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はやさか としひろ

早坂 俊廣

哲学・芸術論 教授

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ざれごと

測りすぎ なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?

Nさんへ

 先日、仕事に関する立ち話のついでにお勧めの本を聞かれましたよね。その時は、「お勧めっていうか、気になる本はあるんだけど・・・」とモゴモゴ言って誤魔化してしまいましたが、その「気になる本」を取り寄せ、やっと読了しました。ジェリー・Z・ミュラー著『測りすぎ なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』(みすず書房)です。ぜひお読みください。

 「世の中には、測定できるものがある。測定するに値するものもある。だが測定できるものが必ずしも測定に値するものだとは限らない。測定のコストは、そのメリットよりも大きくなってしまうかもしれない。測定されるものは、実際に知りたいこととはなんの関係もないかもしれない。あるいは、本当に注力するべきことから労力を奪ってしまうかもしれない。そして測定は、ゆがんだ知識を提供するかもしれない―確実に見えるが、実際には不正な知識を。」
 「私たちは測定された説明責任の時代、測定された実績に対する報酬の時代に生きており、「透明性」を通じてそれらの測定基準を公表するという美徳を信じている。だが、説明責任を測定基準や透明性と同一視するのは間違っている。」
 「測定基準への執着は、実績を測定し、公開し、報酬を与えなければいけないという、一見避けようのないプレッシャーからくるものだ。だが、それが実はあまりうまくいかないという証拠は突きつけられている。」

ざっと同書の「はじめに」から抜き出してみましたが、如何でしょう。実に当たり前のことが書いてあると思いませんか。本書では、「測定基準への執着」が組織にどれだけの機能不全と不正をもたらしているかについて、様々な事例をもとに論じられています。そりゃあ、数値指標で自分のパフォーマンスが評価されるとなれば、その数値に行動を寄せていったり、行動よりも数値のほうを変えてしまおうと思うのが人情ってものですよね。実に当たり前の道理ですが、その「当たり前」が通じないのが今の世です。Nさんにはこの本をお勧めしますが、本当に読ませたい相手に勧められないのが残念でなりません。だって、こんな本を勧めたら、私の評価が下がってしまいますからね(笑)。読んだら、こっそり感想を聞かせてください。

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