平成28年度「木材工学演習」を実施しました。
<演習名>
公開森林実習「木材工学演習」
<実習目的>
本実習の目的は、信州産の木材加工を通じて、木材加工技術を習得すること、木材の性質を理解すること、さらには、林業の主要な生産物である木材の利用意義を学ぶことである。本実習では、多様な木工機械を有するAFC構内ステーション製材所において、演習林の間伐材を各種木工道具・機械を用い加工し、一定の構造物(ベンチ)を作製する。
<実施日程>
平成28年9月6日(火)~9月9日(金) 3泊4日
<実施場所>
農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)構内ステーション
<担当教員、講師>
武田孝志教授、細尾佳宏准教授、小林元准教授、白澤紘明助手
<参加人数>
12名(信州大学工学部11名、静岡大学農学部1名)
<スケジュール>
初日は、本学総合実験実習棟木材加工室内教室にて、開講式、班分け(3班体制)を行った後、座学にて材料としての木材の特性や樹種による性質の違いを学んだ。続いて、実演を交えながら木工機械の説明を受け、各種機械の使用方法、使用用途についての理解を深めた。最後に、ベンチの材料となるヒノキ材の皮むき作業と、寸法を整えるための自動カンナ盤による切削作業を行った。
2日目は、ノミやノコギリ、墨つぼといった手道具の説明をうけた後、木目の様子や節や割れなどの欠点を観察し、木取り図を完成させた。ここでは、いかに合理的に無駄なく材を取っていくかを学んだ。そして、図に基づいて部材を切り出し、接合部分の加工作業を行い、仮組まで完成させた。
3日目は、サンダーやドリルといった電動工具の説明をうけ、それらを用いた微調節作業を行った後、ベンチを組み上げた。
最終日は、表面仕上げ、面取り、塗装といった最終的な仕上げ作業を行い、ベンチを完成させた。最終日はスケジュールに余裕があったため、自由に木工品を製作する時間をもうけ、各自がこの実習で習得した加工技術を駆使し、積極的に木工品の製作に取り組んだ。
<成果と今後>
本実習は農学部内で実施している実習を公開森林実習としたものであり、今回が初の試みであった。参加者たちは皮むきから加工、塗装までの一連の作業を通し、木材加工技術を習得しつつ、各班で協力しながら一つのベンチを完成させた。また、木材や使用道具の説明を適宜受け、それらへの理解を実物に触れながら深めることができた。アンケートからは、木材工学についての基本的な知識や技術を習得できたとの感想に加え、木の良さを知り、今後木製品の可能性を考えてみたいとの意見もあり、参加者にとって木材の魅力を知る有意義な実習であったことがうかがえる。
本実習は、本学農学部以外の農学系および非農学系の学生が広く受講できる実習であり、木材に普段触れる機会の少ない学生たちにとって貴重な機会になったと考えられる。さらに、演習林の間伐材を実際に加工する過程を通じ、木材の利用段階を理解し、木材を利用する意義を考えるきっかけにもなったものと思われる。今後は、木材の生産段階である林業にも意識が及ぶような工夫を施し、森林資源を循環利用することの重要性をより実感できるような実習としていきたい。なお、作成したベンチは後日工学部に寄贈され、工学部正門周辺に設置された。