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松本 順 先生(株式会社みちのりホールディングス 代表取締役グループCEO)の講義が行われました

松本 順 先生(株式会社みちのりホールディングス 代表取締役グループCEO)の講義が行われました

2019. 06.05

  • 現代産業論

 2019年6月5日、2019年度「現代産業論」第6回の講義として、株式会社みちのりホールディングス代表取締役グループCEO 松本 順氏から「バスを中心に見るモビリティサービスの進化」と題して講義が行われました。

 松本氏は、日本リース、GM系投資会社を経て、2003年より産業再生機構執行役員に就任、機構解散後、それまでの投資事業や事業再生ビジネスに多く携わってこられた経験から、交通事業再生を目的として「みちのりホールディングス」を設立されました。近年のデジタル革命に伴い、新しいテクノロジーを事業に取り入れたビジネス戦略を打ち立て、交通事業において今後さらなる発展が期待されています。

 公共交通(鉄道)が出現した19世紀前半は、欧米で金融業も発展し、世界の経済に大きな影響を及ぼしました。自動車の大量生産技術が確立し、馬車に代わって瞬く間に自動車が世界に広がりました。自動車の登場により日本のバス事業は勃興、急速に拡大し1930年にはバス事業者が3700を超え、公共交通の主役となりました。
 戦時統合を経て終戦後、日本国内のバス利用者数は劇的に増加するものの自家用車が急増し、バス利用者数は減少傾向にありました。しかし近年は「健康で社会参加への意欲の高い高齢者の増加」「若者の車離れ」「高速バス市場の拡大」等、外部環境要因によりバス利用者数は下げ止まっていると、最近の利用状況についてお話しされました。

 「みちのりホールディングス」は、経営共創基盤の100%出資により2009年に設立され、傘下には岩手県北バスや福島交通、関東自動車等、7つの交通・観光事業グループを有し、「みちのりグループ」を形成、5000人近い従業員と約2400台のバスを保有し、バス事業グループとしては日本で2番目の大きさをほこる企業としてビジネス展開されています。経営破綻した交通事業者に出資、統合というかたちで多くの企業を傘下に取り込み、「グループ経営の要諦は横串にある」との考えの下、各グループ交通会社と連携・共有してレベルアップを図っており、単独では成し得ない改善効果を生み出しています。
 活性化に向けた取り組みとしては、県をまたいだ観光誘致のための高速バス「関東やきものライナー」の運行、人だけでなくバス後部に荷物も一緒に乗せる「貨客混載」の実施、路線バスの利用促進のため、観光客と市民が混乗する取り組みなど、いくつか御紹介いただきました。こうした豊富な企画やアイデアを展開することで、多くの利用者からも高い支持を得ており、地域経済に大きく貢献しています。

 今後は、新しいテクノロジーの社会実装によって、持続可能なモビリティサービスの実現を目指すとされ、環境に配慮した電気バスや自動運転バス、IoTによるスマートバス停、スマート決済など新テクノロジーの活用やバスにおけるCASEについてお話しされました。「自動運転」については、安全の確保や事故の際の速やかな対応が難しいため、実現は簡単ではないが、バス専用道でレベル3の実証実験も行われており、日立市での実証の様子を動画で御紹介いただきました。
 これから取り組むべき課題としては、「MaaS(Mobility as a Sarvice)」を挙げられました。これは、「移動をひとつのサービスに統合する概念」であり、さまざまな交通情報を標準フォーマット化、オープン化することで、旅行の予約や決済・発券まで、ひとつのアプリで行うことが可能になるというもので、すでに伊豆ではMaaSの実験が始まっています。

 自動車産業のサービス産業化として語られることの多いCASEは、交通事業者にこそ求められるもので、新たなテクノロジーに事業者が挑み、かつて馬車から自動車に大転換したような変貌ができるなら、バスも、タクシーも、交通事業者はサステナブルな時代の主役になれるだろうと、御自身が思い描く将来の姿を熱く語り、講義をしめくくられました。

  • (株)みちのりホールディングス 代表取締役グループCEO 松本順氏
  • 講義風景

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