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小池 長 先生(上伊那貨物自動車株式会社 代表取締役社長) の講義が行われました

小池 長 先生(上伊那貨物自動車株式会社 代表取締役社長) の講義が行われました

2021. 12.01

  • 経営者と企業

 2021年12月1日、2021年度「経営者と企業」第6回の講義として、上伊那貨物自動車株式会社 代表取締役社長 小池 長氏から「小さな物流会社の社長ってなんだ?」と題して講義が行われました。

 上伊那貨物自動車株式会社は1942年、上伊那郡内の運送業者が国策による統合を受けて設立に至りました。現在は、長野県南信地域を中心に拠点を構え、各営業所や事業所、物流センター、関連会社において、地域経済の変化や地域のお客様の要望に合わせた運送・物流事業を展開されています。

 最初に、物流の6つの機能(運送・保管・荷役・梱包包装・流通加工・情報処理)を引越しに例えて御説明いただきました。陸上輸送の主力となるトラックには何百種類もあり、荷物の特性や用途によって使用する車両がかわること、また、最近の物流トピックスを取り上げ、宅配便の仕組みや営業用トラックと自家用トラックの違い、トラック運送業のコスト構造の仕組み等、「物流」について大変わかりやすくお話しいただきました。
 そして、運送業の使命は「長野県の生活と経済を止めないこと」だと述べ、新型コロナウィルス感染拡大防止のために「県境を跨いだ往来の自粛」を求められた際には、長野県トラック協会から様々な支援を受けて職務遂行が可能となったようです。
 また、海外(イギリス・アメリカ)では物流が止まったことによるトラブルも発生しており、日本でも2030年には人口減少によって国内貨物輸送量は減るものの、営業用トラックの需要は通販等の増加により今より4%増加すると見込まれています。それに対して、ドライバーの人数は22%も減るだろうとお話しされ、イギリスやアメリカと同じ状況が一時的でなく、恒常的に起こるとの見解を述べられました。
 そして「物流とは、社会のインフラ(電気や水道など)と同じで共益性の高い事業であり、トラックは生活と経済のライフラインである。これからも、お客様のニーズに応えた便利な物流サービスを提供していく」との思いを強調されました。

 さらに、社長となった経緯や着任後の変革についてもお話しいただきました。小池氏は、大学卒業後に一般企業へ就職され、実家へ戻る考えは全くなかったものの、何度か御自身の将来について考える出来事があり、今後について熟慮した結果、上伊那へ戻り同社へ入社されます。その後、父である先代社長が急逝されたことにより、代表取締役社長に就任されましたが、突然のことで社長として務まるのかわからない状況だったとのことです。しかし、父が信頼していた知人や取引先の社長から掛けられた言葉を思い出して仕事に取り組み、数々の困難を乗り越え続けた結果、いくつもの貴重な出会いや経験を経て今日に至っていると振り返られました。

 小池氏が社長に就任された頃、運送業界は1990年に施行された物流二法の規制緩和によって大荒れの状況にありました。規制緩和により、物流事業に参入しやすくなったことで運送会社の数が倍増、反して運賃は極端に下がります。加えて、1989年のバブル崩壊による不況で運ぶ荷物が増加するなか、日本企業の売上高対物流費の内訳をあらわしたデータから光明を見出し、運送業から物流業への変換を思いつきます。これにより、トラックに荷物を載せて運ぶだけだった仕事を、保管や荷役、梱包、流通加工、情報処理へと幅を広げ、さまざま仕事が出来るようになりました。ただし、お客さまから見た時「物流」は単なる手段であると考え、企業ドメインは「物流サービス業」としてネットワークを作り、新たなソリューションの提供を進めています。今後は、県内当日輸送のインフラ作りや配送ネットワークの構築も視野に考えておられるようです。さらなる飛躍が期待されます。

 小池氏は、「トラックは強硬性の高い商売であり、物流業はどんな時代になっても絶対なくなることはない。良くも悪くも決め手となるのは人材であり、会社は、ドメインの決め方ひとつでかわってくる。人材不足の中、田舎で、物流で、社長をやる人生も悪くはなく、社員やお客様、地域社会に感謝している。自分の人生をどう生きるか、決して定年までではないと皆さんに申し上げたい」と述べ、講義を締めくくられました。

  • 上伊那貨物自動車(株) 代表取締役社長 小池長氏
  • 講義風景

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