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かない ただし

金井 直

哲学・芸術論 教授

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井上唯 ITONAMI 風景に向かって旗をかかげる

井上唯さんが「信濃大町アーティスト・イン・レジデンス2023」において滞在制作された旗を展示し、併せて布を使ったワークショップや街歩き、アーティストトークを行います。

目の前に聳える山々の成り立ちを想像すると、自然の営みやその時間軸の壮大さに気が遠くなる。隆起した大地に、雪や雨が降り注ぐことで地表が少しづつ削られ、山肌や谷、川、湖が生まれ、岩石が風化した土壌に草木が根を張り出す。   信濃大町の滞在制作では、土地で使われてきた布を縫い合わせて大きな旗を作り、糸をチクチクとひたすら縫いつけていくことでこの土地の風景を描き出したい、そしてその旗を山頂でかかげてみたいと漠然と考えていた。山で旗をかかげる意味が自分でも分からないまま作業を進めていたが、様々な営みが重なり混じりあうことでかたちづくられてきた〈風景〉に対峙していると、腹の底から叫びたくなって、旗を振り、かかげる行為へと繋がっていった。家の中で大きく作ったはずの旗は、山ではとても小さく見え、そのことに妙に納得しつつ清々しい気分になった。それは、海原で波にもみくちゃにされ、その敵わなさに腹の底から笑ってしまう時の感覚と同じで、自然界の果てしなさやスケールに打ちのめされ、人間の営みの小ささを思い知って安堵したかったからかもしれない。 そして、ある人に「風景に向かって白旗をあげてるんですね」と言われ、思わず膝を叩いてしまった。
 この夏、北アルプスの麓の街で生活をしながら地域の人々と縫いあげた旗を、今回は松本の街のなかで展開する。いったいどんな光景が見られるだろうか。

井上唯


井上唯 Yui Inoue 1983年愛知生まれ。滋賀在住。
各地に滞在して、それぞれの土地の自然や人々の営みから学び、そこから着想を得ていくことで、この世界の仕組みや目に見えない繋がりを“モノ”を介して想起させるような光景をつくり出したいと考えている。素材と対話しながら手を動かしていくことを軸に「生活」と地続きにある「制作」の在り方を模索している。


会期 2023年12月21日(木)-12月26日(火)11:00-17:00
会場 ギャラリーノイエ(長野県松本市大手3-2-17)
ギャラリーノイエHP https://noyie.jp
入場無料
主催:信州大学人文学部芸術ワークショップゼミ(美術系)
連絡・お問い合わせ kanait(a)shinshu-u.ac.jp(金井) (a)は@

本展最新情報は、note信州大学人文学部芸術ワークショップゼミ(美術系)https://note.com/kanaisemiにてご確認ください。

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