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おおぐし じゅんじ

大串 潤児

歴史学 教授

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地域史教材の意義 高校の先生との対話

神奈川県高等学校教科研究会社会科部会歴史分科会のお仕事

  2011年11月11日、「神奈川県高等学校教科研究会・社会科部会歴史分科会」のお招きで神奈川県横浜市柏陽高校に行ってきました。同分科会が主催する、神奈川県教育委員会編集・発行による社会科歴史教材・『近現代と神奈川』(2011年)・同『郷土史かながわ』(2011年)をめぐっての教材研究会で報告をするためです。   神奈川県高等学校教科研究会・社会科部会歴史分科会は、これまで地域史の発掘と教材化に多くの仕事をされてきました(代表的な仕事は、同会編『史料でみる神奈川の歴史―神奈川県郷土史料集』同、1997年、同会編『神奈川の歴史をよむ』山川出版社、2007年)最近では、世界史教育の問い直しや(同会編『世界史をどう教えるか』山川出版社、2008年)、高校・大学間の連携に力を入れており、私も昨年のサマーセミナーで「〈小さな地域〉と〈大きな地域〉」と題して高校生向けに講義をさせてもらいました。  

たまたま手元にあった参考書

  今回は、地域史研究の成果をふまえた歴史教育の課題を提示することを基本にし、「副教材」の内容に関する批評を行いました。「地域教材と地域史学習と近現代史研究の現在」と題し、神奈川県の20世紀史、特に、Ⅰ―京浜工業地帯を生きる(1930~40年代川崎市の労働者家族の問題)、Ⅱ―1950年代の社会運動(小田原地域の社会運動)、Ⅲ―地域の〈公共性〉と〈多様性〉(横浜新貨物線反対運動)を素材に近現代地域史研究の現状を論じました。  さらに「社会科歴史(地歴科歴史)にとっての地域史教材の意義」として、①場所の論理(「~ではどうだったんだろう?」)、②「主体」の論理(「~にとっては、どのような意味をもったんだろう?」)、③「公共性(つながり)」の論理、を指摘し、教材『近現代の神奈川』は、戦争の社会史・軍隊と地域社会という最新の成果を盛り込んだ点に意義があると述べました。   教科書批評は私の問題関心からいくつか手がけてきました。しかし、授業を構造的にささえる教材群という視点、そのなかでの地域史副教材のもつ意味、授業をさまざまな意味で「補完」する参考書(例えば文英堂・シグマベスト・シリーズなど)の役割、など、「歴史教育の素材」総体を考えながら問題をつくるといった仕事は初めてでしたので(といっても今回は地域史副教材のみ扱いましたが)、たいへん難しい仕事でしたが、楽しい作業でもありました。      社会科部会歴史分科会の先生方とはさまざまな場所で仕事をさせていただいているのですが、今後とも刺激的な議論ができればと思います。こうした機会を与下さった、神奈川県高等学校教科研究会社会科部会歴史分科会の皆様に御礼もうしあげます。   ☆2012年、東京都および神奈川県における高校「日本史必修化」にともない、その「主たる教材」である地域教材についての議論が始まりました。私とは意見が違う部分もありますが、吉川悦夫「日本史教材『近現代と神奈川』の問題点」『歴史地理教育』798、2012年12月号が、教材の問題点を手際よく指摘しています(2012年12月5日 加筆)。

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