藤森 伝太 先生(株式会社竹屋 取締役社長) の講義が行われました
2023. 11.08
- 経営者と企業
2023年11月8日、2023年度「経営者と企業」第4回の講義として、株式会社竹屋 取締役社長 藤森 伝太氏から「ファミリービジネスと企業継続」と題して講義が行われました。
「タケヤみそ」でおなじみの株式会社竹屋は、1872年創業の老舗味噌メーカーであり、2022年に創業150周年を迎えました。諏訪市と松本市に生産拠点を置き、長きに渡り時代のニーズに合った高品質の味噌を全国各地に提供しています。
藤森氏は十三代目として2023年に取締役社長に就任、人口減少や食生活の変化によって減少傾向にある味噌市場の現実や、同社のこれまでの歩みと今後に向けた経営戦略について講義を展開されました。
「味噌概論」としては、①大豆を使うこと、②麹を使うこと、③食塩を使うこと、④発酵・熟成させていること、⑤半固体であること、という条件をすべて満たしているものが「みそ」であること、作り方は各地で違うが、全国に多様な「みそ」が存在しているのが大変不思議でおもしろいところだと述べ、味噌が出来上がるまでの製造工程について、写真をまじえてご紹介いただきました。
近年、味噌の全国出荷量と家庭での購買量は下降の一途をたどっているものの、都道府県別にみた出荷量は長野県が54%と半数以上を占めています。長野県の気候条件(雨量や気温の年較差、雑菌の少なさ等)が味噌づくりに適していることに加え、戦後の社会的な要請に対して、立地的なチャンスを活かせたことが人口増加と経済成長を支える食品の安定供給につながったとの見解を述べられました。長野県は製糸業の発展により交通網が整備され、都市部へのアクセスが比較的容易であったこと、業界の発展のために、味噌メーカーがお互い協力することで技術レベルが上がり、たくさんの味噌を作り、販売できることになったこと、全国で唯一の厳しい品質保証制度の策定等が、長野県が味噌の産地になった要因だとお話しされました。
味噌の生産全国第一位の長野県にあって、同社はメーカー別シェアにして推定値で2%、上位の3社(長野県内の企業)によって半数が占められているのが現状です。創業当初、宿屋を営んでいた同社が米屋になったのち、1872年に味噌の販売を本格的に始めた頃は、味噌は各家庭で作るものであったため、なかなか売れなかったが、時代に即した手法によって発展を遂げ、現在に至っていること、また同社の転機になったこととして、1982年に他社が発売し、大ヒットした商品に追随することなく、「味噌は食文化を支える基礎調味料であり、個性を殺した味噌は味噌ではない。発酵食品は多様性が大事。味噌メーカーの責務は『つぶれないこと』であり、各家庭の味を支えていく必要がある。これからは、少しずつイメージを変え親しみやすくしたり、挑戦を許容する社風への変換、自前主義の見直しに取り組んでいきたい」と、創業からの歩みについて振り返ったのち、これからの経営戦略に向けた考えを述べられました。
最後に、「私たちが味噌を守っているのではなく、実は『味噌が私たちを守ってくれている』のではないだろうか。味噌という食品を後世に残していけるように、我が社がみなさんの生活の役に立てるように、これからも頑張っていきたい」との思いを熱く語られました。