防災・減災について学ぼう 自作ラジオでFM電波キャッチ!地域コミュニケーション

防災・減災について学ぼう 自作ラジオでFM電波キャッチ!

防災・減災について学ぼう 自作ラジオでFM電波キャッチ!

 信州大学地域防災減災センターは、総務省信越総合通信局とテレビ松本ケーブルビジョンの共催をいただき、2017年8月19日、夏休みも最後の小学生高学年を対象としたイベント「自作ラジオでFM電波キャッチ!」を開催しました。
 ラジオ放送は、受信機さえあれば情報をリアルタイムに受け取ることができ、災害時の迅速な情報伝達に有用です。今回は総勢22名の子どもたちが「自分でラジオを作り、電波を受信し記録する」という一連の体験を通して、防災・減災を楽しみながら学んでいただきました。引率された保護者の皆さまも、お子様の夏休みの自由研究となる一石二鳥のイベントとあって喜んでおられました。

(文・柳澤 愛由)
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第107号(2017.9.29発行)より

菊池聡教授(写真左)・総務省信越総合通信局様(写真中)・テレビ松本様(写真右)

主催者としてあいさつする地域防災減災センター長の菊池聡教授(写真左)と臨時災害FM局について説明する総務省信越総合通信局様(写真中)、送信機とアンテナを設置いただいたテレビ松本様(写真右)。

小学生の視点で防災・減災を考えてみる

 信州大学地域防災減災センターは現在さまざまな災害研究を行っていますが、その中でも災害時にしっかり機能する放送や通信を駆使した情報伝達システムの確立は重要テーマのひとつです。これまでも、国、自治体、メディアなど学外組織・機関と連携し、防災に関する情報通信ネットワークの構築を進めてきました。ラジオ放送もその手段のひとつです。
 今回、子ども達に体験してもらったカリキュラムは次のとおり。なかなか盛りだくさんな内容です。


①まず、地域防災減災センター副センター長の不破泰学術研究院教授(工学系)が、「電波とは何だろう?災害時に役立つの?」をテーマに講義、電波の仕組みや、災害時にどのような役割を担っているのかを学ぶ。

②その後「FM・AMラジオキット」を組み立て自分だけのラジオを作る。

③次はチームを組んでの野外調査。キャンパス内を巡りながら、教室に置かれた「臨時災害FM局」からの電波をマイラジオでキャッチ。そして最後は、チームごとに成果発表する。

横山俊一研究員(写真左)・不破泰教授(写真右)

このイベントを企画した学術研究・産学官連携推進機構の横山俊一研究員(写真左)と防災減災センター副センター長の不破泰教授(写真右)。

災害と放送、そして電波の仕組みを学ぼう!

臨災局

総務省信越情報通信局に協力いただいた臨時災害FM局の発信機。通称「臨災局」。

 講義を担当した不破教授の主要な研究テーマはICTを使った安心安全なまちづくり。どんな災害が起きても、放送や通信技術を駆使して生き残る情報伝達ネットワークを作り上げることです。
 「災害が起きた時は、多くの人に向け、一斉に、そしてより速く情報を伝える必要があります。その手段は大きく分けて2つ。放送と通信です。インターネットなどの通信技術は、みんなの所に届くまでにいくつもの中継装置を通ります。なので、どこかの装置が壊れてしまえば情報は届きません。それに情報を届ける相手が多くなると装置が忙しくなり、情報が届きにくくなってしまいます。でも、ラジオなどの電波を使った放送は、放送局さえしっかりしていれば、受信機で直接受信ができます。10人でも1万人でも、その速さは変わりません。だから『災害に強い』と言われています」
 普段の学校で勉強する内容とは少し違う雰囲気に、子どもたちも真剣な面持ち。インターネットによる情報収集が当たり前になっている現代だからこそ、ラジオ放送という手段の利点を考えていきます。続いて「電波とは何か」についての解説が行われました。不破教授の“講義”にじっと聞き入る子どもたち。電波について学んだ後は、いよいよラジオ作りです。

マイラジオを作ろう!ちゃんと音は出るかな?

 キットの中に入っている基盤やコードを取り出したら作業開始!アシスタントの大学生たちも協力しながら“真剣に”作業を進め、四苦八苦しながらなんとかマイラジオが完成。スピーカーに耳を近づけ、つまみをあわせると… 、「鳴ったぁ!」。ほぼ初めての体験に、子どもたちもとにかくうれしそう。
 できあがったラジオを手に、小学校4年生の奥川颯太くんは、「楽しかったです!いつもお母さんに『聞いていい?』と相談してラジオをつけているから、これで自分の好きな番組がいつでも自由に聞ける(笑)」とうれしそうに話してくれました。

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臨時災害FM局の放送が聞こえた!

キャンパス内を巡り電波調査
アンテナを高く上げながら、「まだ聞こえてるよ」「あっ聞こえなくなった!」と、アシスタントの大学生と一緒にキャンパス内を巡り電波調査。
調査結果は地図に書き込んでいきました。
調査結果は地図に書き込んでいきました。

 マイラジオを作ってからが、このイベントで最も大事な実習です。チームで協力し合いながら、屋外でFM電波をキャッチ、キャンパス内の地図を片手に教室から発せられる電波がどういった所まで届くのかを調査します。
 教室から発信されているのは、「臨時災害FM局」の電波。臨時災害FM局とは、災害時、被害状況や支援物資情報など、地域のより詳細で正確な情報を住民に届けるために開局される臨時の災害専用ラジオ放送局です。1995年の阪神淡路大震災の経験を踏まえて制度化され、これまで新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震など、甚大な被害をもたらした災害時にも大きな役割を担ってきました。その発信機を持つ地元ケーブルテレビ・テレビ松本が協力して、子どもたちの調査を応援します。
 班ごと屋外に出た子どもたちは、アンテナを高く持ち上げながらラジオから出る音に耳を傾け、地図上に音が聞こえた場所、聞こえにくかった場所を書き込んでいきました。

電波はどこまで届いてた?みんなで発表しよう!

調査の結果をみんなで発表
調査の結果をみんなで発表。
自分の発見を自信を持って“熱く”語ってくれました。

 調査を終え、教室に戻ってきた子どもたちは、それぞれの調査結果を班ごとに1枚の地図にしていきます。
 「どうしてここは聞こえづらかったんだろう?」
 「ここがしっかり聞こえたのは、なぜだろう?」
 そんな問いかけをしながら、子どもたちに電波とは何か、情報を集めることとはどういうことなのかを考えてもらいました。
 そして最後は、チームごと成果発表。
 「この場所は教室から障害物が無くて、だからしっかり音が聞こえました」
 「ここは建物があるから電波が回り込めなくて、聞こえなかったんだと思います」
 短時間のうちに、子どもたちはさまざまな発見をしたようです。
 小学校6年生の矢口遼馬くんは、「ラジオを作るのは難しかったけど、電池だけで動くから災害の時も使えると思いました。普段ラジオは聞かないけど、これで聞いてみようと思う」と元気良く話してくれました。
 「この経験を活かして、家庭で何を話すのかが一番大事。家の中にラジオはあるのかとか、もし災害が起きたときにどうするのかとか、子どもを通して家族で話してもらえたらうれしいですね。こうした電波の技術にも興味も持ってもらえたら」と不破教授。ぜひ、子どもたちにはこの経験を活かして、家族の、そして地域の防災・減災について考えてみて欲しいと思います!

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