複雑熱流体研究室
研究室概要
杉岡研究室では,イオンが関与する固液界面の流体力学をコアとして、 境界分野を含む非線形・複雑系の熱流体システムの研究を行います。 具体的には、 ①非平衡熱物性、 ②電極界面の熱流体物性、 ③μTAS&生命系の熱流体システム の研究を行います。
【杉岡研究室を志望する学生さんへのメッセージ)】
学生時代に世界水準の研究課題に挑戦し突破する努力を行う経験を持つことは、 いかなるスキルを磨くことより重要だと考えています。 杉岡研究室では、学生さんと教員との共同研究を通じて、世界に通用する研究 の達成を目指します。 勿論、研究力の根幹を成す真のスキルは重要です。 だから、スキルアップは研究と並行して進めてもらうことになります。 しかし、真のスキルは、残念ながらチャレンジングな研究によってのみ培われるものです。 杉岡研究室では、学生さんたちが、真の研究を遂行する中で、真のスキルアップを達成できるように指導していく方針です。
【2017年度 学生さんとの共著論文(掲載実績)】
1.Hideyuki Sugioka and Naoki Nakano," High-speed broadband elastic actuator in water using induced-charge electro-osmosis with a skew structure", PHYSICAL REVIEW E 97, 013105 (2018)
2.Hideyuki Sugioka, Hironobu Dan, and Yuya Hanazawa, "Microcolumn Formation due to Induced-Charge Electroosmosis in a Floating Mode", Journal of the Physical Society of Japan 86, 104402 (2017)
【学生さんの就職先、内定先等】
JR, トヨタ系、公務員他
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マイクロ流体素子の研究
Asymmetrical Reverse Vortex Flow due to Induced-Charge Electro-Osmosis around Carbon Stacking Structures [H. Sugioka, Phys. Rev. E 83, 056321 (2011)]
水または電解液中に置いた導電体に電界を印加すると、電界の二乗に比例した強い流れが発生する非線形界面動電現象が発生することが知られている。本研究室では、これを利用した微小なポンプ、バルブ、ミキサなどを提案し理論的検証を行うとともに、その理論的基礎の構築を進めている。また、研究成果は、2008年より、Physical Review誌9件、Langmuir誌1件、その他の原著論文5件、及びレビュー論文2件の公表を行っている(業績参照)。 非線形界面動電現象では、1V程度の低電圧印加で1mm/s程度の高流速を発生できるうえ、流路と金属ポスト及び電極等の単純な構成で様々な機能を実現できる可能性があるため、もし実現できれば、小型血液診断システムや小型遺伝子診断システム等への応用が期待される。言い換えれば、"μTAS (micro-Total Analysis Systems)"や"Lab-on-a-chip"の用語で語られるマイクロ流体技術を利用した近未来システムの性能と小型化を飛躍的に向上させ、真のイノベーションをもたらすことが期待できる。
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非線形界面動電現象の基礎理論に関する研究
Dc Step Response of Induced-Charge Electro-Osmosis between Parallel Electrodes at Large Voltages [H. Sugioka, Phys. Rev. E 90, 013007 (2014) ]本研究の目的は、非線形界面動電現象の基礎及びその設計基盤を確立することである。 具体的には、 A. 「直接シミュレーション法により、非線形界面動電現象の基本問題を解明すること」 B. 「非線形界面動電現象の観測に影響する"複雑な溶液/電極反応を解明"すること」 にある。 また究極的には、非線形界面動電現象による革新的なデバイスの設計基盤を確立することにある。
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非線形熱浸透理論に関する研究
Nonlinear Thermokinetic Phenomena Due to the Seebeck Effect [H. Sugioka, Langmuir 30, 8621 (2014)]
本研究室では、流体ゼーベック効果を基礎とした、非線形界面動"熱"現象という、界面科学の新概念となる現象を見出し、Langmuir誌において成果を公表している。 本研究の目的は、数値シミュレーション及び解析的手法により、まだ未解明の部分を多く含む、非線形界面動"熱"現象の理論基盤を確立することであり、具体的には、 A. 「非線形界面動"熱"現象に関する直接シミュレーション手法を開発し、"構造"と観測される現象との関係を解明する。」 B. 「熱ゆらぎに由来する熱ノイズ電界と非線形界面動電現象との相互作用によって発生する非線形界面動"熱"現象の可能性を理論的に検証する。」 C. 「非線形界面動電現象の基礎となる流体ゼーベック効果の理論基盤を確立する。」 特に、構造体のまわりに温度勾配の二乗に比例した非線形流れが発生すれば、複雑な構造が不均一温度下の自己組織化によって形成できる可能性がある。すなわち、将来的には、生命誕生の謎を探求する新領域に発展させることができる可能性があり、「ゆらぎと構造の協奏」の研究領域の発展に重要な意義を持つ。
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拡散イオン系の基本問題に関する研究
Ion-conserving Poisson-Boltzmann theory [H. Sugioka, Phys. Rev. E 86, 016318 (2012)]
本研究室では、非線形界面動電現象の基礎となる「拡散イオン系の基本問題に関する研究」 も重要と考えている。特に、 論文"Ion-conserving Poisson-Boltzmann theory"の中で、長年不明だった定常ポアソン・ネルンスト・プランク(PNP)方程式の厳密解を見出し[H. Sugioka, Phys. Rev. E 86, 016318 (2012)]、それを用いて非定常PNP方程式の解析的解を見出している[H. Sugioka, J. Phys. Soc. Jpn. 84, 004001 (2015)]。
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バイオミミック素子の研究
Elastic Valve Using Induced-Charge Electro-Osmosis [H. Sugioka, Phys. Rev. Applied 3, 064001 (2015)]
誘起電荷界面動電現象を用いたバイオミミック素子では、単純な構造と低いエネルギー消費量で高い性能の機能を発現できる可能性があるため、有望である。 本研究室では、繊毛や鞭毛など、自然の驚異のメカニズムに学びながら、新規なデバイスの提案と検証を目指していく。