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井口 彰 先生(株式会社マル井 代表取締役社長) の講義が行われました

井口 彰 先生(株式会社マル井 代表取締役社長) の講義が行われました

2021. 10.20

  • 経営者と企業

 2021年10月20日、2021年度「経営者と企業」第1回の講義として、株式会社マル井 代表取締役社長 井口 彰氏から「飛行機の操縦と会社経営」と題して講義が行われました。

 元パイロットで、旅客機の機長や航空報道の第一線で活躍された経歴をもつ井口氏は、食品業界では異彩のリーダーです。高校生の時からのパイロットになる夢をあきらめきれず、航空大学校に進学されます。その後、航空機メーカーのテストパイロットや報道取材のパイロット、旅客機のパイロット等を経て、家業継承のために地元に戻って株式会社マル井へ入社されました。2011年10月には代表取締役に就任され、「食文化への貢献」の理念を掲げて同社の経営に携わっています。

 信州を代表する食のひとつである「わさび」の加工品メーカーである当社は、創業以来、業務用・家庭用に多様な加工わさび商品の開発に力を入れるとともに、アメリカやベトナムの2拠点においても製造及び販売を手掛けるなど、海外の市場開拓拡大も視野に国内外で着実に成長しています。
 従業員数が70名と少ないものの、「コンパクトでスマートにやるのが経営の基本」と話し、多数ある商品を御紹介いただきました。
 ワサビランキングNo.1に選ばれた人気の「あらぎりわさび」をはじめ、原料に「安曇野産わさび」を使うことで同社のブランド価値を高めているとして、「ひとつのものを作るのは大変な作業で手間がかかるが、常に研究を重ねていくことが重要。使い方や料理例を挙げてお客さまにアピール・提案することも売上アップにつながると見込んでいる」との見解を述べられました。

 わさびの生態や歴史、商品の製造工程にもふれ、「30年ほど前には安曇野全体で年間1,200t栽培されていた安曇野の平地式わさびが、現在は高齢化・地球温暖化により800tを切っており、この現況を大変危惧している。さまざまな要因により育成が難しい状況ではあるが、当社では年間10万本の苗を農家に提供し、逆に地域産業としてさらなる発展を目指している」と述べ、「わさび生産プロジェクト」の取り組みを挙げられました。
 これは林を開墾してわさび畑にする取り組みで、相当の苦労があったものの、県やJAに認められた時の思いを振り返り、「会社として、まずは道筋をつくり、いかに地域や人を動かしていくか、どうやったら全体が機能していくか。とにかく、ひとつ成功例をつくって着眼してもらい、その後は皆さんに取り組んでもらうことが当初からの狙いだった。我が社の目標は、安曇野産200tです」と語り、「安曇野産わさび」のブランド育成が、地域の活性化推進にもつながるとして注目されています。
 わさびには抗酸化作用や殺菌・抗菌作用、解毒作用、抗アレルギー作用等、多数の生理活性効果が認められており、日本食の健康ブームにも後押しされて、今後は、日本だけでなく世界においてもわさびの利用範囲が広がり、需要が伸びることが期待されています。

 井口氏は、「私自身、飛行機やヘリコプターの総飛行時間7,000時間を大変誇りに思っている。パイロットは何かを作るわけでないので何も形として残すことはないが、飛行機も会社もクルー・コーディネーションが重要。仲間を信頼し、お互いがするべきミッションを理解することでスムースなビジネスができる。今は「社長」だが、どちらかというと「機長」「ディスパッチャー」としての仕事が大きい。自分自身のあり方や思い、方向性に信念を通すことが大事で、それが自身の成長・会社の成長につながる」と話し、本日の講義のテーマである「飛行機の操縦と会社経営」についてまとめていただきました。

 講義では、パイロット時代のお話しや、テストパイロット時代のデモンストレーションフライトの動画、実際に操縦された旅客機の飛行計器やコックピット内の写真など、貴重な資料も多数御紹介いただき、大変興味深い講義となりました。

  • (株)マル井 代表取締役社長 井口彰氏
  • 講義風景

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