Interview

キャリアパス

4名の薬剤部員に、信大病院薬剤部で資格の取得を
目指すに至った経緯や、取得した資格でどんなこと
ができるのかについて話を聞いてみました。

  • 柴田海斗さん

    日病薬病院薬学認定薬剤師、医療薬学専門・指導薬剤師、がん専門・指導薬剤師、緩和薬物療法認定薬剤師、日本臨床薬理学会 認定・指導薬剤師、認定実務実習指導薬剤師

  • 朝倉充俊さん

    医療薬学専門薬剤師、糖尿病薬物療法認定薬剤師、日病薬病院薬学認定薬剤師、認定実務実習指導薬剤師

  • 吉川結美

    抗菌化学療法認定薬剤師、日病薬病院薬学認定薬剤師

  • 小岩井祥さん

    日病薬病院薬学認定薬剤師、妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師

聞き手
大学生の時はどのような資格を取得したいと思っていましたか?
柴田さん
大学生の当時は、今に比べて、それほど薬剤師の認定資格が普及していなかったように感じます。病院実務実習の中で、がん専門薬剤師を取得している薬剤師の先生からの講義があり、外来がん化学療法の患者指導を見学させてもらいました。その時に初めて薬剤師の認定資格に触れたと記憶しています。ただその時にも、がん専門薬剤師に強い憧れを抱いたということはなかったですが、将来的に何かしらの資格を取得したいという気持ちが芽生えました。
聞き手
どのような経緯で資格取得を目指したか教えてください。
柴田さん
大学卒業後、大学病院に入職し、臨床研究に関わる機会をいただきました。自身の研究テーマを開始することになり、学会での研究発表や学術論文を作成し始めた頃から、日本医療薬学会の認定薬剤師(現:医療薬学専門薬剤師)の取得を目標にしました。その当時は、日本病院薬剤師会の日病薬病院薬学認定薬剤師制度の開始が通知された頃で、がん専門薬剤師などの専門資格を取得するためには、ベースとなる認定薬剤師を取得する必要がありました。日本医療薬学会認定薬剤師は、そのベース認定資格として認められていたため、自身の学術活動を進めるとともに、資格取得を目指しました。

また入職1年目の終わりから、がん化学療法を中心とする部署での業務を開始しましたが、安全な抗がん剤治療の実施、がん患者に対する治療効果の向上や副作用軽減を目的とした処方提案、医師・看護師との密接なチーム医療の実践には、がんに対する専門的な知識や技能が必要であることを実感したため、自身のスキルアップやキャリアパスを考える過程で、がん専門薬剤師を目指すようになりました。
聞き手
資格取得するために努力したことを教えてください。
柴田さん
日々のがん化学療法業務では、ガイドラインや適正使用ガイドに基づいた抗がん剤治療・支持療法が適切に実施されているかを常に意識し、自分自身で調べ、ときには先輩職員の指導を仰ぐことで、業務を行いながら専門的な知識を身に付けることができました。病棟業務を含む患者指導業務では、継続的なモニタリングと積極的な処方介入によって、臨床的な判断力を鍛えることを意識し、薬学的介入症例を蓄積しました。

また、学術活動に関しては、週単位の研究計画に加えて、数年先までの成果発表の目標を立て、地道に研究を進めることが重要だと思っています。
聞き手
資格取得してよかったことを教えてください。
柴田さん
若手の時期にベースの認定薬剤師を取得することで、早期から専門薬剤師や指導薬剤師の取得要件を満たすことができたため、自分自身のキャリアパスを思い描く上で、可能性が広がりました。

専門薬剤師の取得に関しては、がん化学療法業務や緩和ケアチームの場において、自信を持って患者介入ができるようになったため、薬剤師としてのやりがいが大きくなりました。

また、専門薬剤師・指導薬剤師の保有が、がん患者指導に係る一部の診療報酬の施設要件や、各種薬剤師研修施設の認定要件の達成に関係しているため、間接的ではありますが、病院経営への貢献や教育施設としての機能強化につながっていることが良かったと感じています。
聞き手
資格取得するための当院のサポート体制について教えてください。
柴田さん
資格取得のサポート体制に関する当院の特徴として、薬剤部内のキャリア支援室が中心となって、各薬剤部員の資格取得の目標や進捗状況を一元管理し、それぞれに必要な支援を体系的に届けることで、薬剤師キャリア形成を組織的に支援しています。

具体的には、当薬剤部では、若手薬剤師にベースの認定薬剤師である「日病薬病院薬学認定薬剤師」をまず目指してもらいたいため、その認定単位の取得にかかる費用を一部補助しています。

