警告するシステムを目指しています。その中で、金井准教授は主にウェアラブル・センサーの高精度化と快適性の向上に取り組んでいます。


既にウェアラブル・センサーの試作は終了しており、今年の6月から建設業・運送業の協力を得て作業者を対象にした実証実験が行われる予定です。本テーマに対する社会的注目度は高く、平成29年3月24日付けの信濃毎日新聞 (第1面) に紹介記事が掲載されました。金井准教授の今後の実用化へ向けた取り組みに大きな期待が寄せられています。

(掲載期間 平成29年 5・6月)

本物の筋肉で動くロボットを創る


(上の写真クリックで動画再生)

昨今、私達の周囲では様々な用途のロボットが数多く活躍していますが、その多くはモーターによって駆動されています。機械・ロボット学科の秋山 佳丈 准教授は、ロボットなどを動かすために生体の筋肉を利用する技術を開発しています。筋肉は、糖 (グルコース) を燃料として直接運動を生み出すことが出来るため、高効率かつ化石燃料に依存しない機械システムの構築が可能になります。これまでに昆虫の筋肉使って、世界初の室温で自律的に移動するマイクロロボットや大気中で駆動可能なマイクロピンセットを実証しました。(写真左:マイクロロボットの電子顕微鏡像、写真右:指の上で駆動するマイクロピンセット)


秋山研究室では、他にも "インクジェットプリンターによる細胞の印刷技術" や "磁石で細胞を操る技術" など、機械工学的見地からバイオにアプローチする技術の開発を行っています。これらの技術により、細胞から複雑な三次元組織の構築が可能になれば、筋肉で動くロボットのようなバイオハイブリッドシステムへの応用だけなく、再生医療や医薬品開発などにも役立つと期待されます。

(掲載期間 平成29年 7・8月)

圧倒的に "細い" 繊維 (= ナノワイヤー) を開発!


チタン酸塩ナノワイヤーの透過型電子顕微鏡写真

極めて細い繊維 (= ナノワイヤー) の開発に成功したのは、化学・材料学科の浅尾 直樹 教授です。その開発秘話を伺ったところ、「チタン合金に水酸化ナトリウムを加えると白い綿ができました。失敗作かと思いましたが、少し気になって電子顕微鏡で観察してみたところ、直径2~3ナノメートルの極細繊維が形成されていました!」と興奮気味に話してくださいました。セレンディピティ、すなわち、失敗が偶然にも大きな発見に結び付くことはノーベル賞受賞者などの成功者も度々お話しなさることで、浅尾教授にもそのような幸運の女神が舞い降りたようです。現在、このナノワイヤーが東日本大震災の影響で漏れ出した90Sr (放射性ストロンチウム) に対して極めて高い吸着性を示すことを見出し、実用化に向けた研究を精力的に展開されています。


2016年4月にオープンしたばかりの浅尾研究室ではその他にも、自動車の排ガスを除去する助触媒などの開発も進めておられます。独自に開発したナノ材料・ナノ繊維をさらに進化させることを通し、皆さんの近未来の生活に大きく貢献する日が来るのもそう遠くない、と感じました。

(掲載期間 平成29年 9・10月)

ストレス性の男性不妊を救う!


日本は晩婚化が進み、それに伴い不妊に悩むカップルが増えてきました。これまで不妊の原因は主に女性にあると考えられてきましたが、実は原因の半分は男性側にあることがわかっています。男性不妊の場合、精巣できちんと精子を作ることができるタイプの患者さんは、生殖補助医療により子供を授かるチャンスが得られますが、精子を作ることができない場合は救うことができません。応用生物科学科の高島 誠司 助教は、生まれつきストレスに弱いマウス (右写真) やパーキンソン病様の症状を示すマウス (右写真クリックで動画再生) が男性不妊を発症することを発見し、これらのマウスが精子をうまく作れなくなるメカニズムを調べています。これにより、男性不妊患者の精巣で精子が出来なくなる理由に迫ろうとしています。


静止画説明:先天性ストレス感受性マウス。寿命は普通のマウスの1/4程度しかなく、背中が曲がっています。このマウスでは、オスだけでなくメスも子供を作りにくくなっています。動画説明:パーキンソン病モデルマウス。健康な個体に比べて動きが緩慢で、しばしば痙攣を起こします。この個体の精巣では精子形成過程が中断され、不妊になっていました。

(掲載期間 平成29年11・12月)

座り心地の良い鉄道車両シートとは?

