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がん患者の悪液質の診断基準は有病率や全生存期間に影響する?診断基準はがん悪液質の研究結果の解釈に重要
2024年09月02日 [プレスリリース]
早稲田大学スポーツ科学学術院の渡邉 大輝(わたなべ だいき)助教は、信州大学大学院総合医理工学研究科医学系専攻医学分野 博士課程3年で信州大学医学部附属病院の髙岡 友哉(たかおか ともや)管理栄養士と北海道文教大学の八重樫 昭徳(やえがし あきのり)講師と共同して、がん患者における悪液質の診断基準の違いとその有病率および全生存期間(生きている期間)との関連をシテマティックレビューとメタ解析の手法で包括的に検討し、悪液質の診断基準の違いが有病率や全生存期間に影響することを世界で初めて報告しました。
本研究成果は、『Advances in Nutrition』(論文名:Prevalence of and survival with cachexia among patients with cancer: A systematic review and meta-analysis)にて、2024年8月30日(金曜日)にVersion of Recordがオンラインで掲載されました。その後、2024年9月に雑誌に掲載される予定です。
本研究では悪液質に関連する世界中の論文1,083件のうち、①125本の研究論文(合計137,960名のがん患者)から悪液質の診断基準の違いと有病率、②26本の研究論文(合計11,118名のがん患者)から悪液質の診断基準の違いと全生存期間の関連をシステマティックレビューとメタ解析により評価しました。
①本研究で集めた研究で使われていた悪液質の診断基準の合計は30種類でした(基準の根拠が示されていなかった研究論文を除く)。最も多くの研究で使用されていた基準は悪液質の代表的な基準であるFearon, 2011基準でした(研究論文125本のうち73本 [58.4%]で使用)。125本の研究論文から全体の有病率を求めるとがん患者のうち悪液質の者は33.0%でした。しかし、有病率は診断基準により異なっていました(13.9~56.5%)(図1)。
図1:がん患者における悪液質の診断基準と有病率の関係
②がん患者のうち悪液質である者はそうでない者よりも明らかに全生存期間のハザードが有意に高い(死亡リスクが高い)ことが示されました。さらに、悪液質の代表的な基準であるFearon, 2011基準で診断された集団はその他の基準で悪液質と診断された集団よりも明らかに全生存期間が短い(それでも悪液質ではないものより明らかに高い)ことが示されました(図2)。悪液質の有病率と全生存期間のハザード比の量反応関係を評価すると、悪液質の有病率が40~50%で全生存期間のハザード比が頭打ちになるL字型の曲線を示しました(有病率が低いほど全生存期間が短い)(図3)。
図2:がん患者のおける悪液質の診断基準の違いと全生存期間との関連
図3:がん患者のおける悪液質の有病率の違いと全生存期間との量反応関係
以上のことより、がん患者において悪液質の診断基準は有病率と全生存期間に影響する可能性が示されました。悪液質に対する研究や臨床現場での治療介入の検討する場合、診断基準をよく検討してどの診断基準を使用するかを決める必要があることが示唆されました。
【詳細】【プレスリリース】がんカヘキシアの定義と有病率・死亡
雑誌名:Advances in Nutrition
論文名:Prevalence of and survival with cachexia among patients with cancer: A systematic review and meta-analysis
執筆者名(所属機関名):髙岡 友哉(信州大学医学部附属病院・信州大学 大学院総合医理工学研究科 医学系専攻 医学分野 博士課程)、八重樫 昭徳(北海道文教大学)、渡邉 大輝(早稲田大学)
掲載日時(現地時間):2024年8月30日(金曜日)
掲載日時(日本時間):2024年8月30日(金曜日)
掲載URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2161831324001169?via%3Dihub
DOI:https://doi.org/10.1016/j.advnut.2024.100282