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高大連携哲学演習「AIと倫理」

2025年7月19日開催

2025年7月22日更新

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イベント概要

高校生と大学生が一緒になり,哲学的問題について対話を行う企画です。今回は,「AIと倫理」という題目で対話を行います。

開催日 2025年7月19日
時間 12:00-13:50
会場 信州大学人文学部212番教室
参加料金 無料
参加者数及び内訳

信州大学(14名)

人文・理学・繊維学部(4年生:2名,3年生:2名,2年生:8名,1年生:2名)

松本県ケ丘高校(13名)

長野吉田高校(2名)

オープンキャンパス参加高校生(15名※当日参加ふくむ)

イベントレポート

 今年度の高大連演習は,人文学部オープンキャンパスと連動して「AIと倫理」というタイトルで開催されました。AI(人口知能)をめぐっては,近年,急速に私たちの生活のなかに浸透し,身近な存在になりつつある半面,その技術的発展が自分たちの未来をどのように変えていくのか,見通せない現状にあります。とりわけAIと人間とが今どのような関係性を築きつつあるのか,その根本にある新しい時代の人間観や倫理の問題を一緒に考えてみよう,というのがこの企画の趣旨です。

 幸い,出口康夫『AI親友論』(徳間書店,2023年)に大事な論点が整理されていますので,そのなかの自由をめぐる議論に焦点をあてながら,松本県ケ丘高校の高校生グループと信州大学人文学部哲学芸術論コースの2年生グループにそれぞれ議論の土台となる発表をお願いしました。

 高校生グループ(2年生:駒形さん,佐藤さん,渡邊さん,田中さん)は,今回の企画のための話し合いの風景をスライドで示しながら,高校生が今,どのようにChat GPTを活用しているのか,という利用の実態調査からはじめ,人間同士の会話とChatGPTとの会話とにはどのような違いがあるのか,もしAIが道徳的に「良い」存在だとすれば,すべてをAIにゆだねる社会の方が平和になるのではないか,という問いかけを出してくれました。

 一方,大学生グループ(2年生:横田さん,澤山さん,大西さん,GANさん,下村さん,上原さん)は,『AI親友論』の記述を参考にしながら,人間とAIとの関係性を主人―奴隷関係でとらえる欧米型の発想に対して,AIを自分たちの仲間として認めていく見方ができるのではないか,という点から説き起こし,人間にだけ自由を認める主人―奴隷型の見方とは異なり,仲間としての見方を取る場合には,人間とAI双方にゆるやかな自由が認められるような形で「自由」の捉え方を変えていく必要があること,そして,そのためには,「自律的な行為者」としての人間の見方を変え,AIをふくめた様々な存在と共同的・協調的な行為を行うマルチ・エージェンシーの観点から人間を位置づけなおすことが必要だと主張しました。そして,「日常的にAIを通した情報にさらされる我々はどの程度〈自由〉と言えるのか」「倫理とは〈仲間の理〉であるが,仲間のうちにAIを入れてよいのか」という問題提起が出されました。

 以後,6グループに分かれて,高校生・大学生が発表で出された問題をめぐって,自由闊達な討議を行いました。各グループとも,お互いの意見に耳を傾けながら,時に考ええ込み,時に熱く語りながら,活き活きと対話をしている様子でした。いただいた感想をいくつか紹介します。

・大学生や高校生とのディスカッションを通して、自分には無かった視点を通した考えを沢山聞けて、今までとは違う視点で問題に対して考えてみることができたと思います。もっと話していたいと感じるほど、面白くて有意義な時間でした。(高校生)

・高校生の発表に感心した。高校生は、AIは機械にすぎないと考えていたようだが,そこに新たな視点を入れられるとよかったのかなと思った。(大学生)

・大学生の皆さんの言語化能力が高く、頭の中のなんとなくなイメージを自分の中でも言葉に落とし込みながら話すことが出来て、とても楽しかった。(高校生)

・私は初めは楽しめるか少し不安でした。でも、先輩たちがたくさん話題を振ってくれたり、みんな優しく話を聞いてくれたりしたので、自分からも話し合いに積極的に参加することが出来ました。(高校生)

 参加者それぞれが,この問題をさらに深めながら,自己内対話や他者との対話を重ねてくれることを願っています。

 ご協力いただいた壬生花菜先生(松本県ケ丘高校),川住賢太先生(元長野吉田高校),三谷尚澄先生(信州大学人文学部)に感謝申し上げます。

(報告文責:護山真也)

<演習の様子>

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