年末年始、帰省や旅行に鉄道を利用した方も多いのではないでしょうか。ある試算によると新幹線の平均乗車時間は約80分にも及ぶそうで、快適な旅には車内の快適性、とくにシートの座り心地が欠かせない要素と考えられます。先進繊維・感性工学科の吉田 宏昭 准教授は、生理的および心理的側面から、鉄道車両シートの座り心地について研究を行っています。これまでの研究では、コンピュータシミュレーションにより着座時の生体内の力の分布を推定し、腰周辺の応力と着座時の痛み感には相関があること、つまり、腰周辺の応力が増加すると痛みを感じることなどを明らかにしています。また、興味深いことに、材質が同じシートであってもシートの色によって座り心地が異なることも確認されており、青系シートの座り心地が比較的良いとのことです。


吉田研究室では、鉄道車両シートだけでなく、「歩き心地」、「座り心地」、「寝心地」といった人間の日常的な基本動作に伴う「心地」について、感性工学的側面から研究を行なっています。研究テーマはどれもユニークで、吉田准教授の今後の取り組みに注目していきましょう。

(掲載期間 平成30年 1・2月)

消防服は炎から消防士を護る科学の鎧


(左) 消防服を着ているのは若月准教授
(右) 実験には本物の消防士が着用して臨みます

火災の際に私たちの生命や財産を守ってくれる消防士の皆さん。しかし、彼らだってスーパーマンではないのですから、消火活動のためには特別な用具が必要となります。機械・ロボット学科の若月 薫 准教授は、火災という極限熱環境において消防士を護る消防服について研究しています。消防士が長時間の消火活動に従事するためには、消防服や保護具が燃えにくい素材で作られているだけでは不十分であり、消防服内部の熱伝導を正しく把握し、効率的に熱を逃がす構造とすることが重要です。また、可動性を阻害せずに身体と服の間に空隙を設けて身体に伝わる熱を遮断する仕組みについても考えなければなりません。こうした若月先生の研究成果は、溶鉱炉などの高熱となる環境での作業服や宇宙服への応用にも期待されています。


消防士を護る消防服に対する若月先生の研究は、まさかの時のために必要不可欠なものです。しかし、私たちが日頃から火事を起こさないよう注意して、消防士が活躍しないですむようにしたいものです。なお、総務省消防庁がまとめた統計によれば、平成28年に出火件数が最も多かったのは3月だったとのことです。火の元にはどうぞご注意ください。

(掲載期間 平成30年 3・4月)

高分子化学が創る新しい世界


真空ラインで空気に敏感な合成実験中

繊維、プラスチック、ゴム、接着剤... 現在の日常生活は高分子材料に支えられています。一方、原料である石油資源の枯渇や、プラスチックの製造に必要なレアメタル触媒の稀少化、自然界に投棄されたプラスチックが引き起こす環境問題など、解決すべき課題が数多く存在するのも現実です。化学・材料学科の高坂 泰弘 助教は、これらの諸問題の解決を図るとともに、環境応答性やリサイクル性を有する革新的な高分子材料の開発に取り組んでいます。例えば、様々な化学物質と反応して分解するポリエステルを開発しました。この成果は高分子化学最高峰の国際誌 Polymer Chemistryに掲載され、高坂助教は同誌が選出する世界30名の若手研究者にも名を連ねました (こちら)。開発した新材料は低環境負荷なプラスチック、繊維の開発や医療用途への展開が期待されます。


高坂助教は企業との共同研究にも積極的で、イハラニッケイ化学工業(株)との共同研究ではポリエステルの新合成法を開発しました。高温・真空条件を必要とする上にレアメタル触媒を使用しなくてはならない従来の合成法に比べ、不純物が少ない高品質なポリエステルを低エネルギーで合成できるという特徴があるそうです。

(掲載期間 平成30年 5・6月)

