書物で繙く善光寺詣り : 2. 善光寺の旅行ガイド
ご挨拶 1. 善光寺縁起について 2. 善光寺の旅行ガイド 3. 描かれる善光寺、善光寺如来 4. 善光寺みやげ
江戸時代には、善光寺の旅行記が多数作られました。なかでも、流行作家の十返舎一九(1765-1831)は、複数の作品を手がけています。
弥次・喜多の珍道中『東海道中膝栗毛』(1802)が大ヒットした一九は、以後20年以上にわたり、『膝栗毛』の続編である『続膝栗毛』シリーズや『金草鞋』(かねのわらじ)シリーズなどの旅行記を書き続けました。
善光寺が出てくる作品は以下のとおりです。
- 『木曽街道続膝栗毛』、『従木曽路善光寺道続膝栗毛』
軽井沢から木曽路へと向かい、松本から大町を通って善光寺を参詣し、越後へ抜ける。 - 『善光寺道中続膝栗毛』
越後から善光寺を参詣し、草津へ抜ける。 - 『戸隠善光寺往来』
江戸から碓氷峠を越え、上田を通って善光寺を参詣し、戸隠へ向かう。 - 『金草鞋』13編
甲府から諏訪、松本を通って善光寺を参詣し、草津、伊香保、高崎へ抜ける。
信州を旅するならば、「善光寺抜き」はありえないということなのでしょう。読者の要望が多かったことも推測されます。
『諸国道中 金草鞋』(しょこくどうちゅう かねのわらじ)13編
十返舎一九(じっぺんしゃ いっく) 著 文政3年(1820)1月
文政3年6月~8月、江戸回向院での御開帳に先駆けて出版された。『金草鞋』(全25編)は、『膝栗毛』とともに好評を博した旅シリーズで、日本中の名所を、絵と狂歌、滑稽話で紹介する。本書は、甲府から韮崎、諏訪、塩尻、松本、麻績、稲荷山を経て善光寺へ、善光寺から上田、小諸、大笹、草津、伊香保を経て高崎までを紹介する。
『善光寺道名所図会』(ぜんこうじみちめいしょずえ)
豊田利忠(とよだ としただ)編著
嘉永2(1849)年(複製)
今尾藩(岐阜県海津市)の家臣、豊田利忠が著した、善光寺道沿いの名所図会。挿絵の大半も利忠が描いた。巻一は洗馬から池田まで、巻二は信濃追分まで、巻三は善光寺、巻四は戸隠から坂木まで、巻五は軽井沢までの名所・旧跡を古文献も用いながら解説する。名古屋の書肆、美濃屋伊七によって刊行された。