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さわき もとえい

澤木 幹栄

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国費留学生

私は国際交流委員会という長ったらしい学部内委員会の長をしている。これは留学生の受け入れやこちらから外国の交流協定大学への留学、留学生の生活などにまつわるいろいろなことを司っているもので、結構忙しい委員会なのである。
委員長をしていると今この学部に在籍している留学生の奨学金申請の順位付けなんていう仕事が回ってきたりする。そこで知りえたことと、ネットの世界でまことしやかに流通している噂があまりにも食い違っているので、ひとこと書いてみたくなった。
ネットの世界の噂とはこうである。日本に来ている留学生は私費であれ、国費であれ国から莫大な奨学金をもらっている。しかも返す必要のないお金であり、日本人の学生に比べて不当に優遇されているのではないか。

これは全くためにする噂であり、前半については「留学生全員が」ということだとしたら全く根拠がない。にもかかわらず、もっともらしい数字までついているので始末に悪い。
まず、国からお金をもらっているのに私費留学生とは変ではないか。それはともかく、国費留学生はどれくらいいるのか。この噂によれば国費留学生はやたらにいるようだが、そんなことはない。
国費留学生には二通りがある。出身国で選抜されるか、信州大学のように在学している大学で推薦を受けるかである。前者は大使館推薦と呼ばれるが多数の人が留学を希望するなかで選抜されることはどこの国でも容易なことではなく、それなりの質の学生が選ばれるようである。現在、人文学部には59名の留学生がいるが、そのなかで3人が大使館推薦の国費留学生である。それ以外には国費留学生はいない。人文学部は在籍している留学生のうちから候補者を推薦したが、結局選ばれなかったということである。大学全体に対して国費留学生の枠があり、その枠がたまたま人文学部に回ってこなかったのだ。
これだけ沢山の留学生がいれば、そのなかには日本人学生もかなわないような優れた学生がいることがある。そのような学生には返す必要のない奨学金を与えて、思う存分勉学に励んでもらいたい。それが長い目で見て国益につながるはずである。にもかかわらず、今のところわが学部には大学推薦の国費留学生がいないのである。
国費留学生というのはそれくらい珍しい存在なのであり、日本全体でも4000人程度しかいないらしい。
私費留学生に対しては学習奨励金が与えられる。これは月5万程度であり、生活費の足しにするくらいの金額でしかない。これも枠があってわが学部で受けているのはごく一部である。

返済の義務をともなわない奨学金はそうでない奨学金が当たり前の日本では奇異に見え、留学生が不当に優遇されているように見えるかもしれない。実際は逆で、奨学金は本来返ってくることを期待しないで与える金でなければならないし、本当に優秀な人に勉学の環境を保証するものでなければならない。教育ローンでしかないものに奨学金という名前をつけている日本の現状がおかしいのである。それに、返済を義務付けても留学生が母国に帰ったら所得水準の違いのために返済が不可能になることは十分ありえる。だから、留学生に返済を義務付けるのは現実的ではない。

上のような噂が出る下地として、日本人学生のなかにも経済的に困窮しているものが多数いる、あるいは多くの学生が困窮感を感じているということがあるだろう。日本人学生を見ていると出身家庭の収入で教育を受ける機会に大きな差が出てしまう今の状況は非常にまずいと思う。たとえば半額を返済すればいいもの、全く返済を要しないものなど返済の条件のゆるやかな奨学金を厳選した優秀な学生に与えることにしたらどうだろうか。
それともこれも嫉妬社会である日本では無理だろうか。

 

 

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