フューチャーデザイン研究プロジェクト
- 研究活動
- 研究・プロジェクト
(1)概要
フューチャーデザイン研究プロジェクトは、環境問題、人口問題、社会保障問題など、従来「持続可能性」の視点から解決が模索されてきた各種の問題に、「世代間利害対立」を新たな視点として導入し、社会科学を主軸にして各関連科学分野を連結しながら、科学的研究と同時に社会実装の方法を創出する研究です。
(2)問題意識と研究目的
近年、地域社会が抱えているさまざまな問題には、これまでの時代と大きく異なる共通点があります。それは「持続可能性」といわれるものです。少子高齢化による人口構成問題、人口流出問題、医療や介護といった社会保障問題、環境問題、防災問題など、代表的な問題は全て同じ根っこを持っていると言えます。
しかし、こうした根っこを「持続可能性」として語るだけでは問題は解決されません。というのは、この問題の本質にあるのは「現世代とまだ生まれていない将来世代との間の深刻な利害対立」であり、そこにあるのは「便益と負担に関する世代間のトレードオフ」だからです。この問題の解決を難しくしているのは、最大の利害者である将来世代が「いまここ」の交渉の場に立ち得ないという事実です。
この事実は、これまで全く看過されてきたわけではありません。多くの人々によって将来世代に歩み寄る努力がなされ、将来世代を慮る善意に満ちた取り組みが考えられてきました。しかし、そうした努力や取り組みを行う主体が現世代であり、その現世代が意思決定の主体である限りは、自らの利害から自由になることはできません。民主主義的な合議制や市場(マーケット)における競争といった、現代社会の意思決定メカニズムもこの問題を解決する術を持っていないのです。
フューチャーデザイン研究プロジェクトは、日本における実験経済学を牽引してきた西條辰義氏(高知工科大学・一橋大学)が提唱する「フューチャーデザイン」の手法を科学的に検証可能なものに発展させるとともに、それを社会実装することを目的とします。フューチャーデザインの核心は、学習法のひとつとしても知られている「役割演技(Role Playing)」を応用して将来世代に"なりきる"ことを討議に参加する市民に要求し、現世代市民と討議・交渉をすることを通して、現世代に負担を受け入れさせる効果が期待されるところにあります。
フューチャーデザイン研究プロジェクトでは、次の3点を研究推進の実質的な内容および目的とします。
- フューチャーデザイン手法の実施実績を蓄積し、その応用可能範囲を示すとともに、応用対象に即した実施デザインの構築に貢献すること。
- 市民参加による討議に際して、どのような客観的情報をどのような形で参加市民に提供できるか、またその討議に対する影響について、専門家の立場から検討すること。
- フューチャーデザイン実施過程における参加者の意思決定プロセスを計測し、思考の特徴を特定すること。
(3)プロジェクトメンバー
- 西村直子(社会科学系)研究プロジェクトリーダー
- 山沖義和(社会科学系)
- 椎名洋(社会科学系)
- 井上信宏(社会科学系)
- 武者忠彦(社会科学系)
- 増原宏明(社会科学系)
- 矢部竜太(社会科学系)
- 東城幸治(理学系)
- 中澤勇一(医学系)
- 上原三知(農学系)
- 菊池聡(人文科学系)
- 岡本卓也(人文科学系)
(4)協力連携先
- 高知工科大学フューチャーデザイン研究センター
- 一橋大学経済研究所
- 大阪大学工学研究科附属オープンイノベーション教育研究センター
- 大阪大学未来戦略機構
- 総合地球環境学研究所
- 松本市役所(政策部、地域づくり部、環境部、健康福祉部、農林部、商工観光部、建設部)
- 特定非営利活動法人SCOP
- 岩手県矢巾町企画財政課