植物のもつ未知なるチカラを探る旅


自ら移動することが出来ない植物は、色や香り、防御物質などのさまざまな化合物を作り出し、その生存戦略に利用しています。それらには、薬の成分や機能性成分など、私たち人間の生活に役立つ化合物も数多く存在します。例えば、身近な食材であるソバは、その種子発芽に伴って血管増強作用や抗酸化作用を示す "ルチン" や "フラボンC-配糖体" などの機能性成分を大量に作り出します (写真)。応用生物科学科の田口 悟朗 准教授は、これらの機能性成分を作り出す遺伝子や酵素の働きを分子レベルで解析するとともに、酵素遺伝子を組み換えた大腸菌を利用してC-配糖体 (糖の結合が化学的に安定で加水分解を受けないため、通常の配糖体よりも生理活性が高くなることがある) を高効率で作ることにも成功しています。


田口准教授は、ソバのほかにもミカンやワサビなどの身近にある様々な植物を研究材料にしており、「植物が研究ネタの宝庫に見える」そうです。田口研究室ではこのような植物のもつ機能(チカラ)の解明を進めるとともに、その利用を目指した探究の旅が続いています。

(掲載期間 平成30年 7・8月)

電波を送受信する衣服!? テキスタイルアンテナ

近年のIoT (Internet of Things) の急速な普及とともに、スマートテキスタイルへの注目も高まっています。スマートテキスタイルはセンシング機能や通信機能を有する布地のことで、健康状態のモニタリングや衣服内の温湿度などを自動的に調節する衣服 (スマートウェア) への応用が期待されています。製布工学が専門の先進繊維・感性工学科の朱 春紅 助教は、導電性の繊維材料を用い、アンテナ機能を有するテキスタイルアンテナの開発に取り組んでいます。開発した試作品 (写真) は柔軟性があり、アンテナ性能も実用レベルであることが既に確認されています。人体への装着した場合の実証実験も開始されており、将来的にはGPS機能を有する衣服などへの応用を進めて行きたいそうです。

これ以外にも、布地に熱電対を織り込んで温湿度の計測を可能にしたテキスタイルや3次元テキスタイルなど、新たなスマートテキスタイルの開発に精力的に取り組んでいる朱 助教。彼女の今後の活躍に注目しましょう。

(掲載期間 平成30年 9・10月)

脳震盪の発生メカニズムを探る


神経細胞の軸索に衝撃負荷がかかると局所的な膨張 (=軸索瘤) が出現し、細胞間の情報伝達が阻害される。

柔道、サッカー、ラグビーなどのコンタクトスポーツでは頭をぶつける場面が多々あります。頭をぶつけてすぐには起き上がれなかったり、その時は何ともなかったのにぶつけた後のことを思い出せなかったり、といった経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。これがいわゆる "脳震盪" です。脳震盪を繰り返すと、記憶力や注意力の低下、認知症の症状などを引き起こすことが分かり、社会の注目を浴びるようになりました。頭部を強打したとき、私達の頭の中では急激な加減速により脳が変形し、脳内に無数にある神経線維 (神経細胞の軸索部) がダメージを受けます。しかし、どの程度の衝撃で脳に障害が発生するのか、損傷した脳は回復するのか、という疑問はまだ解決していません。

機械・ロボット学科の中楯 浩康 准教授は、頭をぶつけた際に脳に生じる現象について研究しています。神経線維に対して実際に衝撃を加える実験を行って安全な範囲を数値化 (耐性値の決定) したり、損傷した神経線維に電気的・力学的刺激を与えて脳を活性化する方法について検討しています。これらの研究により、自動車の安全基準の見直しや新たな医療技術の開発につながることが期待されます。

(掲載期間 平成30年11・12月)

