原田 健史 先生(株式会社日本政策投資銀行 取締役・常務執行役員)の講義が行われました
2023. 05.24
- 現代産業論
2023年5月24日、2023年度「現代産業論」第5回の講義として、株式会社日本政策投資銀行 取締役・常務執行役員 原田 健史氏から「サステナブルな社会の創造を目指して~㈱日本政策投資銀行の取組み~」と題して講義が行われました。
株式会社日本政策投資銀行は、全額政府出資の政府系金融機関として1951年に設立された日本開発銀行と1956年に設立された北海道東北開発公庫が統合したのち、2008年10月に株式会社化されました。全額政府出資であることや、大企業向けの投融資が業務の中心であること、資金調達手段が預金でなく借入金(財務省・金融機関)や社債であることが特徴です。
第二次世界大戦からの経済・産業・社会の再建と復興のため、金融面から支援することを目的に設立された同行は、日本を取り巻く経済環境や社会課題が大きく変化する中で、その時々の直面する社会課題へ柔軟に対応し、我が国の持続的な発展に貢献してきました。
なかでも、政府(財務省)と連携して融資を行う「危機対応業務」や「特定投資業務」など幅広く投融資を行うことにより、日本経済のスタビライザー(安定化装置)としての機能を担っているとのことでした。
講義冒頭で原田氏は、我々が直面する地球規模の課題として①気候変動、②生物多様性の損失、③汚染 の3つを挙げられました。現在、SDGsの根底にある生態圏において「気候変動」や「生物多様性の損失」という危機が深刻化しており、国際的に迅速な対応を行うことが求められています。最近、世界共通の目標として取組み始めているのが「サステナブルな社会の実現」であり、具体的には「カーボンニュートラル」や「ネイチャーポジティブ」を挙げられ、それとの関係で「気候変動」と「生物多様性」とのつながりについても解説されました。
サステナブルな社会の実現に向け、様々な業界や企業が奮闘するなかで金融機関の役割は大きく、政府系金融機関として同行は多くの関係者を結び付けることにより顧客企業を支援しています。金融機関にとって顧客企業は相互利益的な関係にあり、投融資などを通じて金融機関の事業にも影響を与えることが考えられます。
日本政策投資銀行では、高度経済成長期から長きにわたり、サステナビリティに取組まれたとして、融資やベンチャー、金融・非金融面等における具体的な取組み事例を紹介されました。
近年の本格的な人口減少時代の到来や加速化する高齢化、後継者不足の問題が経済に与える影響は大きく、特に地方圏や観光関連産業では深刻な状況です。サステナビリティに取組むことは地域活性化につながり、観光業においては戦略的な成長が期待されます。
特に、ポストコロナを見据えたインバウンド観光への誘客が効果的と考えられており、日本交通公社と共同で実施した意向調査における長野エリア(軽井沢および松本/白馬)の認知度や関心事項について紹介し、インバウンド観光とサステナビリティの関係性について語られました。
最後に、「新型コロナ感染症やウクライナ侵攻による変化はサステナブルへの影響が大きく、より一層の取組みが求められる。世界の大きな流れの中に個々の取組みを位置付け、ストーリーとして捉えることが大事」と述べ、講義を締めくくられました。