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研究

川端康成『高原』(1937-39)

『高原』というテクスト

単行本『高原』、装幀は堀辰雄

川端康成に『高原』という小説があります。 各誌に断片的に書きついできた『雪国』(1937)を、創元社版としてひとまずまとめた後、やはり下記のように書きつがれ、『川端康成選集 第九巻』(1939)において『高原』としてまとめられました。 「高原」(『文芸春秋』1937・11) 「風土記」(『改造』1937・11) 「高原」(『日本評論』1938・12) 「初秋高原」(『改造』1939・10) 「樅の家」(『公論』1939・12) 『高原』の舞台は、軽井沢ですが、興味深いのはその地理的条件に重ねられた歴史的条件です。というのも、この小説には、「支那事変」が単なる背景としてではなく、主要登場人物に直接関わるかたちで書き込まれているのです。もちろん、軽井沢は戦場ではありませんので、「銃後小説」ということになるのですが、もう1つ興味深いのは、3年にわたる執筆期間であるにも関わらず、作品内の時間は、初夏から秋へと動く程度なのです。つまり、当時の読者からしてみれば、進行中の事変に、遅れるように書きつがれ、発表されたのが『高原』ということになるのです。 というのが、ごく大雑把に捉えた『高原』というテクストの特質ということになるかと思うのですが、目下、昭和10年代の文学場について研究を進めている私にとって『高原』は実に興味深い研究対象といえます。『高原』が、進行する事変、変容する文学場の中で、その都度、どのように受容されていったのか、──こうした検証を通じて、昭和10年代、こと日中戦争開戦後の文学場について何かしら新たな知見が得られるのではないか、という見通しに即して、現在、研究を進めています。 その成果の端緒については、下記学会で発表することになりました。

立教大学日本文学会

期日:2014年7月5日(土) ※12:30受付開始 場所:立教大学池袋キャンパス 5号館5322教室 ◇研究発表 13:00~16:15 「風化」についての考察   胡 新祥(後期課程1年) 光源氏の「たぐひなし」および「ありがたし」から見る紫の上  泉屋咲月(後期課程1年) 『源氏物語』松風巻に見られる『日本書紀』引用 大竹明香(後期課程1年) 『逸著聞集』に見る中世説話集の受容と再生 長谷川奈央(後期課程1年) 月ヶ瀬観梅紀行文における美辞麗句表現――トレース表現と美辞麗句――  湯本優希(後期課程1年) 映画「君たちがいて僕がいた」の批評性~『青い山脈』の系譜~  千野暁生(後期課程1年) 川端康成「高原」連作から考える文学場一面  松本和也(信州大学) ◇講演 16:30~17:30 石崎 等 氏 「漱石と落語」

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