自然界の仕組みに学んだ"水"を使った化学


ほのかに青白い、セルロースナノファイバーと水だけから出来たハイドロゲル

化学というと色々な薬品を使うイメージがあると思います。化学反応によって何かを作る時には、原子や分子などの組み合わせを変える必要があります。原子や分子は何らかの化学結合で繋がっているので、それを一度切って (結合を弱めて)、また別のものと繋げる (結合を強める) ことが必要です。結合を弱めたり強めたりすることは、目的の原子や分子の周りに「別の物質」を置くことで可能です。この「別の物質」を置くことが、色々な薬品を使うということになります。では、他の方法はないのでしょうか? 自然界には、実験室にあるような薬品はほとんど存在せず、"水"を中心とした化学反応が行われています。その理由は、"水"の機能を最大限利用して「別の物質」をできるだけ使わない仕組みになっているからです。温度や圧力などをコントロールすることで、"水"の様々な性質 (極性やpH) を変えることができます。将来的には、自然の仕組みに学んだ"水"を使った化学にシフトしていくことも考えられます。


化学・材料学科の長田 光正 准教授は、"水"の機能を活用した化学を探求しています。木はセルロースという高分子が集まったナノファイバーという細い繊維から成り立っています。このセルロースのナノファイバーが"水"に分散した液体を、温度160℃、圧力0.6 MPaで30分程度処理すると、写真のような色々な形状を維持したハイドロゲルになります。これはナノファイバーの周りの"水"の環境を適切にコントロールすることで、ナノファイバー同士の間に働く力を変えて、部分的にナノファイバー同士を接着しているためです。このように薬品を使わなくても、"水"の温度や圧力を操作することで、原子や分子の間の力を制御する研究を行っています。

(掲載期間 平成31年 1・2月)

ガラス繊維より硬い天然の補強材! "セルロースナノウィスカー"




(上) 木材から抽出したナノセルロースの水懸濁液を偏光で観察
(中央) 綿から取り出したセルロース微粒子の電子顕微鏡写真
(下) セルロース微粒子を射出して繊維を紡糸

(掲載期間 平成31年 3・4月)

暗闇で怪しい光を放つ謎の液体 (動画あり:上)。その正体は、植物由来食物繊維のセルロースの微細繊維 "セルロースナノウィスカー" です。植物や海藻、ホヤという動物、ナタデココの中などに、食物繊維の一種であるセルロースが含まれています。セルロースの長い分子が束になって形成している超微細繊維を塩酸や硫酸を使って取り出すと、電子顕微鏡でなければ観察できないような微粒子 (幅10 nm、長さ100 nm;写真中央) を取り出すことができます。このセルロースの微粒子はとても軽いのにその一本の強度はガラス繊維よりも強く、生分解性があります。燃やしても有毒ガスを発生しないので環境負荷を与えず、そのためプラスチックの補強材として世界各国で研究が進められています。化学・材料学科の荒木 潤 准教授は、このセルロース微粒子を抽出する技術、またさまざまな物質の補強のために表面を改質するための、世界最先端の技術を持っています。セルロースに銀の微粒子や高分子鎖を結合して分散性や抗菌性を上げたり、セルロース粒子だけを使って繊維を紡糸する技術を開発したりしています (写真下)。

荒木准教授はセルロース粒子の乾燥粉末を世界で初めて開発し、ベンチャー企業から商品化するだけでなく、他の企業との共同研究も盛んに行っています。

動物の組織や臓器から作る医療機器


ブタから調製した脱細胞化神経加工材料 (左)
脱細胞化材料を利用した神経突起伸長 (右)

ヒトにブタなどの動物の組織や臓器を移植しても、すぐに拒絶されてしまいます。これは、ヒトの免疫系が動物の細胞を異物として認識することが原因です。一方、動物組織の細胞以外の部分である「細胞外マトリックス」は、ほとんど免疫拒絶されません。ここに目を付けた、動物の組織から細胞だけを取り除いた"脱細胞化組織"を医療機器・デバイスとして利用する研究が、盛んに行われています。応用生物科学科の根岸 淳 助教は、粉末化した脱細胞化組織を動物体内に移植すると、ケガを治すときの生体反応である創傷治癒が誘導されることを見い出しました。粉末化した脱細胞化組織は細胞外マトリックスがバラバラになっており、ケガをした動物組織の状態と類似しているために創傷治癒が誘導される、という仕組みのようです。脱細胞化組織粉末による創傷治癒誘導を利用した神経や筋肉を再生させる研究は、事故の後遺症治療や高齢者の寝たきり解消につながると期待されます。


