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平成28年度「山岳環境保全学演習」を実施しました。

お知らせ演習林系の実習

木曽駒ヶ岳~馬の背 登山道と高山帯の自然観察(9/7)
木曽駒ヶ岳~馬の背 登山道と高山帯の自然観察(9/7)
将棊頭山山頂にて(9/7)
将棊頭山山頂にて(9/7)
西駒山荘での天気図作成(9/8)
西駒山荘での天気図作成(9/8)
雨中の下山(9/8)
雨中の下山(9/8)
ゆりの木研修室での講評(9/9)
ゆりの木研修室での講評(9/9)

〈公開森林実習〉

山岳環境保全学演習

〈実習目的〉

山岳環境保全に必要な基礎知識と技術を、西駒ステーションから西駒ヶ岳(木曽駒ヶ岳:標高1,250 m~2,956 m)をフィールドとして集中実習により習得する。

1.代表的な高山植物の観察を行い、希少な高山植物群落の保全について学ぶ。

2.高山帯から亜高山帯を経て山地帯までの、植物の垂直分布帯を踏査し、信州の自然多様性について体感する。

3.高山環境に生息する昆虫類や鳥類の観察、野生動物のフィールドサインの識別方法など、フィールドワークの基礎を学ぶ。

4.コンパスを使用した地図の読みや、山岳気象への対処(天気図の作成を含む)など、登山の基礎知識を学ぶ。

5.山小屋で宿泊し、登山者による環境負荷の観察(登山道の状態、し尿・ゴミ処理など)を体験して、自然保護と人の利用を含めた山岳環境の保全について見識を深める。

〈実施日程〉

平成28年9月6日(火)~9月9日(金) 3泊4日

〈実施場所〉

農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)西駒ステーション

木曽山脈(中央アルプス)千畳敷~木曽駒ヶ岳~西駒山荘

〈担当教員・講師〉

教員3名

農学部:荒瀬 輝夫 准教授、小林 元 准教授

理学部:牧田 直樹 助教 

ティーチングアシスタント2名(信州大学農学部4年生)

〈参加人数〉

全33名

他大学12名:北海道大学1名、弘前大学2名、静岡大学2名、名古屋大学1名、京都大学2名、島根大学2名、鹿児島大学1名、琉球大学1名。

信州大学21名:人文学部1名、理学部1名、農学部13名、工学部6名。

〈実習スケジュール〉

(1)当初の計画

1日目 96日(火) 農学部構内→桂小場宿舎

 12:30  受付 食と緑の科学資料館「ゆりの木」

 13:00~14:30 ガイダンス(食と緑の科学資料館「ゆりの木」)

       講師・スタッフ紹介

 授業の概要とねらい/授業スケジュールと成績評価の説明

       グループ分け/役割分担

       フィールドでのマナー/安全衛生管理/地域研究

 14:30~15:30 演習1(西駒演習林、中央アルプス登山の歴史、山岳環境についての概説)

 15:30~ 桂小場宿舎へ移動(学バス)

 16:00~ 宿舎内の案内・寝所確認・荷物整理

 16:30~17:00 フィールド調査・作業の準備(必要な装備・物品等の確認)

 17:00~18:00 夕食準備

 18:00~ 夕食、懇親会

 19:30~20:30 演習2(鳥類・哺乳類の生態・調査法の概説)

2日目 97日(水) 木曽駒ヶ岳登山~西駒山荘

 6:00  起床、朝食準備

 6:30~7:30 演習3(山地帯上部での鳥類調査)

 7:30~ 朝食

 8:30~ 桂小場宿舎出発(学バス)→菅の台BC 標高850 m →しらび平駅 標高1,662 m(路線バス)→千畳敷駅 標高2,612 m(ロープウェイ)

 11:00~12:30 演習4(高山の「お花畑」の動植物) 千畳敷→乗越浄土

 12:30~13:00 昼食

 13:00~14:30 演習5(登山道の観察) 乗越浄土→木曽駒ヶ岳

 14:30~16:30 演習6(高山ハイマツ帯の動植物) 木曽駒ヶ岳→西駒山荘

 17:00~18:00 西駒山荘の案内・宿泊準備、休憩・自由行動

 18:00~ 夕食

夕食・片付後 演習6・7(山小屋をめぐる諸問題1、本日のまとめ)

3日目 98日(木) 西駒山荘→桂小場

 5:30  起床

 6:00~ 朝食

 7:30~9:30 演習8(天気図作製) (特別講師:西駒山荘管理人 宮下氏)

