大学院総合理工学研究科生命医工学専攻2年の工藤健央さんが令和3年度日本植物病理学会大会で学生優秀発表賞を受賞
2021年3月17日~3月19日に、オンラインで開催された日本植物病理学会大会において、微生物植物相互作用学研究室の工藤健央さん(受賞当時、修士課程1年)が「学生優秀発表賞」を受賞しました。
植物病原糸状菌である炭疽病菌やイネいもち病菌が植物に侵入する際、感染器官(付着器)のメラニン化が必須であることは、植物病理学分野における38年来の定説となっています。この定説に基づき、農薬の中には付着器のメラニン化阻害を作用機序とするものも存在します。本研究では、植物への侵入が付着器のメラニン化に依存しない、つまり、従来の定説を覆す炭疽病菌を複数同定することに成功しました。コスモスおよびサクラから分離されたこれら新奇炭疽病菌はメラニン化していない付着器からも宿主植物に侵入することができ、壊死病斑を形成します。コスモス炭疽病菌の特性を詳細に解析した結果、植物への侵入に関与する付着器の様々な機能が、メラニン化を阻害しても維持されているため、植物へ侵入できることが分かりました。以上より、メラニン化阻害剤を主成分とする農薬では、植物への侵入を阻止できない炭疽病菌が複数存在することを明らかにしました。
今回の受賞は、植物病理学の教科書に記載された定説に捉われることなく、同定した新奇炭疽病菌の研究を進め、通説をくつがえす成果を得た点が評価されました。
「付着器のメラニン化に依存せず植物に侵入できる炭疽病菌の特性解析」
〇工藤健央1,武末和穂2,入枝泰樹3
(1信州大学大学院総合理工学研究科生命医工学専攻,2信州大学農学部,3信州大学学術研究院農学系)