根岸研究室ではこの他にも、脱細胞化組織加工材料が細胞と混ぜて体内に注入できる点を活かし、乳がん摘出後の乳房組織再建など、体内での組織再生技術を開発しようとしています。

(掲載期間 令和元年 5・6月)

VR・AR技術を用いた衣服設計

開発中のシステムの操作画面 (左)
出力されたタイトスカートの型紙 (右)

近年のVR (Virtual Reality; 仮想現実) やAR (Augmented Reality; 拡張現実) 技術の発展には目を見張るものがあります。これらの技術は、現在のところゲームなどのエンターテイメント分野で主に用いられていますが、繊維学部にはVR・AR技術を用いて衣服を設計しようとしている研究室があります。

コンピュータシミュレーションが専門の先進繊維・感性工学科の乾 滋 教授は、衣服を製作する際に必要となる型紙をVR・AR技術を用いて仮想的に作成するシステムを開発しています。ユーザーはヘッドマウントディスプレイ (HMD) を装着し、HMDを通して見える仮想的に再現された布を手を使って切り貼りすることで、実際に布やハサミを用いることなく型紙を作成することが可能です。すべての作業が仮想空間上で行われるため、作業のやり直しが容易なことから、衣服設計の省コスト化や効率化が進むという利点があります。この研究が実用化されれば、ひとりひとりの体型にフィットする衣服のオーダーメードがより身近なものになるでしょう。

(掲載期間 令和元年 7・8月)

極細繊維で私達の健康を守るモノづくり

抗菌性に優れたナノファイバーの構造 (左) とマスク外観 (右)

近年、技術の急速な発展の一方で、水と大気の汚染が深刻化しています。私達の健康的な生活にとって、細菌を含まないきれいな水や空気は必要不可欠です。機械・ロボット学科の金 翼水 教授はナノファイバーを用い、これらの問題を解決する研究を行っています。ナノファイバーは1本の太さが100ナノメートル、髪の毛の500分の1程度という極細繊維です。従来のマイクロファイバーよりもさらに細くなったことにより様々な性能が向上し、医療分野から電気・電子分野まで幅広く研究開発が進められています。

現在、幅広い用途があるナノファイバーの半数以上が医療分野で応用されています。医療で使用する際、そのナノファイバーは抗菌性をもっている必要があります。従来のナノファイバーに酸化銅を付加することで、生成したナノファイバーは従来のナノファイバーよりも高い抗菌作用をもつことが確認されました。このナノファイバーは、エアフィルターやマスク、浄水用の膜、傷の治療、組織工学、加水分解など、様々な用途に使用されています。ナノファイバーの使用用途は幅広いがゆえに様々な可能性を秘めており、金研究室はその可能性をさらに追及していきます。

(掲載期間 令和元年 9・10月)

塩害耐性が向上したイネ栽培品種の作出を目指して

近年の気候変動の影響により、土壌水や海水由来の塩類が土壌表層に集積する現象が、世界の農地で急速に増加しています。過剰な塩類集積は塩ストレスとなり、植物の成長や生産性を著しく減退させる "塩害" を引き起こします。重要な穀物である米を生産するイネは、穀類で最も塩ストレスに弱い作物です。土壌の塩類化の影響を受け、東南・西アジアの稲作地を中心に、塩害による米の減収が年々、深刻化しています。

応用生物科学科の堀江 智明 准教授の研究室では、塩害耐性が向上したイネ品種の作出を目指した研究を進めています。塩害を引き起こす要因の一つは毒性イオンであるNa+ (ナトリウムイオン) の植物体内への高蓄積ですが、植物が持つ防御機構の全容は不明なままです。近年、驚くべきことに、植物細胞の水の吸収・排出を担う水チャンネル (アクアポリン) の中にNa+も透過させる分子が存在すると示されました (右図)。実際に私たちは、イネの水チャンネルの一つに強いNa+輸送活性が存在することを確認しました。

現在、国内外の大学と国際共同研究チームを発足させ (こちら)、この不思議な機能を持つ輸送体の耐塩性への影響を精査し、塩害耐性品種の作出への応用に結び付くか、検討を始めました。