また、特定領域の認定薬剤師・専門薬剤師の取得申請に必要な講習会や院外研修の参加支援として、参加費の費用補助や院外の出張指示を行っています。

それ以外には、資格取得を目指す薬剤部員に対して、日常業務の中で実績を積むことができるような部署配属・病棟配置を行っており、資格を保有している薬剤師からの助言・指導も受けやすい環境にあります。
聞き手
資格を取得して病棟業務(チーム医療含む)の幅はどの程度広がりましたか?
柴田さん
認定薬剤師・専門薬剤師の取得によって、特定領域の専門的な視点から薬学的介入が可能となり、医師や看護師から相談を受ける機会が増えました。例えば、がん化学療法のレジメン管理や支持療法の提案、緩和ケアにおける疼痛管理や睡眠療法の提案といった内容で実際に相談を受け、問題解決に導くことができたことで、病棟業務・チーム医療の幅がかなり広がったように思います。
聞き手
今後はどのような薬剤師を目指しているか教えてください。
柴田さん
特にがんの領域において、今後も患者個々の薬物療法の質向上に貢献するとともに、日々の学術活動によって研究成果を発信することで、実務と学術の両面から地域・社会に貢献することができる薬剤師を目指したいと考えています。

また、指導薬剤師として、若手薬剤師や学生の教育にも積極的に関わり、知識や経験を共有することで、薬剤師全体のレベルアップにも貢献したいと考えています。

閉じる

聞き手
大学生の時はどのような資格を取得したいと思っていましたか?
朝倉さん
6年制薬学部の教育を受ける中で、臨床はもちろんですが研究にも興味を持ったため、大学院博士課程に進学し学位を取得したいと考えていました。また、漠然と認定薬剤師や専門薬剤師を目指したいという気持ちがありました。
聞き手
どのような経緯で資格取得を目指したか教えてください。
朝倉さん
薬学部を卒業後、さらに研究について深く学びたいと考え、大学院博士課程に進学しました。4年間、研究と向き合う生活を送り、学位を取得した後に当院に入職しました。病院薬剤師として臨床と向き合う中で、日々の自己研鑽の証として認定薬剤師や専門薬剤師を目指したいと思うようになりました。
聞き手
資格取得するために努力したことを教えてください。
朝倉さん
臨床・研究・教育を実践しつつ、プライベートも充実させた日々を送る中で、1人で資格取得のためのモチベーションを維持することには限界があると感じました。そのため、興味のある分野の学会に所属し、積極的に学術集会や研修会に参加することで、全国の様々な視点を持った薬剤師と交流する機会を増やし、視野を広げるための工夫をしました。また、認定薬剤師や専門薬剤師を取得している職場の先輩に積極的に相談し、申請要件等の不安や疑問を解消するように工夫しました。
聞き手
資格取得してよかったことを教えてください。
朝倉さん
学位を取得する過程で、論文等から最新の情報を入手し、その内容を理解し、他者に伝える経験を多く積むことができました。それらの経験は、病院薬剤師としてチーム医療に貢献する上で、他職種から受けた相談に回答する際に活用しています。

また、認定薬剤師や専門薬剤師を取得したことにより、医師、看護師、他の薬剤部員等の多くの医療スタッフから相談を受けるようになり、知識を増やし磨く機会が増え、とてもやり甲斐を感じています。
聞き手
資格取得するためのサポート体制について教えてください。
朝倉さん
認定薬剤師や専門薬剤師の取得・維持には、研修会や学術集会に参加し、単位を集める必要があり費用がかかります。当院の薬剤部ではキャリア支援室による「薬剤師キャリア形成の支援」を受けることができ、資格取得・維持のための費用の一部をサポートしてもらえます。

また、多くの研修施設に認定されていることや、目指したい認定薬剤師や専門薬剤師について相談可能な環境が整備されていることも重要なサポート体制だと思います。
聞き手
資格を取得して病棟業務(チーム医療含む)の幅はどの程度広がりましたか?
朝倉さん
病棟業務では、どんな些細なことでも頼りにされ、その期待に応えることができた時にやり甲斐を感じます。資格を取得する過程で得られた経験や人脈により、患者さんや他職種から受けた相談に自信を持って回答できるようになったと感じています。

