さわき もとえい
澤木 幹栄
教授
教員 BLOG
一覧を見るイケメンの語源
「ルックスのいい男性」という意味の「イケメン」という言葉がある。もともと話し言葉なのだが、字で書くときはこのようにカタカナで書くことが普通だ。
最近では新しい広辞苑がこの言葉を収録したことが話題を呼んだ。広辞苑では「メン」を「顔を意味する面から」とした。ところが、この語源説に対して異論を唱える人がいる。「メン」は英語のmenから来ていると言うのだ。
私は、語源をうんぬんすることがあまり意味を持たない場合があるのではないかと信じている。外来語の場合はもとになった外国語が常に意識されていることが多く、語源としてその原語をあげることに問題はない。
ところが、流行語の場合はその語が生まれた小さなサークルでの語源があり、さらにその語が世の中に広まっていく過程でその語の語源として信じられるようになったものがあって前者と後者が異なることがあっても何ら不思議はない。この場合、どちらを語源とすべきなのだろうか。厳密に考えれば前者なのだろうが、それは歴史的事実ではあってもその語にとってどれだけの意味があるか疑問である。その語の持つ長い将来を考えるとある程度世の中に認知されるようになった段階で信じられるようになった語源のほうが意味を持つ、つまり語源に引っ張られて語形が変って行ったりすることがあるのではないかと思う。
そこで、イケメンだが、この言葉は平板なアクセントで発音される。これがこの語の語源についてヒントを与えてくれるように思う。
もし、メンがmenに由来するとしたら、イケメンのケを高く発音することになる。東京アクセントでは、manあるいはmenに由来する「-マン」「-メン」はすべて「-」にアクセントがあるからである。たとえば、「セールスマン」「Gメン」「ガードマン」などを考えればわかる。
このアクセントのルールはかなり厳格なもので例外はない。したがって、繰り返すがメンがmenから来ているならばイけメン(けを高く発音)のようになるはずだ。ところが、現実はそうではないということは東京アクセントの話者であれば、「面由来説」のほうが受け入れやすいということになる。
「面由来説」はイケメンという言葉が定着しつつある現在、世の中で広く信じられる語源説になっているのではないかと思う。「本当の」語源がどうであるかは全く別の話だが。