(掲載期間 令和元年11・12月)

白金触媒のムダを無くせ! モッタイナイ精神から産まれた「ナノシート触媒」

開発したRu@Ptコアシェルナノシート触媒の模式図

抜群の安定性と触媒活性を誇り、"触媒の王様" とも称される白金ですが、埋蔵量が限られ、高価であるという問題があります。そのため、ムダを出来るだけ無くすために、実用触媒は直径数nmのナノ粒子を用います。しかしながら、それでも表面に露出している白金は50%程度で、それよりも小さいナノ粒子は不安定です。平成31年4月、本学部で初めて "卓越教授 (DP)" の称号を授与された化学・材料学科の杉本 渉 教授の研究グループは、このモッタイナイ問題に対する解決策として『ナノシート触媒』を開発しました。このナノシート触媒は、従来のナノ粒子よりも白金利用率が高いだけでなく、二次元ナノ構造に由来する高い安定性を誇ります。

燃料電池触媒として用いた場合、従来よりも10~20倍高性能化 (白金使用量を90%カット) できます。現在、国家プロジェクトとして他大学や企業などと協同し、『ナノシート触媒』のさらなる高活性化に取り組んでいます。本研究に対する社会的注目度は高く、平成28年12月20日付の日本経済新聞や信濃毎日新聞に紹介記事が掲載されました。杉本教授の今後の実用化へ向けた取り組みに大きな期待が寄せられています。

(掲載期間 令和 2年 1・2月)

低炭素社会に向けたバイオマス燃料製造

地球温暖化対策のためにCO2排出削減が求められる中で、大気中のCO2を固定化して成長するバイオマス資源を用いて化石資源代替を行う取り組みが注目されています。しかし、バイオマス由来の燃料は化石資源と比べて発熱量が低いことが知られています。化学・材料学科の嶋田 五百里 講師は、固体触媒を用いた化学反応を利用することで、バイオマス原料から化石資源と同等の発熱量をもつような高品位燃料を製造する技術を開発しています。従来、この化学反応には高圧水素を用いることが常識でしたが、嶋田講師は原料自身が持つ水素を効率的に利用することで、水素雰囲気を用いない安価な転換プロセスを構築しました。そもそも化石資源は、太古の動植物が地中の熱や圧力によって数億年をかけて変化してできたものと言われています。嶋田講師の取り組む反応は、この数億年の変化をわずか数秒で成し遂げてしまうもののようです。

嶋田講師が着目するバイオマス原料は多岐にわたります。最近は、株式会社ユーグレナ、及び千代田化工建設株式会社との共同研究で、微細藻類の1種であるミドリムシが生産する油脂からガソリン代替燃料を製造することに成功しました。これらの研究が低炭素社会の構築に貢献することが期待されます。

(掲載期間 令和 2年 3・4月)

生物の飛行機能を解明し、羽ばたき型飛行ロボットを創る


近年、橋脚や高層ビルなどの巨大な建造物に対するメンテナンスのように人が行うと危険な作業を代理したり、人が立ち入れない場所での情報収集を行わせたりするツールとして、ドローンの活用が期待されています。高機能なドローンはこれまで比較的大型でしたが、大型ドローンの利用が不可能な場所での飛行実現を目指して最近ではドローンの小型化が進められています。しかし、こうした飛行ロボットの小型化・高性能化は簡単ではありません。 機械・ロボット学科の青野 光 准教授の研究室では、長い年月をかけて洗練された生物 (昆虫と鳥) の飛行機能やそのメカニズムについてコンピュータシミュレーションを駆使して理解することにより、これをベースとした生物飛行ロボットの開発に取り組んでいます。特に、生物の構造や機能について機械工学的な視点から議論する生物機械工学のアプローチに基づいて昆虫や鳥の翼と胴体が有する優れた機能を解析し、そこから得られる知見をロボットの開発に役立てています。

