国際交流・留学
2023年度 春・ドイツ 「ドイツで学んだ家庭医療の世界」(臨床実習)
氏名:田村 大地
派遣先:ドイツ ドレスデン工科大学
期間:2024年3月~5月
留学先大学について:
ドレスデン工科大学はドイツ・ザクセン州にある大学で、多くの学部学科によって構成されている理系大学です。医学部キャンパスは複数の建物に分かれてとても広く、全学のキャンパスとは30分ほどトラムで離れた位置にあります。ドレスデンの歴史ある街並みは第二次世界大戦中に空爆によって破壊されたものの、戦後に再建され、昔の雰囲気も取り戻した美しい街です。ポーランドやチェコとの国境にも近く、他民族の住民、多くの留学生にも出会えます。
学習面について:
私が行ったこととしては、臨床部門では外来診療への参加、研究部門では国際共同研究への参加、大学病院内の様々な診療科の見学、その他に学会やセミナーの交流企画などでした。
外来診療は、週に2日間、総合診療科の医師とともに行いました。期間中に何十人もの患者さんに出会い様々な疾患に触れることができました。また、見学するだけでなく、実際に患者さんとお話ししてみたり、血圧測定などの手技の補助をしたり、それぞれの疾患特有の診察方法なども教えていただきました。
研究部門では、「医学生健康調査2024 - 医学生の健康行動とキャリアプランに関する国際多施設共同研究」に参加しました。これはすでにドイツなど複数国で実施中の国際研究であり、研究の意義・先行研究、質問項目の吟味、研究計画書の作成、アンケートフォームの作成し、論文での分析項目について議論と共同作業を重ねました。
そのほかの診療科の見学では、緩和ケア病棟、国際診療科、神経科救急外来、消化器内科など様々な診療科を短期間ずつ回らせてもらいました。特に、国際診療科は、ドイツ語を母語としない外国人向けの外来という、移民・難民の多いドイツならではの場でした。医師の診察に医療専門の通訳が付き、複雑な事情を抱える多国籍の患者さんが多数訪れていて、英語以外にも複数言語が話せる医師もいたり、異文化間の説明・理解が必要な場面もあったりしました。
生活について:
現地での生活は大きく困ることはありませんでした。(閉店時間・日程にさえ注意しておけば)必要なものはスーパーやデパートなどでほとんど手に入り、街中はトラム・バス・自転車で動き回るのに不自由はありません。宿舎も快適に整備されており、共同キッチンではフロアメイトとおしゃべりが弾むこともありました。大学の学食は学生向けに非常に安く設定されており、学生カードを作ることで割引を受けることができました(ただし、現地学生の一緒に身分を証明し説明する必要がありました)。多くの交流企画にも参加することができました。ザクセン州の家庭医療学会、総合診療科に関心のある若手医師・学生の集まる企画、研究室のメンバーや学生などが誘ってくれたパーティー、学生の会議などにも赴きました。私自身も日本の医療制度と抱える問題について発表し、ドイツの医療制度と比べながら議論をする機会に恵まれ、異なる価値観・文化理解のきっかけになり、充実した楽しい日々となりました。
留学で得たこと:
今回の留学を通して、特に印象に残ったことが2つあります。一つ目は、自分のやりたいことを明確に伝え、積極的な参加が求められたということです。外国語での会話は常に完璧ではなく、発言が億劫になってしまうこともあります。しかし、今回はいつも「あなたは何がしたい?」と話を振られ、メンバーの一員になる必要がありました。拙い表現でも何か言おうと必死に取り組んできたことで、自分でも少しずつ自信がつき議論に参加できるようになったと感じています。二つ目は、エビデンスに基づいた研究の重要性を認識しました。臨床で用いる医学知識のエビデンスをきちんと確認し、自らも現場の取り組みから研究し、一つずつエビデンスを発見・共有することが求められているとわかりました。
同時に、自分の将来のキャリアプランについても考えるようになりました。私がこれまで持っていた国際的な関心はより高まり、また、医学教育や臨床現場での働き方についても興味が増してきました。今後は、自らの目標とする医師像をより明確にしながら勉強を重ね、現在も進行中の共同研究をパートナーとしてやり遂げていきたいと思います。
後輩へのアドバイス、奨学金システムへ一言:
留学することは、最初は戸惑いや不安、恥ずかしさなどもあるかもしれませんが、自分自身の殻を破り確実に成長できるチャンスです。将来必ずしも国際的な活動を視野に入れていなくても、広い視野・新しい考え方に出会い、これから学び続けていく上でもモチベーションを上げる経験にもなります。そして、大学内で自由に学んだり、様々な人に教えてもらったり、学生と楽しく交流したり、「大学生」という立場でしかできない経験がたくさんあります(加えて、学割があるのも大きなメリットです)。機会があればぜひチャレンジしてみましょう。
留学にあたっては、情報、学習面、金銭面など多方面で多くの方にご支援いただきました。信州大学医学部国際交流室、松医会の皆様、田中教授をはじめご支援ご指導いただいた先生方には心より感謝申し上げます。