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綿谷 憲一 先生(株式会社綿谷製作所 代表取締役社長) の講義が行われました

綿谷 憲一 先生(株式会社綿谷製作所 代表取締役社長) の講義が行われました

2021. 11.17

  • 経営者と企業

 2021年11月17日、2021年度「経営者と企業」第4回の講義として、株式会社綿谷製作所 代表取締役社長 綿谷 憲一氏から「新たな技術への挑戦、海外展開へ」と題して講義が行われました。

 昭和11年、綿谷氏の祖父が立ち上げた同社は、①機械部品等を加工する加工部門、②射出成形機等の組立、配線、運転調整まで行う組立部門、③転造盤用ロールダイスを製造する転造ダイス部門の3本柱で事業を展開されています。
 昭和に入り、それまで隆盛だった製糸業が衰退する一方、戦時中に進出してきた機械工業や疎開工場が戦後の工業発展の基礎となり、この地域の産業構造は大きく変化を遂げました。
 このような歴史がある綿谷製作所の3代目の社長として就任された綿谷氏ですが、時代の流れとともに仕事は大きく変わり、特にバブル崩壊やリーマンショック、東日本大震災、新型コロナウィルス等の大きなリスクが多発した昨今、事業を継続することの難しさや経営のためには自分たちがどう対処していけばよいのか、リスク回避のための手段を常に考えてこられました。
 今後も続くであろう様々なリスクの中で生き残っていくためには、「今までと同じことをやっていては生き残ることはできない。世の中の環境は良くも悪くもなっており、その環境を変えていく力をつけながら社会に貢献し、利益を得る運営をしていく必要がある。自分達だけでは出来ることは限られており、あらゆるアライアント(連携)が重要。長年、培ってきた技術を活かし、異業種連携による新規事業で新たなビジネスモデルの構築を目指していく」と述べ、製品の実例を具体的に挙げていただきました。

 「油化機」と呼ばれる廃プラスチック油化還元装置は、プラスチックごみから油を生成する装置で、廃プラスチックを油に還元するのに適しているとされる3P(ポリエチレン・ポリスチレン・ポリプロピレン)を高周波により溶解・帰化・分留化することで重油や軽油等に還元します。これらのプラスチック自体に余分なものが入っていないため、純度が高く処理残渣の少ない良質な油が生成され、発電機やボイラー、農機具等に使用されています。     
 また、日本航空や全日空では2050年度までに航空機の運航における二酸化炭素排出量の実質ゼロを目標に掲げており、日本航空では、すべての国内線のジェット機燃料を廃プラ由来の国産燃料等で代替する計画が進められています。

 発光ダイオード(LED)と光触媒を用いた「LED空気清浄機~プレアデス~」の製造は、新型コロナウィルスを30秒で不活化することが実証試験で認められたことで、販売促進に大きくつながりました。コロナ禍以前より空気清浄機の製造は行われていましたが、半年ほどは、その機能や効果が判断できず、本当に大丈夫かと不安に思われたとのことです。結果、ノロウィルスやカビ菌等にも効果を発揮することがわかり、「ぜひ多くの方に使ってほしい。この製品が、新型コロナの軽減につながることを願う」との思いを述べられました。

 「油化機」で生成された油を燃料として活用し、あらゆる環境において通年で野菜の栽培・出荷する取り組みも新規事業のひとつです。「アグリ・キュルチュール軽井沢株式会社」を設立し、上田市と連携してビニールハウスでラディッシュ等のミニ野菜を栽培。年間通じて発電機に油化機の重油を使用することで、燃料費のコストを抑えています。現在の出荷量は月に約2万本ですが、今後は4万本が目標だと述べ、これからも新しい農業の可能性や、環境に適した技術の開発が期待されます。

 さらに新たな事業展開として海外(フィリピン)をターゲットに、販路拡大に向けた準備を着々と進めています。日本貿易振興機構(JETRO)や国際協力機構(JICA)の支援を受け、今年度中に販売を行う予定でおり、油化機や亜臨海処理装置(生ごみ処理から100%有機肥料を生成し、農薬の散布や使用が軽減できる)を販売製品に掲げています。

 綿谷氏は、「これからは、今までに取り組んだことのない事業への参入が避けて通れなくなるが、人と人との関わり合い、つながりにより新しいものが生まれ、いろいろな考え方が出てくることで自分自身の人生が豊かになる 。同じところにしがみついていては、新しいものは生まれない。人との出会いを大切にして、いい仲間を見つけ、多くの企業や経営者と話をする機会を設けて、新しい未来を見つけていってください」と学生に向けて温かいお言葉をいただきました。

  • (株)綿谷製作所 代表取締役社長 綿谷憲一氏
  • 講義風景

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