その結果、医師や看護師からの信頼を得ることができ、病棟業務をスムーズに行えるようになりました。また、医師から副作用の相談を受け、論文等から得られた薬物動態を含めた情報提供を行ったことがきっかけとなり、「症例報告」の学会発表、論文投稿を経験することができました。
聞き手
今後はどのような薬剤師を目指しているか教えてください。
朝倉さん
高度な医療を実践する中で多くの臨床経験を積むことができることに加えて、一人だけで学ぶことが困難な「研究」を行うことができる環境が整備されていることが、大学病院に勤務するメリットだと考えています。

高度な医療を担う大学病院の薬剤師として研鑽を積みながら研究活動を行い、得られた研究成果を発表し社会に貢献することができる薬剤師を目指しています。

閉じる

聞き手
大学生の時はどのような資格を取得したいと思っていましたか?
吉川さん
在学中、微生物学研究室で黄色ブドウ球菌の研究をしたこともあり、学生の頃から感染に関する資格を取得したいと考えていました。
聞き手
どのような経緯で資格取得を目指したか教えてください。
吉川さん
当院の薬剤師の先輩が企画した抗菌薬の適正使用に関する部内勉強会に参加したのがきっかけで、日本化学療法学会の抗菌化学療法認定薬剤師取得を目指すようになりました。
聞き手
資格取得するために努力したことを教えてください。
吉川さん
抗菌薬と菌の大まかな種類を覚えること、それを結びつけることを意識しました。何より、積極的に感染症治療に関わるようにしました。
聞き手
資格取得してよかったことを教えてください。
吉川さん
資格取得のために得た知識は臨床の場で役立っています。抗菌薬の変更などを提案する際に明確な根拠をもとに提案が行えるので、他職種からの納得も得られやすいです。
聞き手
資格取得するためのサポート体制について教えてください。
吉川さん
私が資格を取ろうと思ったのは部内の勉強会がきっかけです。その勉強会で得た知識を自分自身が関わった症例にも活かすことができました。資格取得には症例提出が必要になりますが、そのアドバイスも先輩から受けられたことが大変助かりました。
聞き手
資格を取得して病棟業務(チーム医療含む)の幅はどの程度広がりましたか?
吉川さん
今まで避けて通っていた感染症症例に積極的に関わっていけるようになりました。

また、院内のICT(感染制御チーム)やAST(抗菌薬適正使用支援チーム)の活動にも関わることができるようになり、様々な視点で感染症や抗菌薬について考える機会を得られていると思います。
聞き手
今後はどのような薬剤師を目指しているか教えてください。
吉川さん
資格取得のために先輩のサポートを受けられたのが、私にとって大きな助けとなりました。私も、得た知識を自分だけにとどめず、自施設の後輩や、地域の医療に還元していけたらと考えています。

閉じる

聞き手
大学生の時はどのような資格を取得したいと思っていましたか?
小岩井さん:
特にあまり資格を取得したいとは思っていなかったと思います。
聞き手
どのような経緯で資格取得を目指したか教えてください。
小岩井さん:
資格を取得しなくても、普通に業務はできるので、取得しようかどうか迷っていた部分はあります。ただ、資格がないと「その分野に詳しい人」で終わってしまって、他職種への情報提供の時や、患者さんへの説明の時に、自分の言葉に説得力がないのではないかと感じたからです。
聞き手
資格取得するために努力したことを教えてください。
小岩井さん:
自己研鑽ですね。知識をつけるために、講習会や勉強会に参加したり、学会に参加したり。あとは、書籍を読んで勉強しました。
聞き手
資格取得してよかったことを教えてください。
小岩井さん:
自分の言葉に説得力が生まれたこと。ありがたいことに、医師からの相談も増えたので取得して良かったと思います。
聞き手
資格取得するためのサポート体制について教えてください。
小岩井さん:
新型コロナウイルス流行以前は、成育医療センターでの研修会に何回か現地参加させていただきました。現在はWebでの講習会になりましたが、こちらも同様に参加できるように勤務調整をしていただいています。
聞き手
資格を取得して病棟業務(チーム医療含む)の幅はどの程度広がりましたか?
小岩井さん:
患者さんへのカウンセリングはもちろんのこと、他科に入院している妊婦・授乳婦に対する薬物療法について、様々な診療科の医師から相談をいただいています。
聞き手
今後はどのような薬剤師を目指しているか教えてください。
小岩井さん:
妊婦・授乳婦認定薬剤師の資格を生かして、妊婦・授乳婦に対する薬物療法の正しい知識を広めていけるような薬剤師になりたいです。また、日々進歩していく医療に柔軟に対応できるように、自己研鑽を続けていきたいと思います。

閉じる

ページトップへ戻る

MENU