令和7年度「木材工学演習」を実施しました
1.演習名
「木材工学演習」
2.実習目的
各種の木材加工の道具・機械を用いて演習林のヒノキ間伐材を加工し、一定の構造物を作製する。そして、基礎的な木材加工技術を修得するとともに、樹木が生命活動によって生産する生物材料である木材の構造と性質について理解することを目指す。
3.実施日
令和7年9月2日(火)~9月5日(金)
4.実施場所
農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
構内ステーション
5.担当教員
細尾佳宏准教授、末定拓時助教
6.参加人数
5名
7.概要
【1日目】
初めに開講式を行い、続いて安全講習を行った後、木材の構造と性質についての講義を行った。次に、木工機械の説明を行った後、製材機を使用した製材デモンストレーションを行い、その中で材の完満度、歩留りなど、演習で使用する丸太について説明を行った。その後、作製する構造物(机)の説明を行った。今年度は、手良沢山演習林で間伐されたヒノキから製材した心持ち正角材と板材に加えて、松本キャンパスで伐採されたヒマラヤスギから製材した板材も使用することとした。作製物の説明後、過去の受講生が作製した机を見学し、必要に応じて机の採寸を行った。そして、心持ち正角材と板材に残っていた樹皮を除去する皮むきの作業を行い、皮むきした各材料の自動かんな盤加工を行った。この自動かんな盤加工を行った材料を用いて、机を作製することとした。その後、机の図面を作成し、1日目の演習を終了した。
【2日目】
まず、1日目に作成した机の図面をもとに木取図を作成した。次に、手道具の説明を行った後、作成した木取図を用いて天板、脚部などの各部材の木取作業を行った。続いて、スライド丸鋸とパネルソーの説明を行い、実際にそれらを使用して正角材と板材を各部材に切り分けた。その後、鋸、インパクトドライバー、木工用ドリル、鑿を用いて仕口の加工を行った。各部材への切り分けはすべて終わったが、仕口の加工は終わらなかったため、3日目に続きを行うこととし、2日目の演習を終了した。
【3日目】
2日目に引き続き、鋸、インパクトドライバー、木工用ドリル、鑿を用いて仕口の加工を行った。そして、接合部分の調整を行った後、脚部と天板の仮組を行った。次に、電動工具の説明を行った後、ランダムサンダー、ミニサンダーを用いて各部材の仕上げを行った。その後、インパクトドライバー、木工用ドリル、下穴錐、コーススレッドなどを用いて脚部の組み立てを行った。脚部の組み立て後、同じ道具を用いて天板の取り付けを行い、3日目の演習を終了した。3日目にしてほぼ完成形ができ、良好な進行状況となった。
【4日目】
まず、ランダムサンダー、ミニサンダーを用いて、前日に組み立てが終了した机の最終的な仕上げ作業を行った。続いて、塗装工程の説明を行い、コンプレッサーで机の埃を吹き飛ばした後に塗装作業を行った。塗料には屋外用木部保護塗料を用い、塗装は刷毛塗りで行った。その後、机作製の過程で発生した端材を利用して、小物作製を行った。そして、最後に授業アンケートおよび閉講式を実施し、演習の全日程を終了した。
8. 感想・今後の展望と課題
受講生5名とも最後まで熱心に演習に取り組み、大きな問題もなく演習を終えることができた。授業アンケートでは、「各講義・実習の評価」の6項目全てにおいて、「不満」および「大いに不満」の評価はなかった。そして、「木取を考えるのは難しかったが、助言を頂き参考になった」、「普段川下の仕事について学ぶ機会があまりないので、ためになった」、「2つの木材(ヒノキ、ヒマラヤスギ)は香り、色、質感も全部異なり、それぞれに個性があることに興味が増えた」などの好意的な意見が多く挙げられ、受講生にとって有意義な演習であったことが窺われた。「演習の内容、指導等についての要望、改善点」については特に指摘はなかったが、継続して演習内容の検証・必要に応じた見直しを行い、演習の質的改善・向上に努めることが必要と思われる。
今年度も、昨年度と同様に構造物として机を作製した。2日目までは作業が予定よりも遅れていたが、3日目に天板の取り付けまで行うことができ、最終的には予定よりも早く塗装まで行うことができた。昨年度、今年度ともに演習時間内で全ての工程を終えることができ、机の作製は来年度以降も選択肢の一つとして考えられる。また、仕口の加工に木工用ドリルを用いたことにより、受講生の鑿による加工時間が短縮され、怪我も防止することができた。そして、受講生全員が怪我なく全ての工程を終えることができたのが、何よりであった。来年度以降も、事前学習動画の活用や演習時間内での安全講習の実施等により、安全第一で演習を実施していきたいと考えている。
