人文学部からのお知らせ

【卒業生・修了生へ】~祝辞~

祝 辞



 まさかこのような形で皆さんに卒業・修了のお祝いを申し上げることになるとは、思ってもみませんでした。ただ、このような形のほうが、皆さんへの祝意を何度でも繰り返しお伝えできるとも言えます。そのように気持ちを切り替え、より一層心をこめて、祝辞を述べたいと思います。


 さて、改めまして、ご卒業ご修了おめでとうございます。皆さんは、信州大学人文学部もしくは人文科学研究科の課程を無事終えることができました。これは、とてもめでたいことであり、誇るべきことであります。ただ、この「定められた課程を修了した」ということに加えて、もう一つ、今ここで確認したいことがあります。


 2019年のNHK大河ドラマ「いだてん」は、何かと批判を受けたドラマでしたが、実は大変よく出来た傑作でした。その中に、忘れられないセリフがあります。主人公が発した「いまの日本は、あなたが世界に見せたい日本ですか?」というセリフです。これに倣って、皆さんに問うてみたいと思います。



―いまのあなたは、あなたが誰かに見せたいあなたですか?―


 


答えは人それぞれでしょう。具体的に誰かの顔が思い浮かんだ人は、とても幸せなことです。どうか、決してその人を裏切ることなく、その人の顔を常に思い浮かべながら、これからの人生を歩んでいってください。もしかしたら、この問いかけを聞いて、「誰にも見せたくない」と俯いてしまった人もいるかも知れません。もちろん、それでもかまいません。ただ、そういう人でも、少なくとも「あなた自身に見せたいあなた」でいてほしいと、私は願っています。別に「リア充」を目指してくださいと言っているわけではありません。ただ、自らに恥じることのない人生を歩んでいただきたいと願うばかりです。


ここでもう一つ、別のドラマのセリフを紹介したいと思います。こちらは、たまたま見かけた、NHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」のセリフです。この作品はこの回しか観ていないので、本当に偶然知った言葉なのですが、教師の端くれとしてその意味を何度もかみしめている言葉です。それは、卒業式のシーンでした。外国人の校長先生が、おおむね以下のような祝辞を述べたのです。



―今から何十年後かに、あなた方がこの学校生活を思い出して、あの時代が一番幸せだった、楽しかったと心の底から感じるのなら、私はこの学校の教育が失敗だったと言わなければなりません。―



なぜ、「失敗だった」ことになるのでしょうか? 校長先生は続けてこう述べました。



―最上なものは過去にあるのではなく、将来にあります。―



とてもよい言葉だと思いませんか。私たち教師は、この「将来」のために、これまで皆さんと月日を共にしてきたのです。


皆さんは、本日無事に卒業・修了されました。しかし、皆さんにとっての「最上のもの」は、今この瞬間ではなく、「将来」にこそあるはずです。なぜなら、信州大学人文学部や人文科学研究科の教育が失敗であるわけがないからです。そうであるならば、今のあなたが「誰かに見せたいあなた」であるのかどうか、それは実は大きな問題ではないのかも知れません。将来、あなたは「最上のもの」を手に入れて、「あなた自身に見せたいあなた」「あなたの大切な人に見せたいあなた」になってくれることでしょう。何年後でもかまいません。そんな「あなた」を見せに、再びこのキャンパスを訪れてくれたならば、我々教職員にとって、それに勝る幸せはありません。


信州大学人文学部・人文科学研究科の教育が大成功を収め、こんな素敵な「将来」が皆さんを待ってくれていることを確信し、もう一度、この言葉を述べて、祝辞を終えたいと思います。



皆さん、ご卒業ご修了、本当におめでとうございます。





2020年3月21日



信州大学人文学部長


信州大学大学院人文科学研究科長



早坂 俊廣


祝辞(2019年度卒業祝賀会の中止をうけて).pdf

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