霜柱による侵食土砂量の予測モデルに関する研究成果が「砂防学会誌」に掲載されました
流域保全学研究室(信州大学農学部)に所属していた中沢勇真さん(2024年度卒業)の、霜柱による侵食土砂量の予測モデルに関する研究成果が、公益社団法人砂防学会が発行する学術誌『砂防学会誌』第78巻第2号(2025年7月15日発行)に掲載されました。
流域における土砂の生産は、降雨をはじめ、地震、火山噴火、融雪、凍結・融解など、さまざまな自然現象によって引き起こされます。このうち、斜面崩壊などのマスムーブメント(岩石や土壌が重力によって移動する現象)は、規模が大きいものの発生頻度は低く、局地的に発生します。一方、凍結・融解による土砂生産は、最低気温が0℃を下回る地域では日常的に発生し、一度の規模は小さいものの土砂動態に与える影響は無視できません。
本研究では、屋外実験斜面(写真)において霜柱の形成と融解の過程、およびそれに伴う侵食土砂量を詳細に観測しました。その結果をもとに、霜柱による土砂生産量を、気温と降雨量という基本的な気象データのみを用いて簡便に予測できるモデルを構築しました。
森林の伐採地や崩壊跡地、林道の法面、登山道のような、植生や落葉に覆われていない裸地では、凍結・融解によって表土が不安定になり、侵食が促進されます。これにより植生の回復が妨げられ、土壌流出のリスクが高まることが知られています。本研究で提案された予測モデルは、少ない入力データで凍結・融解による土砂生産量を評価できるため、こうした裸地における表土の保全や対策の立案に活用されることが期待されます。
◎掲載論文情報
論文タイトル:裸地斜面における霜柱に起因した土砂生産の簡易モデル化
掲載誌:砂防学会誌 第78巻第2号(2025年7月15日発行)pp.25-32
著者名:中沢勇真 1、福山泰治郎 2、堤大三 2
著者所属:1信州大学農学部森林・環境共生学コース(当時)、2信州大学学術研究院(農学系)