岩野 和生 先生 (株式会社三菱ケミカルホールディングス 顧問) の講義がオンラインにより行われました
2021. 06.09
- 現代産業論
2021年6月9日、2021年度「現代産業論」第6回の講義として、株式会社三菱ケミカルホールディングス 顧問 岩野 和生氏から「デジタル変革の可能性」と題して、オンラインによる講義が行われました。
岩野氏は、日本IBMに入社後、オートノミックコンピューティングの研究開発やクラウドコンピューティング、スマーターシティの基盤づくり等を手がけたのち、三菱商事ではITを使った新規事業に参画、さらに科学技術振興機構においてITに関する政策提言に携わるなど、常にデジタル技術に関する研究を牽引されてきました。
科学技術の目覚ましい発展とともに、その社会への適用が強く求められている現在、三菱ケミカルホールディングスの顧問として、ビジネスモデルの変革や社会的課題の解決に向けて日々、邁進されています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、いまや多くの企業にとって共通の課題となっています。岩野氏は、DXの本質は「いろいろな関係性にデジタル技術と思想により、変革を起こし新しい価値を作り出すこと」と定義して、DXにおける「価値の源泉」を ① 変革への意志、② リアルの現場、③ データ、④ さまざまな事業と専門家、を挙げられました。そして、新しい価値をつくっていくのに一番大事なことは「個人個人、そしてリーダーが変革への強い意志を持っていること。一時的なブームに乗っているだけでは何も変えることはできない。さらにリアルな現場とデータがあり、さまざまな専門家が現場にいること。これらとデジタル技術や思想を本質的に掛け合わせ、組織の変革を実現していくことが重要である」との見解を示されました。
DXを取り巻く時代認識として、社会におけるITの役割の変化を第1段階(ビジネスのクリティカルインフラとしてのIT)、第2段階(社会のクリティカルインフラとしてのIT)、第3段階(知と森羅万象とIT)に分けて言及。「第1段階ではスペック通りにつくるのがITの使命だったが、第2段階ではありとあらゆるものが動的となった。現在は、知恵と森羅万象が価値実現に参加する第3段階にあり、DXは第2段階から第3段階の間に位置付けられると考えている。ITが社会全体のクリティカルインフラとして、どのような社会を目指すのか議論し、合意形成していくことが大切」と述べられました。
将来の社会サービスの形としては、人やコミュニティーの状況を把握するのが大事だとして、モノとサービスの関係性についてお話しいただきました。現在のIT、デジタル化の動きはビジネス的な価値がモノからサービスへ流れ、価値の居場所が変化している。サービスはある機能を提供するものであり、エコシステムの中に位置づけることで価値が出るものである。その意味で「機能のエコシステム」というものが重要になる。つまり、人・モノ・サービスの機能がそれぞれコンポーネントとして、サイバーとリアルの一体化された空間にある。その機能を組み合わせて新しいサービスやビジネスを作ることは、デジタル技術と思想であらゆる関係を変革し、価値を作ることになると語られました。
社会システムの構築に向け、多様なデータを有効な価値に変えていくものとして「DIKWDモデル」を挙げられました。データ(Data)を情報(Information)に、そして知識(Knowledge)に変え、さらに知識から知恵(Wisdom)や英知の段階に質を上げることで、それらの知恵によって賢い判断(Decision)ができるようになり、変革をもたらすことにつながると語り、DX推進に向けた9つの工夫やテキストマイニングの応用例等を御紹介いただきました。
デジタル変革には、いろいろな技術と思想を活かしていくこと、そして多くの分野に関わる人材が必要であり、さまざまな関係性に変革を起こし価値を創造していくことで企業や社会を変えることができる。テクノロジーの革新的な進歩は、ビジネスや社会に大きな影響を及ぼすものであり、それをいかに会社の価値や競争力に結びつけていくかが大事。デジタル変革には技術と思想の融合が必要であると述べ、講義を締めくくられました。