もりやま しんや
護山 真也
哲学・芸術論 教授
教員 BLOG
一覧を見る刊行『インド哲学の万華鏡』

編者・著者として携わった『インド哲学の万華鏡』(春秋社,2025年)が刊行されました。インド哲学は名前こそ知られているものの,その中身となると,一般向けの概説書に乏しい現状にあります。それでも最近では,赤松明彦『インド哲学10講』(岩波新書)や,ロイ・ペレット著/加藤隆宏訳『インド哲学入門』(ミネルヴァ書房)などが公刊されたことで,徐々に認知度が高まっているように思います。本書もまた,インド哲学の魅力を広く一般に伝える一助となれば,嬉しいかぎりです。
目次
はじめに 片岡啓
I 何が存在するのか?
第一章 ヴァイシェーシカ学派のカテゴリー論 岩崎陽一・日比真由美
第二章 サーンキヤ哲学の展開説は何を語っているのか 髙橋健二
第三章 「ある」ということ――説一切有部の場合 横山 剛
第四章 唯識学派の心一元論 早島 慧
第五章 ブラフマン一元論学派における現象世界の形成理論――映像説による主宰神・個我の成立 眞鍋智裕
第六章 シヴァ教の一元論 川尻洋平
II いかに認識するのか?
第七章 仏教認識論における知覚の定義とアポーハ論 護山真也
第八章 世界は多面的である――ジャイナ教の認識論と論理学 志賀浄邦
第九章 古典インドの情報理論――真偽の自律他律論題 志田泰盛
III いかに言表するのか?
第十章 文法学派における言葉と意味 川村悠人
第十一章 ミーマーンサー学派の言語哲学と行為論 斉藤 茜
第十二章 中観派における言語批判――その方法と目的 新作慶明
コメント 哲学東西対話2.0 β版 出口康夫
これまたあまり知られていないことかもしれませんが,日本のインド哲学研究は世界的に見て,非常に高い水準にあります。本書の執筆陣には若手・中堅の研究者が顔をそろえていますが,彼らはいずれも各々の専門領域を牽引する中心的存在です。その多くは文献学・思想史研究を主たるフィールドとする人たちですが,今回はあえて「哲学」というところにこだわって,インド「哲学」の世界を紹介してもらいました。
特に一般にまだ知られていない領域(カシミール・シヴァ教やミーマーンサー学派など)の議論を収めることができたのは,貴重な成果だと思います。また今回,哲学者の出口康夫氏に参画いただき,インド哲学と哲学との交流が果たされたことは,大きな収穫でした。
万華鏡を覗くような感じで,インド哲学の多彩な世界をご覧いただければ幸いです。