これまでの研究では、翼の形状や羽ばたき方と発生する音の関係について検討を行いました。まず、スーパーコンピュータを利用した大規模数値解析により、フクロウの特徴的な翼形状がその優れた飛行性能を支えていることを明らかにしました (図の左半分)。この検討により翼まわりの詳細な渦構造が明らかになり、ここからフクロウ飛行の静粛機能の解明に繋がる知見を得ています。そして、羽ばたき機構を有するロボットを試作して発生する空気力と空気音の関係を調べ、羽ばたき音の特性やその発生機構を明らかにしました (図の右半分)。今後、昆虫の優れた飛行性能を有し、羽音でコミュケーション可能な羽ばたき型飛行ロボットの実現を目指しています。

(掲載期間 令和 2年 5・6月)

光ファイバーを用いた生体情報の計測

世界でも類を見ないスピードで高齢化が進行するわが国では、健康状態のモニタリングが健康寿命の延伸や病気の早期発見において重要な役割を果たしています。先進繊維・感性工学科の児山 祥平 助教は、光ファイバーの1種であるFiber Bragg Gratingセンサー (以下、FBGセンサー) を用い、脈波などの生体情報の計測やウェアラブル計測デバイスの開発に取り組んでいます。FBGセンサーは従来、橋や道路などの橋梁構造物の検査に用いられていましたが、測定対象物のわずかな歪みを検出できることから、児山助教らのグループはFBGセンサーを手首や肘の脈動点に貼付することで脈波の計測が可能なことを明らかにしています (写真)。さらに、計測した脈波から呼吸数や血圧など、他の生体情報を抽出することにも成功しています。また、FBGセンサーを組紐状に加工し、テキスタイルの形態にしても同様に生体情報の計測が可能なことも確認しており、現在は衣服のようなウェアラブルな計測デバイスの開発に向けて研究を進めています。これらの研究は、誰もが安心して健康に暮らせる見守りサービスの実現において重要な要素技術となることが期待されます。

(掲載期間 令和 2年 7・8月)

生物に学び、創り出す未来の新材料

無機結晶と生体高分子が融合したナノファイバー

生物の骨や貝殻に代表される硬組織は、数ナノメートル (1ナノメートルは10億分の1メートル) の無機結晶と生体高分子が3次元的な階層構造を有する天然の有機無機複合材料であり、現在の材料構築技術では達成が困難な、優れた機能を発現しています。とくに、生物は硬組織を温和な反応条件下で生合成しており、そのプロセスは低環境負荷・省エネルギーによる次世代の機能性材料の構築手法として注目されています。化学・材料学科の村井 一喜 助教は、生物が長い進化の過程で手にした "もの作り" を "調べ・学び・理解する" ことで、優れた機能を発現する新材料の研究開発に取り組んでいます。その一例として、これまでは知られていなかった硬組織を形成する無機結晶の構造が "反応の足場となる生体高分子の形態" と "ミネラル源の連続的な供給" により制御されることを実験的に明らかにしました。また、生化学的な機構を解明する基礎研究だけでなく、生体組織と調和し、機能を発現する生体物質を起源とした未来材料の開発にも挑戦しています。

村井研究室では、学生の柔軟で自由な発想の基での実験を重要視するとともに積極的に学会で研究成果を発表するアクティブな研究活動を心がけています。また、他の研究機関との共同研究も積極的に実施しています。

(掲載期間 令和 2年 9・10月)

膵ランゲルハンス島を移植して糖尿病を治す


日本人の約1割が罹患している糖尿病には、自己免疫疾患により血糖値を下げるホルモンのインスリンが分泌できなくなる1型糖尿病と、食生活の乱れや運動不足といった生活習慣に起因してインスリンが効きにくくなる2型糖尿病があり、いずれも網膜症、腎不全、末梢神経障害などの合併症を引き起こすリスクがあります。前者の1型糖尿病に対して、インスリン投与による対処療法に代わるものとして最近、単離した膵ランゲルハンス島 (以下、膵島:この中にあるβ細胞がインスリンを分泌) を移植する根治療法が注目されています。保地 眞一 教授 (応用生物科学科) は、ラットの膵島を−196℃で長期保存してもグルコースに反応してインスリンを分泌する能力を保持しており、糖尿病ラットの腎被膜下に移植すれば血糖値が正常回復することを確認しました。このとき、多くの哺乳類において未受精卵子の保存に有効なことが実証され、保地研究室にも十分なノウハウの蓄積がある "超急速ガラス化保存法" が外径250 µm以下のラット膵島に適用でき、ナイロンメッシュや生体適合性が高いシルクフィブロイン製スポンジがガラス化デバイスとして利用できることもわかりました。現在、ES細胞やiPS細胞といった多能性幹細胞から膵島への分化誘導、巨大・極小膵島から適正サイズ膵島の再構成、移植膵島に血管新生を促進する足場材料の構築、といった実験にも挑戦しています。

