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熱流体解析研究室
熱流体解析研究室

熱流体解析研究室

研究室概要

吉野・鈴木研究室では,複雑な熱流動問題,特にマイクロスケールの気液・液液・固液混相流問題,ならびに移動境界問題に関する研究を,数値シミュレーションのアプローチによって行っている. 計算手法としては,格子ボルツマン法(Lattice Boltzmann Method, LBM)を中心に,手法の開発ならびにそれを用いた現象解明に取り組んでいる. 特に最近では,埋め込み境界法(Immersed Boundary Method, IBM)をLBMに組み込んだ,埋め込み境界−格子ボルツマン法(IB-LBM)についての研究にも取り組んでいる.

LBMとは,気体分子運動論のアナロジーを利用して,流体を多数の仮想粒子の集合体(格子気体モデル)で近似し, 各粒子の衝突と並進とを粒子の速度分布関数を用いて逐次計算し,そのモーメントから巨視的な流速,圧力,温度(濃度)などを求める計算手法である. LBMの特長は,複雑流れに対してもアルゴリズムが簡単で,並列計算に向いており,さらに 質量・運動量の保存性に優れていることなどが挙げられる.

  • マイクロリアクタにおける液液二相スラグ流の数値解析

    近年,化学薬品の精製や製薬の工程において,安全性や経済性,環境配慮の観点から, マイクロ化学プロセス(数μmから数百μm程度の微小流路を有する各種マイクロデバイスから構成される生産システム)が注目されている. マイクロチャネルでは,拡散距離が短く伝熱速度が大きいため,大量生産を必要としないプロセスにおいては,熱・物質移動を効率よく行うことが可能である. 本研究では,二相系格子ボルツマン法を用いて,T字型マイクロリアクタ内における液液スラグ流の解析を行い,スラグ流の発生条件や混合過程における熱流動現象の解析を行っている.

  • 濡れ性を考慮した固体表面に衝突する液滴の動的挙動解析

    気泡や液滴の流れのような気液混相流は,多くの工学的分野に関連した重要な現象である. 特に,機械工学においては,燃料電池のガス拡散層内における水の除去や部品表面の塗装コーティングなどにおいて見られ,装置の小型化や安全性への要求から, 微視的なレベルでの流動現象を明らかにすることが課題である.本研究では,数値計算のアプローチにより,種々の物理条件下における固体壁面の液滴の動的挙動解析を行っている.

  • 雲内微小水滴衝突の数値解析

    雲の分布は地表への太陽光の透過率に影響を与える要因であり,地球環境を考える上で非常に重要な要素の一つである. 雲は,雲粒子と呼ばれる数μmから数mmサイズの水滴の集まりによって構成されており,それらの衝突挙動(合体や分裂など)を調べることは, 雲の分布を予測するために非常に重要である.しかし,この現象はそのスケールの小ささゆえに直接的な観測が困難である場合が多い. そこで,本研究室では,数値計算により,雲粒子を想定した液滴同士の衝突挙動解析を行っている.

  • 濡れ性を考慮した多孔質構造内における液相の挙動解析

    固体高分子形燃料電池(PEFC)のガス拡散層(GDL)に代表されるマイクロポーラス内の気液二相流現象は,界面張力や固体壁の濡れ性などが大きく関係する複雑な混相流問題である. 本研究では,二流体の密度比が1:1000程度まで安定に計算できる高密度比の二相系LBM(Inamuro et al., J. Comput. Phys., 2004)を用いて, マイクロスケールの多孔質構造内における液相の浸透現象解析を行い,物体壁面の濡れ性や空隙率が与える影響について調べている.

  • T字管やU字型曲がり管内流れにおける粒子の挙動解析

    流体中に含まれる粒子の分級や分離は,工学上よく見られる単位操作の一つである. その中でも,流体とほぼ同比重の粒子を分離・分級する方法として,曲がり管や分岐といった流路形状を利用したものがある. 本研究では,二相系格子ボルツマン法を用いて,T字管やU字型曲がり管内における流体中の粒子の挙動解析を行うことにより,装置の設計に向けた工学分野への応用を目指している.

  • 熱を考慮した移動境界問題の数値計算

    流れと熱との連成現象の解析は,工学的分野における重要な現象である. 特に,熱交換器をはじめとする様々な現象は非常に複雑であり,数値計算からのアプローチが有効であると考えられている. そこで近年,熱を考慮した埋め込み境界ー格子ボルツマン法が注目されている. この手法は,任意形状の移動境界を簡単に扱うことができるため様々な系の熱流動解析が可能となる. 本研究室では,この手法を用いて熱を考慮した移動境界問題の数値計算を行っている.

  • 一様流中における円柱の渦励起振動解析

    渦励起振動は,物体後流に生じる渦が物体自身を振動させる現象である.この現象によって物体が破損,崩落するなどの事故が多く報告されている. 例えば,タコマ橋の崩落や高速増殖炉もんじゅのナトリウム漏洩事故などである.このように,流体によって生じる振動現象の解明は重大な課題である. 本研究室では,埋め込み境界-格子ボルツマン法を用いて渦励起振動の解析を行っている.

  • チョウを模した羽ばたき翼モデルの自由飛翔解析

    チョウやハエといった小さな昆虫の羽ばたき飛翔は,生物学においてだけでなく,航空力学においても興味深い現象である. また,工学的応用も期待されており,特に近年では,羽ばたき飛翔は超小型飛翔体(Micro Air Vehicle,MAV)の推進機構の一つとして注目されている. 本研究では,羽ばたき飛翔のMAVへの応用を目指し,チョウを模した単純な3次元翼モデルの自由飛翔を,埋め込み境界−格子ボルツマン法を用いた数値計算を通して調べている.

  • 羽ばたき飛翔における翼の柔軟性の影響に関する研究

    チョウは非常に柔軟性に富んだ翼を利用して,揚力・推力を増大させたり,姿勢を安定化したりしていると言われている. 本研究では,埋め込み境界-格子ボルツマン法を用いて,翼の柔軟性が揚力・推力や姿勢の安定性にどのような影響を及ぼすか調べている.

  • チョウを模した羽ばたき機構の製作

    数mmから10cm程度の飛行ロボット,超小型飛翔体(Micro Air Vehicle:MAV)は,災害時の倒壊現場の調査や惑星探査などの, 極限環境下での活躍が期待されている. 本研究室では,MAVの実現に向けて,数値計算だけではなく,実際のチョウの羽ばたき方を模擬したMAVの制作を試みている. 実際にMAVを飛行させることを最終目標とし,その第一歩として羽ばたき機構を作成し,揚力・推力を測定する実験を行っている.

  • マイクロスケールの狭窄部を流れる赤血球の挙動解析

    変形する物体を含む流れ場の代表例として,赤血球などの血球を含む血管内の流れが挙げられる. 赤血球は粘弾性膜が流体を包む袋状の物体で,血管内において血流による流体力を受け変形しながら流動するため,自身よりも細い血管をスムーズに流動することができる. 本研究では,赤血球の粘弾性特性を表すパラメータを用いた赤血球モデルを構築し,二相系格子ボルツマン法による数値シミュレーションにより,狭窄部をもつ円管内を流れる赤血球の挙動解析を行っている.

  • 脳動脈瘤モデルの血流解析

    血液の流れは,脳梗塞や血栓など多くの疾患に密接に関連しており,その流れを知ることは診断,治療をするうえで重要である. 本研究では,CTやMRIの脳血管撮影データから作成したモデルを,汎用解析ソフトを用いて解析を行い,脳動脈瘤の破裂のメカニズムを解明することを目的としている.