もりやま しんや
護山 真也
哲学・芸術論 教授
教員 BLOG
一覧を見る中観ワークショップ(信州大学)
中観ワークショップ
6月22日(土),23日(日)の二日間,信州大学人文学部・人文ホールにおいて,中観ワークショップが開催されました。 中観ワークショップとは,インド大乗仏教のなかで空の思想を確立したナーガールジュナ(龍樹)の後継者たちの学統である中観派の文献や思想,思想史を研究する若手研究者を中心に行われている研究会です。11年目になる今年は,このワークショップの設立者の一人であり,若くして亡くなられた赤羽律博士のご出身が長野県ということもあり,信州大学で開催されることになりました。約30名ほどの研究者が全国,そして韓国から参加し,有意義な議論が重ねられました。
プログラム
6月22日(土)
11:00 開催挨拶・参加者自己紹介・近況報告
研究発表:桂紹隆(龍谷大学)
「槻木裕著『疾駆する馬上の龍樹』書評」
12:30 昼休憩
14:00 研究発表:Ham Hyoung Seok(Chonnam National University)
“Jñānagarbha's Making of Yogācāra-Madhyamaka.”
研究発表:小坂有弘(大正大学)
「煩悩が生じる原因に関する諸説:『中論』第23章に示される見解とその展開」
研究発表:Kim Taewoo(University of Hamburg)
“’Ba’-ra-ba rGyal-mtshan-dpal-bzang’s (1310-1391) Interpretation of Buddha-Nature
Doctrine: An Examination of a Tibetan Svātantrika-Madhyamaka Proponent’s
Interpretation.”
研究発表:田村昌己(香川高等専門学校)
「漢訳『般若灯論』における推論式説明:その特徴と問題点」
17:30 終了
19:00 懇親会
6 月23日(日)
10:00 研究発表:矢ノ下智也(駒澤大学)
「無間業の浄化をめぐるガワンタシの見解:阿闍世王は地獄へ転生するのか?」
研究発表:西山亮(四天王寺大学)
「ジュニャーナガルバの『二諦分別論』の内容概観と研究状況」
テキスト講読:ジュニャーナガルバ著『二諦分別論』
12:00 昼休憩
13:30 テキスト講読:ジュニャーナガルバ著『二諦分別論』
報告

初日の桂先生のご発表には,書評の対象である槻木先生もご参加されており,フロアから参加の三谷尚澄先生のご質問・コメントを皮切りに,仏教における矛盾の意味,文献学と論理研究との関係性などをめぐって意見のやりとりがなされました。
二日目には,赤羽博士の遺稿であるジュニャーナガルバの『二諦分別論』の翻訳を中心に,「勝義」の定義をめぐるテキストの解読と議論が重ねられました。冒頭箇所を見るかぎり,彼は,ダルマキールティの議論を受けながら,先行するバーヴィヴェーカよりも一歩踏み込んだ形で,「正理に基づく知」を「勝義=優れた目的」と捉えているようであり,ヨーガ行者の直観との関連からも興味深いところです。
今回,中観ワークショップ開催の声をかけてくれた田村昌己さんをはじめとする関係者各位,また,手伝いをしてくれた大学院生のみなさんに感謝いたします。なお,このワークショップは,以下の主催・共催で行われました。
主催:
中観派ワークショップ2023運営委員会
田村昌己(香川高等専門学校講師)
小坂有弘(大正大学日本学術振興会特別研究員PD)
矢ノ下智也(駒澤大学日本学術振興会特別研究員PD)
林玄海(龍谷大学非常勤講師)
共催:
科学研究費:若手研究(課題番号:21K12839)
「漢文資料を通じて見る『般若灯論』の成立と伝承:漢訳のテキスト校訂と再評価の
試み」研究代表者:田村昌己(香川高等専門学校講師)
科学研究費:特別研究員奨励費(課題番号:23KJ1937)
「インド中観派における二諦解釈史の構築」
研究代表者:小坂有弘(大正大学日本学術振興会特別研究員PD)
科学研究費:基盤研究(B)(課題番号:23K21877)
「後期インド仏教認識論における哲学と宗教:『認識論評釈荘厳』の総合的研究」
研究代表者:護山真也(信州大学教授)