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塩沢 均 先生(ベイクックコーポレーション株式会社 代表取締役社長) の講義が行われました

塩沢 均 先生(ベイクックコーポレーション株式会社 代表取締役社長) の講義が行われました

2021. 12.15

  • 経営者と企業

 2021年12月15日、2021年度「経営者と企業」第8回の講義として、ベイクックコーポレーション株式会社 代表取締役社長 塩沢 均氏から「日本のコメの現状と当社の姿」と題して講義が行われました。

 ベイクックコーポレーション株式会社は、長野県全域で米穀類の製造・販売を主軸に、白飯や酢飯・おにぎり等の加工米飯事業も展開するなど、お米に関する事業を多角的に推し進めています。さらに食品問屋として一般商品の販売や、灯油を中心とした石油製品の販売を手掛けるなど、幅広く事業を展開しています。

 同社は平成8年に設立された新しい会社ではありますが、前身となる事業協同組合(北信・中信・東信の3法人)が合併して創業を開始しました。その後は県内4ヶ所の拠点を長野市へ集約し、炊飯事業へ参入します。異物除去を中心とした精米工程では、搗精と選別が一番重要であり、徹底的に異物を取り除くことを目的に数多くの工程があります。また、炊飯工程においても徹底した衛生管理のもと、炊飯や加工が行われ、出荷までに何度も金属検出器を通し、安心安全でおいしいごはんをお客さまにお届けしているとお話しいただきました。

 元来、日本人の主食と言えば「コメ」でしたが、日本人1人当たりの年間消費量は昭和37年の118kgをピークに減り続け、令和2年には50kgと、この60年の間に半分以下と低下の一途をたどっています。その要因として、「食の欧米化」や「小麦粉製品へのシフト」、「価格が高い」、「人口減少」等が挙げられています。特にコメ市場に大きな影響を与えたのは新型コロナ禍により、コメの需要の下支えをしていた外食や給食産業による急激な需要の減少が全体の需要を引き下げ、市場の縮小につながったと、昨今のコメ事情について解説されました。
 さらに、米価の動向については、「基本は右肩下がりで、平成初めから比較するとこの30年間で3分の2以下になっている。消費者からみると価格が下がるのは良いことだと思われるが、米生産費から考えると年間で10%程度の利益しか残らない状態である。その年の出来不出来による需給のバランス問題もあるが、政治的な要因や基準となる価格決定が不透明な状況も一因であり、生産者や事業者からすると、早期に解決していかなければならない大きな課題である」との見解を述べられました。

 コメマーケットとコメ業界がおかれている厳しい現況のなか、同社では新しい取り組みを推進し、新たな需要の開拓を進めています。
 平成14年に炊飯事業に進出した際には、テクニカルな部分だけでなく取引先(精米業)との軋轢で取引が止まったことや、お客さまのニーズが高度化することに伴う機材の購入、現場の人材不足、ロスが出やすく利益が出ないなど多くの問題にぶつかりながらも、次なる米飯加工の検討をされています。

 塩沢氏は、「当社の社会的役割、社会に対する当社の使命とは何か?」を考えた時、「安定供給が一番の役割であり使命である」と述べ、「東日本大震災や台風19号被害、コロナ禍等で、かなりコメに対するニーズの高まりと需要の伸びが感じられ、コメはライフラインの一つだと考えた。全国的に見ると長野米は強いブランド力を持たず、マーケットや消費者から押し出されている印象がある。今後は、長野で作られたコメを「長野米」として販売していくことが我々に与えられたミッションではないかと、非常に強く感じている」と熱い思いを語られました。

 最後に「皆さんが自分で購入して食べることは少ないと思うが、危機的状況に置かれているコメを多くの方に食べてほしい。そしてコメに関する情報を目や耳にした時に今日の話や、当社のことを思い出してもらえると嬉しい。コメ市場は超成熟市場で、これから大ブレイクすることはないだろうが、我々は自分の立ち位置をはっきりさせ流されずに進んでいく。皆さんも社会へ巣立ってからいろいろあるだろうが、何らかの局面において皆さんの力で多くの企業や業界をサポートしてもらえるようになってくれることを期待しています」と学生に向けて呼びかけ、講義を締めくくられました。

  • ベイクックコーポレーション(株) 代表取締役社長 塩沢均氏
  • 講義風景

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