福田 守雄 先生(国土交通省大臣官房審議官(自動車局担当))の講義が行われました
2019. 06.26
- 現代産業論
2019年6月26日、2019年度「現代産業論」第8回の講義として、国土交通省大臣官房審議官(自動車局担当)の福田 守雄氏から「自動運転の実現に向けた道路運送車両に関する制度整備等について」と題して講義が行われました。
近年、自動運転技術は急速に進化・普及しており、早期の実用化に向けた様々な取り組みが行われています。自動運転の実用化により、交通事故の削減や高齢者等の移動支援、渋滞の解消・緩和、生産性の向上、国際競争力の強化への効果等が期待されており、国土交通省では産官学が連携して、各施策を推進しています。
2020年を目途に、レベル3以上の高度な自動運転を実現するという政府目標を達成するためには、安全基準や交通ルール等の多岐にわたる交通関連法規についての見直しが必要であり、自動運転システムを有する車両が満たすべき要件や、安全確保のための各種方策について検討していくことが求められます。今後、国土交通省としては、自動運転の実現に向け、最新の技術を用いて安全を確保しながら、それぞれの立場で後押ししていくと述べ、具体的な取り組みを挙げられました。
車両に関する安全基準の策定、制度整備については、自動運転に関する課題は世界共通であるという認識の下、引き続き世界各国と協力し、自動ハンドルやサイバーセキュリティ対策等の自動運転に係る国際基準の策定に向けて検討していきます。
また、設計・製造過程から使用過程にわたる総合的な安全確保策についてとりまとめた道路運送車両法の一部改正案が2019年5月の衆院本会議にて成立したことにより、自動運転技術をはじめとする先進技術を搭載した車両の安全性を確保するための措置、適切な完成検査の確保、自動車検査証電子化のための措置などが講じられています。
同じく、道路交通法の一部改正案の成立により、自動運転技術の実用化に対応した規定の整備(自動運転の定義等を明確化)、携帯電話使用等対策を図るための規定の整備(罰則の強化)が改正されたとお話しいただきました。
現在、新車の乗用車の8割弱に自動ブレーキが搭載されるようになったものの、高齢運転者による死亡事故が相次いで発生しており、国土交通省では交通事故防止対策の一環として「安全運転サポート車(サポカーS)」の普及啓発を推進しています。2020年までに、9割以上の新車の乗用車に自動ブレーキを搭載することを目標に掲げており、各自動車メーカーは、さまざまな先進安全技術を搭載した車を開発・販売することによって、安全運転をサポートしています。
最寄り駅等と最終目的地をラストマイル自動運転で結ぶ移動サービスの実現に向けては、経済産業省と連携し、車両技術の開発を推進しています。2020年の目標達成を目指し、車両技術の開発状況に応じて安全性を検証し、地域の特性や車両の種類に応じた実証実験を行っています。
2020年の実現を目指している地域限定での無人自動運転移動サービス(レベル4)については、旅客自動車運送事業者は、運転者が乗車しない場合でも従来と同等の安全性及び利便性を確保することが求められます。国土交通省では、運転者が乗車しない場合の輸送の安全及び旅客の利便を確保するための運行管理、整備管理等に係る遵守事項について、運送事業者等が自動運転車を事業に導入するための要件、手順等を示したガイドラインを策定しました。ただし、深刻な人手不足にあるバスやタクシー、トラック事業においては、自動運転やICT等の新技術の利用や普及が進み、これらへの期待は大きいところ、事業用での自動運転の開始には課題も残されており、実現に向けて取り組んでいるとの見解を述べられました。
近い将来、確実にやってくる完全な自動運転実現に向けては、技術的な観点からも、法律や施設など社会インフラの整備の観点からも、まだまだ多くの課題があります。自動運転の実現は、様々な問題の解決につながる期待が高く、今後も自動運転に関する技術開発や法整備、課題検討等の取り組みが必要です。すべての関係者が不断の努力を続け、安全で安心な自動運転の実現が期待されます。