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長野県立こども病院耳鼻咽喉科(信州大学・長野県立こども病院連携大学院)の佐藤梨里子部長、医学部医学科耳鼻咽喉科頭頸部外科教室の吉村豪兼講師らのグループが18トリソミー症候群における難聴の臨床的特徴と補聴器による治療効果を解明しました

2023年12月13日 [研究]

 長野県立こども病院耳鼻咽喉科(信州大学・長野県立こども病院連携大学院)の佐藤梨里子部長、医学部医学科耳鼻咽喉科頭頸部外科教室の工 穣教授、吉村豪兼講師、遺伝医学教室の古庄知己教授らの研究グループは、18トリソミー症候群における難聴の臨床的特徴と補聴器による治療効果について解明しました。この研究成果は、American journal of medical genetics part Aに 2023年12月7日付で掲載されました。

 18トリソミー症候群は、18番染色体の重複に基づく先天異常症候群であり、常染色体異常症候群の中でダウン症候群などに次いで頻度が高いとされています。この症候群は、重篤な心疾患や肺高血圧症、悪性腫瘍、呼吸器・消化器・泌尿器系疾患など様々な合併症により生存期間が短く、また生存した子どもたちの発達の遅れが重いことから、以前は多くの施設で積極的な治療が控えられていました。しかし近年、長野県立こども病院などから標準的な新生児集中治療・小児科治療により生存期間の延長が報告され、生命予後に影響されない難聴に対しても正確な診断やそれに基づく治療介入が可能となってきました。
そこで研究グループは、長野県立こども病院に通院している18トリソミー症候群のあるお子さんを対象に、難聴の特徴と補聴器による治療状況について調査しました。難聴の程度については22名を対象に詳細に検討し、そのうち19名に対して側頭骨CTを実施し、外耳~内耳の構造について評価しました。さらに17名に対して補聴器装用を行い、治療効果を検討しました。
 難聴は96%のお子さんで両側中等度~重度難聴を認めました。CTでは外耳~中耳奇形は89%に認めた一方で、内耳の奇形はわずか16%にとどまり、難聴は感音性ではなく、伝音性、もしくは混合性であることが示されました(図1)。18トリソミー症候群の難聴はダウン症候群と比較し、難聴の合併率が高く、また程度もより高度であることが明らかとなりました。9名が骨導補聴器、8名が耳かけ型気導補聴器を使用し、全員に良好な装用効果が得られました(図2)。
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 18トリソミー症候群のある子どもたちは、ゆっくりですが着実に発達を遂げることがわかっています。高率に認められ程度も重い難聴に対して側頭骨CTを含めた精密な診断および補聴器装用を含めた積極的治療介入を行うことは発達支援としてきわめて重要と考えられます。
 本研究は、18トリソミー症候群のある子どもたちの難聴に対する補聴器装用の有効性を示した世界初の調査です。どのような障がいを持っていても、最善の医療を提供し、子どもの未来を見守り支えていくという長野県立こども病院および信州大学医学部の姿勢が世界で高く評価されたことになります。


論文情報:
〈雑誌〉American Journal of Medical Genetics Part A
〈著者〉Ririko Sato, Hidekane Yoshimura, Tomoki Kosho, Yutaka Takumi
〈題名〉Cause,severity, and efficacy of treatment for hearing loss in children with Trisomy 18: A single institution-based retrospective study
〈DOI〉10.1002/ajmg.a.63492

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