教員紹介

はやさか としひろ

早坂 俊廣

哲学・芸術論 教授

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中国関係

泰州学派

近年その呼称の妥当性に疑義が出されつつはあるが、「泰州学派」と呼ばれる一団の思想家群が明代にいた。王守仁の高弟・王艮(1483~1540)がその中心人物だ。彼は塩商人の出であり、陽明学が庶民階層にまで伝播した事例として注目されてきた。

  ずいぶん間の抜けた報告になってしまうのだが、昨年の8月、はじめて泰州(江蘇省。上海から高速バスで4時間ほどのところにある)という地を訪れた。長く交流を続けている寧波のF先生が、わざわざご同行のうえ、現地の研究者を紹介してくださった。その交流の席上、現地の方々がしきりに強調されたのが、「胡錦涛主席の<和諧社会>構想は、泰州学派に源流がある」という話であった。

気づかれないように、そーと眉に唾をつけながら聞いていたのだが、それも意外とアリなのかもと思うようになった瞬間があった。それは、江蘇省泰州中学(左上の写真。クリックすると大きくなります)に連れて行ってもらった時だ。 泰州を訪れるまでまっ たく無知であったが、胡錦涛氏はこの泰州中学の卒業生だったのだ。彼が学んだ机もあった。(左中の写真)

  ところで、われわれが泰州中学を訪れたのは、胡錦涛氏目当てだったわけではない。それは、ここに「安定書院」という講学所があったからに他ならない。「安定書院」とは、同地にゆかりのある北宋の思想家・胡瑗の功績をたたえて明代に建てられたもので、冒頭で言及した王艮もこの書院で講義をしたことがあるのだ。ならば、この地の気風を存分に吸って青春時代を過ごした胡錦涛氏に「泰州学派」の精神が引き継がれていても、何の不思議もないではないか!!!(という論法なのだと理解した。)

 まだまだ眉についた唾は乾いていないが、こういう論法は非常に興味深いと思う。中国哲学の資料を読んでいても、こういう論法を各処に見いだすことができる。中国の思想文化とかを考えるうえで、こういう論法の意味合いについてしっかり究明していくことがとても大切なんだということを、泰州で再認識した。

  なお、「結局、泰州学派って何なのさ?」と思われた方は、左下の写真をご覧いただきたい。泰州市の「崇儒祠」という場所に掲げてあった王艮の「楽学歌」という詩文(の前半部分)である。「人の心はもともとハッピー。それをエンジョイするのが学問さ!」ってところだろうか(軽薄な解釈でスミマセン)。これこそ、泰州学派の根本理念だと思う。・・・で、胡錦涛氏がハッピーに学園生活をエンジョイしたのかどうか、私は不学にして知らない。今はどうなのかも・・・

 

 

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