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白河 桃子 先生(相模女子大学客員教授、少子化ジャーナリスト)の講義が行われました

白河 桃子 先生(相模女子大学客員教授、少子化ジャーナリスト)の講義が行われました

2018. 06.06

  • 現代産業論

 平成30年6月6日、平成30年度現代産業論 (産業論特論) 第7回の講義として、相模女子大学客員教授、少子化ジャーナリスト、働き方改革実現会議 有識者議員 白河 桃子氏から、「御社の働き方改革 間違ってませんか? 経営戦略としての働き方改革」と題して講義が行われました。

 白河氏は、相模女子大学客員教授、少子化ジャーナリストを務められているほか、少子化対策、女性のキャリア・ライフデザイン、女性活躍推進、ダイバーシティ、働き方改革などをテーマに著作、講演活動を行っていらっしゃいます。10年ほど前に「婚活」という言葉を世に送り出した方でもあります。また、大学生や高校生向けに仕事、結婚、出産の切れ目ないライフキャリア授業を行い、女性のキーワードについて発信、様々なアドバイスを送られています。その一方で、「働き方改革実現会議」などの有識者議員として政府の政策策定に参画されており、多方面で御活躍されています。

 最初に「働き方改革」の概要を御説明され、その中で注目すべき項目に「労働時間改革」「ITによる柔軟な働き方・テレワーク」を挙げられました。時間の有限性に着目して長時間労働を是正することで、生産性がアップするとともに、健康維持や女性活躍推進が期待されます。また、ITの活用によりオフィスでなくても仕事ができる働き方を実現することで、通勤時間の節約、業務効率化などの効果が期待できますが、働きすぎを防ぐための上限は必要であると述べられました。
 経営戦略としての働き方改革は、柔軟な働き方やITだけでなく、まずは昭和のビジネスモデルから脱することだとし、改革に取り組むためにポイントとなる「リーダーシップ」「インフラ整備」「マインドセット」について解説され、中小企業はリーダーシップ(経営者のやる気)、マインドセットの面においては大企業よりも優れていることがあるとお話しいただきました。
 また、働き方改革で重要なのは、「どうやって(how)」の前に「なぜやるのか(why)」を考えることであり、働き方改革は目的ではなく、まず何のためにやるのかを考えることが重要だと述べられました。働き方改革は「暮らし方改革」であり、生産年齢人口が増えていた「人口ボーナス期」は大量生産の時代で均質な人が長時間働き、ワンオペ(男性が稼ぎ、女性が育児)が効率的だったが、生産年齢人口の比率が減っていく「人口オーナス期」は多様な人が多様な場所や時間で働くことが必要となり、暮らしもチーム体制(チーム育児、チーム稼ぎ)が効率的になってきたと御説明されました。暮らし方の変化に伴い、働き方は一律から多様へ、労働時間は量から質へ、他律的な働き方から自律的な働き方へと変化します。「働き方改革」とは、経営者にとっては経営改革であり、個人にとっては、生き方を決めるチャンスでもあると述べられました。

 「働き方改革で儲かるのか」という視点からは、改革を実践して成果を出している事例を何社か御紹介いただきました。業務体制の見直しや職場の意識・雰囲気を変える取り組み、スキルアップの効果等で、労働時間の減少や売上生産性向上が顕著に表れるだけでなく、女性管理職数、従業員の出産数や採用エントリー数の増加など様々な観点からみても、働き方改革は企業にとって損失を防ぐ効果があると指摘されました。特に地方の中小企業にとっては、人材流出による損失は大きく、新規人材獲得は難しいことから、「今いる人たちが辞めないで、それぞれの立場で、それぞれの能力を活かして働く」ように取り組むことが重要である、と語られました。
 一方、企業によっては働き方改革への受け止めはまだ前向きとはいえないと述べられ、「働き方改革とは、経営者にビジネスモデルの変革を迫るもの」だと強調、人口ボーナス期時代の昭和のビジネスモデルを改める必要性を指摘されました。

 「生産性の向上」は働き方改革の目的の一つですが、それは「稼ぐ力」を高めることであり、心理的な安心感が職場にあるかどうかで高い生産性を保つことにつながります。心理的安心感があると「関係の質」の向上が起き、結果の質が上がる(イノベーティブな職場になる)と正のサイクルがある職場になります。そのためには、まず形から入る(長時間労働を制限する)ことも有効なきっかけになると説かれました。
 一方、長時間労働を「なぜ是正するのか(why)」を考えずに小手先の取り組みに走ると、早く帰れの掛け声のみで持ち帰り残業、サービス残業が増加したり、自分の仕事のみをやることで新規提案が出てこなくなり、イノベーションが起きなくなる等、最悪の結果を招くこともあることを指摘されました。結局、経営者と管理職の本気度、覚悟が試されるのであり、本当の改革のためには、勤務時間だけでなく、人事評価と報酬の設計を全て変える必要があると述べられました。

 また、女性活躍の更なる推進のためには、両立支援(女性のみへの支援策を充実させること)から、男女ともの働き方改革(男性も仕事と育児を両立し、働き方を選べるようにすること)にフェーズを切り替えていく必要があること、地方創生(人口減少・地方消滅の阻止)のためにも、若年女性が地元から流失しなくても子育てをしながら安定した仕事ができるようにする改革(働き方改革)が重要になること、などを御指摘されました。

 働き方改革の第一人者である方を講師にお迎えし、改革を経てどのような変化が起きたのか、多くの具体的な事例を御紹介いただいた講義は大変わかりやすく、真に効果が上がる働き方改革に向けた課題やポイントは何かについて考えることができ、学生にとって有意義な講義となりました。

  • 相模女子大学客員教授、少子化ジャーナリスト 白河桃子氏
  • 講義風景

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