 9:30~10:30  演習9(高山帯の資源植物) 西駒山荘~将棋の頭を往復

 10:30~11:00 休憩・片付け、出発準備

 11:00~12:00 演習10(森林限界の観察) 西駒山荘→2,672 m峰→温暖化試験地

 12:00~12:30 昼食・休憩

 12:30~14:30 演習11(亜高山帯の森林植生・動植物) 島さんルート→シラベ小屋

 14:30~15:30 演習12(山地帯上部の森林植生・動植物)シラベ小屋→ヒノキ小屋

 15:30~16:30 演習13(上流域の土砂・雪崩被害の観察) ヒノキ小屋→桂小場

 16:30~18:00 荷物整理・宿泊準備、休憩

 18:00~ 夕食

夕食・片付後 演習14(本日のまとめ)

4日目 99日(金) 桂小場→農学部構内

 6:30  起床

 7:00  朝食

 8:30~10:30  演習15(総括と課題レポート)

 10:30~11:00 休憩・片付け、出発準備

 11:00~11:30  農学部構内へ移動(学バス)

 11:30~12:00  食と緑の科学資料館「ゆりの木」にて実習の講評

修了証書授与式、解散

〈実習中のスケジュール変更〉

実習期間の後半は、台風12号・13号(とその後の低気圧)の接近にともなう悪天候が予想される状況にあった。雨雲の到来する前に2日目宿泊地(西駒山荘)までの高山稜線縦走を終えるため、登山スケジュールを繰り上げて行動せざるをえなかった。また、個人差の大きい集団での登山にともなう予想以上の疲労と、実習3日目の悪天候により、以下のようなスケジュール変更を行って危険回避と健康・安全に努めた。

・2日目:早朝の演習3(鳥類観察)を中止して出発時刻を早めた。

 夕食後の演習6・7を自習として、自由・休憩時間を多く設けた。

・3日目:悪天候により、演習9を室内での「登山道の維持管理」についての講義に変更。

西駒演習林内の急峻な「島さんルート」から、遠回りながら勾配が緩やかで途中に避難小屋と水場のある一般登山道(桂小場ルート)に変更。

ルート変更と雨中の移動により、演習11・12・13は手短かな口頭説明のみとなった。

〈成果と今後の課題・展望〉

(1)実習の成果

実習の課題レポートとして「天気図の作成と概説」「山岳環境の保全」について提示したところ、単位互換協定外の大学からの学生をのぞく履修者全員がレポートを提出し、全員合格と評価された。

実習スケジュールやルートの変更、予想以上の疲労、下山時の悪天候でずぶ濡れになるといった悪条件に見舞われたものの、受講者アンケートの集計結果は概ね好評であった。学外(他大学および信州大学他学部)の履修者では、満足度について「大変満足」と「満足」が86%(回答者数22名)を占め、初めて高山帯の自然を体験できたことや、天気図作成、山小屋生活の体験、信州大学学生との交流などが好印象のようであった。ただし「普通」2名、「不満」1名の回答があり、予定されていた実習がいくつか行われず体験できなかった点や、人数が多すぎて山中での説明が聞こえないなどの点が原因として挙げられる。一方、学内(信州大学農学部)の履修者では、満足度について「大変満足」と「満足」が100%(回答者数11名)で、フィールドでの実習や登山に慣れていて体力的余裕もあり、今回のような悪天候による急な内容変更にも動じない様子が伺える。

(2)課題・展望

下山時に1名、足首をハチに刺される被害に遭ったが、迅速な応急処置により事なきを得た。地中に巣作りするハチの巣近くの草むらを踏んでしまった際、濡れた靴下を脱いで直に登山靴を履いて歩いていたことが被害誘発の一因と思われる。悪天候時の装備や歩き方について確認しておくべきであったと反省される。

また、履修者数が多いと、学生どうしの交流という点では好ましいものの、授業運営側のスタッフ数と宿泊施設の収容人数が限られていることに加え、山中では長い列になってしまって目が行き届かなくなることから、授業運営と危機管理の点ではやはり支障となる。履修者の定員や、定員超過時の選抜基準を設ける等の措置を検討し、シラバスや募集要項で予め明記・周知することが必要である。

悪天候時の内容について、臨機応変にいくつかのパターンの代替スケジュールを用意しておくことが望ましいが、そのためには柔軟に対応できるだけの余裕がスタッフ側に必要で、教職員間の協力体制を強化する必要がある。また、悪天候時に変更する可能性のある実習メニューや登山ルートについては、大まかでも、事前に履修者に示すようにしたほうが有益と思われる。

千畳敷にて(9月7日)登山出発前の記念写真.png

千畳敷にて 登山出発前の記念写真(9/7)

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