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高大連携哲学演習2026 「SNSと言葉の哲学」

2026年7月18日~7月18日開催

2026年7月21日更新

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イベント概要

信州大学人文学部オープンキャンパスの一環として,高校生と大学生が哲学の話題について発表をし,グループディスカッション形式で対話をする企画です。今回のテーマは「SNSと言葉の哲学」です。

開催日 2026年7月18日~7月18日
時間 12:00-13:50
会場 信州大学人文学部212番教室
参加対象者 学生
参加料金 無料
参加者数及び内訳 大学生・大学院生16名(大学院2名,4年生3名,3年生3名,2年生8名(理学部1名をふくむ)
高校生33名(県ケ丘9名,長野吉田1名,須坂3名,オープンキャンパス参加20名)

イベントレポート

 昨年度に続き、オープンキャンパスと連動して「SNSと言葉の哲学」をテーマとする哲学対話を実施しました。松本県ケ丘高校、長野吉田高校に加え、今年度からは須坂高校も新たに参加し、さらに活気のある企画となりました。事前申込みによる高校生10名に加え、当日の飛び入り参加者10名を迎え、計20名の高校生が7グループに分かれてディスカッションを行いました。

 テキストには、戸谷洋志氏『SNSの哲学――リアルとオンラインのあいだ』(創元社、2023年)第3章「SNSではどんな言葉が交わされているのか」を取り上げました。この章で戸谷氏は、ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」の考え方を踏まえながら、XをはじめとするSNS上のコミュニケーションを「ベリーハードな言語ゲーム」と呼んでいます。SNSで発信される言葉は、不特定多数に向けて届けられ、自由に切り抜かれ、真偽が曖昧なまま瞬時に拡散し、やがて消費されていきます。そのような独特の環境のなかで、幼い頃からSNSに親しんできた現在の高校生・大学生は、この「ベリーハードな言語ゲーム」をどのように受け止めているのでしょうか。また、SNSにはかつて新たな連帯を生み出す可能性が期待されていましたが、その役割はいまもなお維持されているのでしょうか。本演習では、こうした問いを出発点として議論を進めました。

 まず、松本県ケ丘高校2・3年生5名が、高校生の現在のSNS利用の実態について報告しました。自動翻訳の普及によって国際的なコミュニケーションが容易になった一方で、翻訳の精度や語訳の問題も残されていること、さらに国ごとの文化や国民性の違いによって、SNS上の言語ゲームそのものが異なるのではないか、という興味深い問題提起がなされました。また、SNS上では長文の自己語りを続ける人など、暗黙のルールを共有できていないと感じられる場面も少なくないことが指摘されました。では、そのようなルールを共有できない人々と、私たちはSNS上でどのように関わっていけばよいのでしょうか。この点も重要な論点として提示されました。<br>

 続いて、人文学部哲学芸術論コース2年生有志5名が発表を行いました。まず、SNS上の「ネタツイ」を題材として、文脈を共有する人とそうでない人との間に受け止め方の齟齬が生じることが示されました。そして、「好き」という一見単純な言葉であっても、その意味は用いられる文脈によって大きく変化し、一義的には定まらないことを例に、「言語ゲーム」の考え方が説明されました。また、「ネタツイに乗っかる」という緩やかなルールが存在する一方で、そのルールから外れた発言も一定程度許容されている点が紹介されました。では、私たちはSNS上のルールを互いにすり合わせていくべきなのでしょうか。しかし、たとえルールを共有したとしても、そのルールをすり抜ける新たな事例は次々と現れます。そうだとすれば、終わりのないルールの更新こそが、SNSという言語ゲームの本質であり宿命なのかもしれません。<br>

 また、SNSの登場によって、自分の考えや思いを他者へ伝える方法は今後どのように変化していくのか、という問いも提起されました。さらに、「もし将来、人とのつながりがSNSを介してしか築けない社会になったとしたら、私たちのコミュニケーションはどのように変わるのだろうか」という思考実験も提示されました。<br><br>

 こうした問題は、高校生にとっても身近で切実なテーマであったようで、活発な意見交換が行われました。議論を重ねるなかで、SNS上で用いられる言葉は、日常の対面コミュニケーションで交わされる言葉とは異なるルールや文脈のもとで機能していること、そしてその違いを意識することが、SNSとのよりよい付き合い方を考える第一歩になるのではないか、という認識が徐々に共有されていきました。

 参加した高校生・大学生の感想の一部を紹介します。

「自分とは反対の意見や考え付かなかった意見がたくさんあって本当におもしろかった。

最初は知らない人との話し合いをするということで緊張してたけど大学生の方をはじめ緊張をほぐしてくれてありがたかったです。」(高校生)

「高校生ってすごいです。自分の考え方に高校時代よりも面白みがなくなっているように感じました。」(大学生)

「身近にあるSNSという媒体を通して、それぞれの国や地域の文化に従って行動すると、世界を繋げているプラットフォームでは矛盾が発生してしまうことがあり、そこから無駄な争い合いが起きるということの底に隠された部分を話し合うというのはとても面白いと感じました。トラブルを自分のようで自分ではない仮面の「アカウント」を通して傍観者として楽しむという、私が思う価値観とは正反対の意見だったり、「SNSは自分の思ったことを共有する場がリアルより広く、言語ルールが抽象的だからこそそれに乗っ取る必要性があるのか?」という自分にはない視点で討論がされていたので新しい学びにもなりました。「言語ルール」というものの定義を深く掘り下げると、まだまだ境界線は脆いものなんだなと感じました。」(高校生)

ご協力いただきました,川住賢太先生(長野県 県民文化部 文化振興課 県史編さん室),壬生花菜先生(県ケ丘高校),中村和史先生(須坂高校),綿内真由美先生(須坂高校)に心より感謝申し上げます。

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