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書物で繙く善光寺詣り : 3. 描かれる善光寺、善光寺如来

善光寺如来の「御影」や「善光寺縁起」は、絵画化され掛軸の体裁をとるものがあります。掛軸の大画面に、如来の「御影」や、三国を伝来し善光寺の本尊となるまでの主要な場面を描くことにより、一度に多くの人々が鑑賞できるという利点がありました。
全国の善光寺の中には、参詣に訪れた人々に対して、掛軸に描かれた「善光寺縁起」を解説(絵解き)しながら由来を説く寺院があります。
また、諸国を遍歴し善光寺信仰を広めた僧尼たちは、聴衆の前で掛軸を広げて絵解きをし、文字の読めない人々にも善光寺如来の功徳を説いて、信仰を広めていきました。

善光寺如来(ぜんこうじにょらい)

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福島県いわき市所有・東京国立博物館寄託
(画像出典:ウィキメディア・コモンズ

善光寺の本尊は阿弥陀如来という仏です。一切の衆生を救うために、四十八の誓願を立てて、長い修行の末に仏となり、西方極楽浄土で教えを説いているとされています。日本では特に、浄土宗や浄土真宗において厚い信仰の対象となり、阿弥陀仏を信じその名を唱えれば、死後ただちに極楽浄土に生まれるとされています。「阿弥陀」の名は、サンスクリット語のアミターユス(量りしれない寿命を持つ者)とアミターバ(量りしれない光を持つ者)の音写です。
善光寺の阿弥陀如来の様式は「一光三尊」と呼ばれる、一つの光背の中に三尊(中央の阿弥陀如来と、両脇の観世音菩薩、勢至菩薩)が位置するものです。この様式は「善光寺式」の別名があり、鎌倉時代以降同じ様式の像が数多く製作されました。この写真の像もそれらの一つです。
善光寺の本尊そのものは、いかなるときも決して公開されない、絶対秘仏とされています。御開帳で公開されるのは、前立本尊と呼ばれる、鎌倉時代に本尊を模して製作されたとされる像で、国の重要文化財に指定されています。

『善光寺如来絵詞伝』(ぜんこうじにょらいえことばでん)

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上部中央、毘舎離国大林精舎で、釈迦如来が人々のために教えを説く図から始まり、上段に天竺・百済国の由来(百済国は2図のみ)、下段に日本国の由来が、絵と文章で説かれる。月蓋長者は慳貪であり、釈迦如来への布施を拒んだ話が加えられている。志賀高原の麓に建てられた文学館「志賀山文庫」旧蔵。

『善光寺如来図』(ぜんこうじにょらいず)

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善光寺の阿弥陀如来は「一光三尊」と呼ばれる、一つの光背の中に三尊(中央の阿弥陀如来と、両脇の観世音菩薩、勢至菩薩)を収める形式をとる。絵像の場合は、仏前に月蓋長者と如是姫が描かれることが多い。

『信州善光寺如来三国伝来之図』(しんしゅうぜんこうじにょらいさんごくでんらいのず)

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上部中央に善光寺如来と月蓋長者・如是姫を描き、右から左へと「天竺国之由来」「百済国之由来」「日本国之由来」を絵と文章で説く。「天竺国之由来」では、釈迦如来の誕生と、月蓋長者は慳貪であり、釈迦如来への布施を拒んだ話が加わり、「日本国之由来」では、舒明天皇の皇后の蘇生、天皇の参詣譚が省かれている。