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藤岡 高広 先生(愛知製鋼株式会社 代表取締役社長)の講義が行われました

藤岡 高広 先生(愛知製鋼株式会社 代表取締役社長)の講義が行われました

2019. 05.08

  • 現代産業論

 2019年5月8日、2019年度「現代産業論」 第2回の講義として、愛知製鋼株式会社 代表取締役社長 藤岡 高広氏から「100年に1度の変革期にも選ばれる会社となるために~素材でスマート社会に貢献~」と題して講義が行われました。
 今回の講師の藤岡氏は、信州大学工学部のOBで、現在「トヨタこまくさ会」(トヨタ系列の会社に勤める信大OBの同窓会)の会長もされています。同氏は、学生時代英語を猛勉強されたことから海外で働きたいと思うようになり、トヨタ自動車工業へ入社、在職の4割をアメリカやイギリスなど海外で勤務され、2011年から、トヨタグループの一員でグループ唯一の素材メーカーである愛知製鋼株式会社の代表取締役社長に就任されています。

 愛知製鋼株式会社は1940年の創業以来、創業者である豊田喜一郎氏の「よきクルマは、よきハガネから」という精神を受け継ぎ、「よき社会は、よき素材から」の現代のミッションへと発展させ、自動車産業のみならず産業機械や建設、医療、農業など、幅広い分野に向けて様々な素材を供給されています。基幹事業である特殊鋼・鍛造品の競争力強化に重点的に取り組まれ、また、時代の変化が求めるオンリーワン製品(ステンレス鋼や電磁品など)の開発、製造、販売の拡充により、世界中で選ばれる企業を目指して新しい分野にも積極的に挑戦しています。主力事業では、鉄スクラップを原料として特殊鋼や鍛造品に生まれ変わらせる資源循環型モノづくりを行っており、実際にどのような工程から製品が生み出されるのかビデオで紹介しながらお話しいただきました。

 次に、「100年に一度の大変革期」とされる自動車業界については、グローバル化が一層進むと同時に、次世代モビリティ社会化が進み、次世代車の比率が大きくなるなど、確実に変貌・変質が進むことが予想され、2030年以降には、広義の電動車(HV、PHV、FCV、EV)が主役になる時代が訪れるため、まずはこれらへの対応が急務だろうとお話しされました。
これからの100年に向けては、自動車産業の動向を示すキーワードである「CASE」(C:コネクティッド化、A:自動運転化、S:シェア・サービス化、E:電動化)や、世界のマーケットを変えたとされる「GAFA」(G:グーグル、A:アップル、F:フェイスブック、A:アマゾン)の参入などに象徴されるように、既存のビジネスモデルは大きく様変わりしていくため、他に負けない「競争力」がカギになると述べられました。

 価値ある企業として永続的に発展するためには、素材で新たなスマート社会を共創することで広く社会に貢献し続け、どんな環境にあっても、少しずつ木の年輪のように成長していく「年輪経営」が大事であると説明されました。そして、既存ビジネスの発想転換により、付加価値をつけて新たなビジネスを考えていく必要性を説かれ、「素材業のDNA」を活かした用途・商品開発と展開、新ビジネスの構想、すでに取り組まれている次世代事業具現化の事例を挙げられ、あらゆる可能性への挑戦を力強く語られました。
 なかでも、愛知製鋼の独自開発技術による「磁気マーカシステム」は、GPSの届きづらい山間地域やトンネル内、光学デバイスが不得手とする悪天候や夜間でも安定して自車位置を特定できる、将来に向けた有力な技術であり、他のシステムとの併用により自動運転の信頼性を高めることが可能であることを説明されました。この磁気マーカシステムを用いた実証実験を全国各地で積み重ねており、2018年には伊那市の道の駅「南アルプスむら長谷」でも実証実験が行われました。こうした各地での走行実験を経て、降雪地でも安定した検知性能が発揮されるなど、安心・安全な自動運転の実現や地域活性化への貢献が期待されています。

 最後に、「画竜点睛(がりょうてんせい)」「Connect the dots(点と点を繋ぐ)」という2つの言葉を御紹介され、数年後に社会へ出ていく学生に向けて期待のメッセージをいただき、学生との質疑応答に移りました。

  • 愛知製鋼(株) 代表取締役社長 藤岡高広氏
  • 講義風景

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