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熱中症リスク検知にウェアラブル発汗計は有用
信州大学医学部メディカル・ヘルスイノベーション講座 大橋俊夫特任教授らの研究グループは、グループが開発、製造した発汗計をウェアラブル化しスマートフォンに熱中症の危険性を通知する装置を開発しました。この装置の熱中症の危険性告知時点の妥当性をヒトの臨床実験を用いて証明しました。
【研究成果のポイント】
・発汗計をウェアラブル化し、スマートフォンに熱中症アラート(危険性告知)機能を付加しました。
・この発汗計を用いた熱中症アラートが有用である事を倫理委員会で認可を受けたヒトの臨床実験で証明しました。
【概要】
この度の研究では研究グループが開発した高感度発汗計を汗の量を連続的に記録できるように改良し、血液の濃縮度から熱中症の危険性を感知して各個人のスマートフォンにその危険性を告知する新しいウェアラブルの装置を構築しました。さらに、熱中症の危険を告知する時点の妥当性をヒトの臨床実験で確認しました。
ご存知のように、大量の汗をかくと人の血液は濃縮すると同時に人は枯渇感を感じます。枯渇感を感じる時、人は同時に脳下垂体の後葉からバゾプレシン(抗利尿ホルモンと呼ばれています)を分泌して、腎臓での尿中の水分の再吸収を促し、汗の出る管の壁から汗の水分を再吸収して、血液の濃縮を元に戻そうとします。本研究では、連続的に測定している発汗曲線の2次微分の値が負に変化した時(発汗速度が遅くなった時に相当します。これは沢山の汗をかいて血液が濃縮して、汗の材料になる血液中の水分が不足し始めた時点であると考えられます。)を熱中症危険の告知時点と認定し、被検者が枯渇感を感じスマートフォンで通知してきた時点との相関性の解析から熱中症危険告知時点の妥当性を実証しました。
この研究成果は、2023年1月9日付けでScientific Reportsに掲載されました。
A:開発したウェアラブルの発汗連続測定装置
B:皮膚に装着する汗を測定する換気カプセル装置の概略
【論文タイトルと著者】
タイトル:Heatstroke risk informing system using wearable perspiration ratemeter on users undergoing physical exercise
著者:Hideya Momose, Mieko Takasaka, Tomomi Watanabe‑Asaka, Moyuru Hayashi,Daisuke Maejima, Yoshiko Kawai & Toshio Ohhashi
掲載誌:Scientific Reports 2023-01-09
DOI:10.1038/s41598-023-27492-9