教員紹介

もりやま しんや

護山 真也

哲学・芸術論 教授

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クラクフからウィーンへ 

クラクフにて

 11/15-19の期間,ポーランドのクラクフとオーストリアのウィーンへ講演および国際シンポジウム出席をしてきました。これまでヨーロッパの様々な国を旅したことがありますが,ポーランドは未踏の国だったので,貴重な経験になりました。戦争の記憶などから,暗いイメージを勝手にもっていましたが,豊かな自然と石畳の風情ある街並みの調和が美しい,本当に素敵なところでした。  この地を訪れることができたのは,昨年,船津先生の紹介でヤギェボ大学からお呼びすることができたCezari Galewicz先生のご好意によるものです。ヨーロッパで二番目に古い歴史をもつヤギェボ大学にて,"Prajñākaragupta and Jñānaśrīmitra on the reliability of yogic perception" の講演をさせていただきました。チベット仏教の専門家からヴェーダーンタ思想の専門家,そして東アジア仏教の専門家であるJakob Zamorskti先生などに聴講いただきました。  講演を終えて,世界遺産でもあるクラクフ旧市街のなかのレストランで遅い昼食をご馳走になりました。外に出ると夕方の4時ですでに真っ暗です。中央広場では,もうすぐはじまるクリスマス市の準備が進められていました。  Jakubさんの奥さんが言うには,「ポーランド人は笑わないのが特徴」とのととでした。どっかのラグビー選手みたいです。そう言われてみれば,街の人たちは真面目そうな顔をした人が多いような気もしてきます。ただし,Cezari先生は冗談ばかりで,研究所の皆さんもその冗談に笑いころげてましたので,この特徴があてはまらない場所もあるみたいです。

アウシュヴィッツにて

 今回,クラクフは「ポーランドの京都」とも言われ,その街自体が魅力的なところですが,この街が有名なのにはもう一つ理由があります。それは,この街がアウシュヴィッツ行きバスの出発地であるからです。クラクフの西部,バスで1時間半ほど行ったところに,ナチス・ドイツによるユダヤ人他の大量虐殺の歴史を残したオシフィエンチムの街があります。  バスは,ヨーロッパ各地からアウシュヴィッツを訪れる観光客で満席。バスが到着した先に,アウシュヴィッツ博物館がありますが,その入り口付近にはさらに大量の観光客が押し寄せていました。強制収容所の跡地である,悲惨な歴史を残した博物館は,グループ・ツアーで回らなければなりません。そのために,事前の予約が必要です。私は日本を発つ前に予約できたのが,唯一,ドイツ語のツアーだったので,そこに参加しました。ツアー・ガイドのおばさんが,静かな口調で,ここで起きた出来事とその痕跡のことを解説してくれました。  強制収容所には,ヨーロッパ全土から,ユダヤ人,同性愛者・ジブシー・社会主義者が送り込まれ,男女別々の列に分けられ,身ぐるみ剥がされたとのこと。遺品である膨大な量の靴,毒ガスの空き缶,子供服,義足,そして髪の毛の山々…。冬にはマイナス20度を越える極寒のなか,濡れた地面のうえに置かれた三段ベッドに折り重なるように詰め込まれた人々の苦しみ。ヴィクトール・フランクルが『夜と霧』で報告した非人道的な強制収容所での生活があまりにもリアルに想像できてしまう場所でした。  この日は快晴。しかし,青空の下に広がるビルケナウ強制収容所の建物は,なんとももの悲しいものがありました。最後にガイドさんが「アウシュヴィッツの歴史を知る人は多いでしょう。けれども,アウシュヴィッツを訪れることは簡単ではありません。皆さん,遠い旅路でここまでやって来られました。ここを実際に見ることが本当に大切なことなのです。同じ過ちを繰り返さないために,何度でも,また機会があれば,また訪れてもらいたい」と語って言葉が印象的です。  グループのドイツ人たちは,若者から老人まで様々でした。彼らは,こうして歴史を学び,その反省を受け止めようとしています。翻って,日本人である私たちが,歴史を学び,その遺産を語り継ぐためにどれだけの努力をしているのか…いろいろと考えさせられました。

ウィーンにて

 11/18-19には,日本オーストリア交流150周年,日本とオーストリアの学術交流がはじまってから60周年にあたる記念として,シンポジウム “Philology, Philosophy and the History of Buddhism”が開催されました。ウィーン大学のキャンパスの中で,留学時代にお世話になった先生・同僚・友人の皆さんと再会することができました。特に,ウィーン大学の仏教学を代表するシュタインケルナー先生とお会いできたことは,嬉しいかぎりでした。80歳を越えられてもなお,先生の学問的情熱は消えることなく,旺盛な研究活動を続けられています。今回も,ダルマキールティの『関係の考察』の梵文テキストに関する刺激的な発表をなされていました。日本からは,桂紹隆先生をはじめ,苫米地等流,久間泰賢,室屋安孝,加納和雄,渡辺俊和,酒井真道,石田尚敬,熊谷誠慈といったウィーン大学の仏教学と関連の深い面々がそれぞれの研究プロジェクトや研究成果を発表。実りあるシンポジウムでした。企画責任者であるBrigit Kellner教授に感謝です。  ちょうどウィーンでは,クリスマス市がはじまったばかりで,市庁舎前は美しく飾られた出店で賑わっていました。グリューワインをおいしくいただきました。

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