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河原岳志准教授が国産ハーブクロモジの抗インフルエンザウイルス作用メカニズムを解明

研究

培養細胞へのインフルエンザウイルスの感染と同時にクロモジエキスを培地中に添加し、6時間後のウイルスタンパク質(NP)発現を免疫蛍光染色法により観察した。エキス添加により発現の顕著な低下が観察された。
培養細胞へのインフルエンザウイルスの感染と同時にクロモジエキスを培地中に添加し、6時間後のウイルスタンパク質(NP)発現を免疫蛍光染色法により観察した。エキス添加により発現の顕著な低下が観察された。

2020年10月28日 <研究>

信州大学学術研究院(農学系)河原岳志准教授と養命酒製造株式会社の研究グループによる国産ハーブのクロモジの熱水抽出エキスの抗インフルエンザウイルス作用についての共同研究により、クロモジエキスがインフルエンザウイルスの標的細胞に作用して、ウイルスの吸着と侵入過程をブロックすることが明らかになりました。

クロモジは、日本の山地に自生するクスノキ科の落葉低木で、リラックス作用が期待されるリナロールを主成分とする芳香があり、古くから楊枝や香木、生薬(烏樟:うしょう)として使われています。

今回、河原岳志准教授と養命酒製造株式会社の共同研究グループは、インフルエンザウイルスの増殖サイクルにおけるクロモジエキスの作用点の解明に向けた検討を行いました。具体的には培養細胞へのウイルス感染前後の各時間帯にクロモジエキスを作用させる経時的観察や、ウイルスのエンドサイトーシスを制御する温度シフト試験、ウイルス感染後の構成タンパク質の免疫染色による発現解析、ニワトリ赤血球を用いたウイルス吸着阻害能評価試験、ウイルス侵入過程に重要な培養細胞のエンドソームpH低下の抑制観察を行い、総合的に評価しました。その結果、クロモジエキスはウイルス感染が成立する初期段階である吸着と侵入の過程を抑制することを明らかにしました。

クロモジエキスは培養細胞系への添加直後においてもインフルエンザウイルスの細胞への吸着抑制がみられることから、活性成分と分子ターゲットの解明が期待されます。クロモジエキスは食品原料として、日常的に利用できる素材です。今回明らかになったクロモジエキスの感染抑制における作用点から、クロモジエキスは標的細胞のリソースがインフルエンザウイルスに利用される前に感染成立を阻止する働きが期待できると考えられます。

本研究成果は、『薬理と治療』(2020年48巻8号)に掲載されています。

詳しい研究内容については以下をご覧ください。

http://www.pieronline.jp/content/article/0386-3603/48080/1357

クロモジ熱水抽出物のインフルエンザウイルス感染抑制メカニズムの検討

河原 岳志1)、芦部 文一朗1,2)、松見 繁2)、丸山 徹也2)

1) 信州大学農学部、2) 養命酒製造株式会社 商品開発センター

Jpn Pharmacol Ther, 2020, 48(8)1357-71.

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