生殖工学・発生工学・低温生物学という学問領域の土俵上で「配偶子 (精子、卵子) や受精卵の保存に関する研究」をメインに据え、論文発表を中心に研究活動を行ってきた保地研究室ですが、今からおよそ7年前、ある学生のリクエストに応える形で「膵島の保存ならびに移植に関連した研究」をゼロからスタートさせました。今ではそれぞれが研究室を牽引する研究テーマの両輪を成すようになり、研究室所属の学生メンバーが切磋琢磨する毎日を過ごしています。

(掲載期間 令和 2年 11・12月)

CO2分離・回収やエネルギー貯蔵が可能な炭素繊維


SDGs (持続可能な開発目標) を構成するゴールの一つに「気候変動に具体的な対策を」という項目があります。このゴールにたどり着くための取り組みとして、気候変動対策、とくに環境中への二酸化炭素CO2の排出量削減が求められています。CO2排出量削減には化石燃料の使用を控える必要がありますが、すぐに全ての化石燃料をクリーンエネルギーに代替することは容易なことではありません。そこで、排出されるCO2を分離・回収する技術が注目されています。一般には、自然 (森林など) による吸収、地層回収・貯蔵、吸着法などが検討されています。化学・材料学科の服部 義之 教授は活性炭素繊維 (ACF) を化学修飾し、特異なガス吸着特性を発現させる研究を行っています。最近、フッ素修飾したACF (フッ素化ACF) [走査型電子顕微鏡写真・上] がCO2を選択的かつ高密度に吸着する現象を発見しました。フッ素化ACFの細孔径 (ガスを吸着する小さな孔の大きさ) と炭素-フッ素結合の化学結合力を制御すると、フッ素化ACFがCO2を強く吸着したのです。

また炭素繊維は、電気を貯蔵する電池やキャパシタの電極としても期待されている材料です。服部研究室では、溶液中でイオンを高速かつ高密度に吸着できるACFを調製し、高性能なキャパシタを開発しようとしています。一例をあげると、コットン繊維から作製したACF [走査型電子顕微鏡写真・下] は良好なキャパシタ性能を示しました。このように、炭素繊維を利用して地球環境問題やエネルギー問題を解決することに挑戦しています。

(掲載期間 令和 3年 1・2月)

美しく快適な衣服とは?


婦人用上衣の印象評価において、様々な条件で制作された衣服を対象とするため、評価にはCGで作成された画像が用いられる。

アパレルのオーダーメードと聞くと高級なイメージがありますが、近年ではデジタル技術の進歩により、以前に比べ廉価で手軽に自分の体型に合った衣服を手にすることが可能になり始めています。ところで、体型にフィットしていれば衣服は美しく見えるのでしょうか?

衣服工学を専門とする先進繊維・感性工学科の金 炅屋 准教授は、着用者の体型 (バストラインの高さ) に合わせて制作された婦人用上衣とそうでない上衣を用意し、どちらが美しく見えるのか調査しました。その結果、着用者のバストトラインの高さに合わせて制作されたものよりも、一定のプロポーションのバストラインで制作されたものの方が美しく、魅力的に見えると多くの人が評価しました。同様の現象はウエストラインや肩幅などにおいても見られるそうで、これらの結果は体型にフィットした衣服が必ずしも美しく見えるとは限らないことを示唆しているようです。このことから、金准教授は着用者の体型を考慮しつつ、美しく見える衣服の設計方法を研究しています。快適さと美しさを兼ね備えた衣服の実現に向けて、研究の進展が期待されます。

(掲載期間 令和 3年 3・4月)

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