20190520中国語サロン 「いつやるの? 今でしょ!」をどう訳すか

この日の中国語サロンは8名参加でした。
最近中国語の学習を始めた学生のKさんが「いつやるの? 今でしょ!」って中国語ではどう言うんですか?と質問してきました。2013年の流行語になったことでもお馴染みのフレーズですが、Kさんが試しに翻訳してみたのが“什么时候实行? 现在吧!”という形。先ず「いつやるの?」の動詞ですが、“实行shi2xing2”はどうにも硬い表現。“什么时候开始?”の方がすっきりして分かりやすいですよねえと同席のネイティブ非常勤講師L先生に確認したところ、確かにこの場合は“开始kai1shi3”の方が分かりやすいという回答でした。そして「今でしょ!」を“现在吧!”にすると、これもニュアンスがどうにも食い違う感じ。日本語の「~でしょう」に相当する言い回しとして、中国語の文末助詞“~吧 ba”が初級段階で登場するのですが、“吧”はちょうどクッションのように文全体を柔らかい語気で包んで勧誘や推察などに多用するものですから、「今でしょ!」という「分かり切ったことだと聞き手に向かって断言してみせる」ニュアンスとはずれを感じます。再びL先生に“就是现在!”とかだとどうです?と尋ねてみると、“当然是现在!”“就是现在!”という訳し方が分かりやすいでしょうねという答でした。日本語の「~でしょう」は推察の柔らかい語気にも使いますが、分かり切った当然だという語気でも使用することが可能です(その際には「~でしょう→~でしょ!」と末尾の発音が若干変わるでしょうが)。しかし中国語の“吧”は後者は守備範囲になく、副詞“当然”などを使ってカバーするわけです。
外国語の翻訳・作文では、母国語の言い回しに囚われすぎてしまうと、狙い通りの意味合い・ニュアンスが出てくれないことがままあります。もちろん最初から外国語で発想し文を組み立てるのが理想ではありますが、なかなかそのレベルに達するのは難しいことですので、先ず言いたい内容の極おおまかな骨格を母国語で考えて、そこに外国語で目指す内容ニュアンスを持つ表現で肉付けしていく、その匙加減が大事だろうなと常に感じます。真面目な性格の人ほど、母国語で自分が考えているのと極力同じ意味・ニュアンスを保ったまま外国語で発信したいと願う余り、逆に母国語に囚われてしまうジレンマがあるものです。
◎中国語サロンは毎週月曜昼休み(12:10~13:00)、信大人文ホールの西側隅っこで開催しています。些細な質問でも中国語の宿題でも、中国語ネイティブの方に尋ねてみたいことがあればお気軽にどうぞ。