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はやさか としひろ

早坂 俊廣

哲学・芸術論 教授

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中国関係

健康で文化的な泰州・東台調査

3人の王さん(泰州姜堰)

いつもの共同研究メンバーで、9月6日から12日にかけて、中国江蘇省の無錫・南京・泰州・塩城(東台)・蘇州を調査してきました。これから、思いつくままに順不同でその様子を報告していきたいと思います。その「思いつく」ことの最初がこの話題なのもなんなのですが、習近平国家主席の贅沢禁止令の効果は相当なもののようで、今回、泰州・東台であちらの方と食事をご一緒した(有り体に申せば、おもてなしを受けた)際、お酒が一切出されませんでした。10年近く前にも泰州に行ったことがあるのですが、その時は冗談抜きで命の危険を感じたほどお酒を(ほしくなかったのに)いただきました。その泰州で、です。当時一緒に行った方々に帰国後すぐメールで知らせたほどの驚きでした。泰州に行く前に寄った他の街では「外国人を接待する際はお酒を出してもOKです。でも、証拠として皆さんのパスポートのコピーをください」と言われ、「中国も、すごく厳格になったんだね」と皆で話していたのですが、それを超える厳格さでした。ただ、そのおかげで、非常に健康的な調査旅行になったことも事実です。

王艮の子孫と我が恩師が握手する感動の場面

もともと泰州市に属していたのに今は塩城市に組み込まれている東台市に、安豊鎮という街があります。そこは、王守仁(陽明、1472~1529)の高弟である王艮(心斎、1483~1540)が生まれ育ったところです。彼は「泰州学派」「王学左派」の中心人物と目される、キレッキレの思想家ですが、塩の生産に携わっていた「平民」である点が他の王門諸氏と異なるところです。10年ほど前に別メンバー(上記の「当時一緒に行った方々」)とそこを訪れた際、王艮の生家跡と言われるところにも連れて行ってもらったので、事前にそこもリクエストしておきました。しかし、「やはり」というか「さすが」というか、安豊鎮に着いた我々は、まず古い街並みが残っている一角に連れて行かれ、もとい、連れて行っていただき、様々な歴史遺産に触れることができました。その後、「心斎園」という王艮記念館のようなところを参観しましたが、そこで、何故か私が日本側を代表して(一人だけ、安豊に来たのが二度目だったからだと思うのですが)、現地テレビ局の取材を受けるはめになりました。しゃべらせるだけしゃべらせといて、「中国語がよく聞き取れなかった」と失礼なことを言うテレビ局でしたが、リンクを貼っておきます。ただし、ネット環境によっては、そこにあるテレビ映像を見られない場合があります。私はパソコンで見られませんでしたが、スマホ(の「微信(WeChat)」)では見ることができました。もう一ブロック下に貼ったリンクは東台市のウェブサイトで、そちらにテレビ映像はありませんが、写真が多く載せられています。こんな形で載るんだったら、広島カープの帽子を被っていくんじゃなかったと後悔しているところです(テレビ取材の際はもちろん脱いでいました)

王氏宗祠(泰州市姜堰)

心斎園参観の後、鎮政府のレストランで(もちろんお酒抜きの)食事をいただきましたが、何となく「じゃあ、帰るか」という雰囲気を中国側に感じたため、少し強めに「王艮の生家跡にも行くって話でしたよね」と念押しをし、なんとか当初の目的を達成することができました。王艮さんの子孫さんにも会うことができて、皆で今回の調査の成功を確信しました。また、東台から泰州市街地に戻る途中、泰州市の姜堰というところにある「王氏宗祠」も訪れました。ここは、七年前に、上記とはさらに別のメンバーと訪れたことがあったのですが、周りも内部も様変わりしていました。周辺はレトロ街になっていましたし、内部も大きくなり且つ綺麗に変貌していました。ここは、王艮さんの「族弟」であり且つ「弟子」でもある王棟(一菴、1503~1581)という思想家の系譜を継ぐ宗祠のようです。七年前にここを訪れた際、一族の方々に失礼なことをしてしまったかなという場面があり、自分自身のことではなかったものの、そこが大変気がかりでした。ですが今回、その一族の方々はたいへんフレンドリーに接してくださり、安堵致しました。

崇儒祠にて

「フレンドリー」ということで言えば、安豊に着いてバスを降りてすぐ、出迎えてくださった現地陣のお一人に「おお、好朋友が来たじゃないか!」と声をかけられました。よく見ると、10年近く前に来たときに案内をしてくださった郷土史家の方でした。それだけで感激していたのに、「あの時は、○○、××、△△と一緒に来たよな」と、当時の日本側メンバーの名前をそらんじてくれました。鳥肌ものの感動です(その方の名前が思い出せなかったので、冷や汗も同時に流れ出ましたが)。泰州では、「崇儒祠」という、王艮を祀った施設にも行きましたが(その時のことは、以前このブログで紹介しました)、そこには、上記メンバーが現地研究者と交流している様子が写真パネルで掲げられていました。また、その時、手土産として持参した日本人研究者の著作も陳列されていました。嬉しくなって、ちょっと品がないぐらい「これ、私が10年前に来たときに、皆で贈った書籍です! この後ろ姿、私です!」と、周りにいた人たちに連呼してしまいました。お酒が出なかった話よりも、こういう深イイ話こそ、多くの人々に伝わっていってほしい、と強く思います!(もしかしたら、お酒の件をまだ根に持ってるのか?)

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