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はやさか としひろ

早坂 俊廣

哲学・芸術論 教授

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ベリングキャット

副題は「デジタルハンター、国家の嘘を暴く」となっています。「デジタルハンター」というとずいぶん仰々しいですが、基本的にはインターネット上で公開されているオープンソースを駆使し、様々な事件を徹底的に調査する集団のことのようです。大手メディアに属するわけでもなく、専門的な「スパイ」でもない、ある意味で「ふつうの市井の人々」が国境を越えて協力し、例えばYouTubeに移った戦車の画象から、それがどういうタイプのものでいつどこで撮影されたものなのかを解明していき、あるいはSNSの投稿をもとにして諜報機関の工作員の活動の詳細を明らかにしていき、それが結果として「国家の嘘を暴く」ことになっていくのです。著者のエリオット・ヒギンズ氏は、この調査集団「ベリングキャット」の創設者で、2019年には「世界最高の思想家50人」の一人に選ばれたとのことです。「OSINT(Open Source Intelligence)」に関する新聞記事をきっかけに、この本の存在を知り、取り寄せて読んでみました。「猫の首に鈴をつけようとする」人々の活躍ぶりそれ自体がとても興味深く、考えさせられましたが、個人的には、自分がシリア内戦についてあまりに無知であったことを痛感させられました。少し前に読み終えた本ですが、当地を襲った大地震の報道を見て、この本のことを思い出しました。ロシアによるウクライナ侵攻も一年になろうとしています。世界の今を知るためにもお勧めの一冊です。

エリオット・ヒギンズ『ベリングキャット ―デジタルハンター、国家の嘘を暴く』(安原和見訳、筑摩書房、2022年3月30日刊)

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